「El Capitan」なら安心……とはいかない
“Mac安全神話”を覆す「OS X」セキュリティの真実
もしあなたが自社でMacをサポートしている管理者であれば、「Windows」と同じように「OS X」にもセキュリティの欠陥があることを忘れてはならない。
ハッカーたちの攻撃対象は「Windows」だけではない。彼らはAppleの「OS X」にも狙いを定めている。Mac用OSの脆弱(ぜいじゃく)性が次第に明らかになるのに伴い、IT管理者の心配の種が増えたのは確かだ。
多くのMacユーザーは、Windowsユーザーよりもマルウェアの攻撃を受けにくいと考えているため、システムを防御する方法に精通していない人もいる。また、管理者もWindows搭載PCに比べてMacの扱いには慣れていないかもしれない。
OS Xに関して今後懸念すべき重大な問題がマルウェアとセキュリティだ。サイバー犯罪者たちはOS Xにも次第に注目するようになってきた。米国の非営利団体MITREのCVE(Common Vulnerabilities and Exposures:共通脆弱性識別子)リストによると、OS Xも相当な問題を抱えているようだ。
「Yosemite」(OS X 10.10)の最初のリリースについていえば、ほとんどのユーザーに知られていなかったものの、このOSにはシステムの脆弱性につながる欠陥が含まれていた。例えば、「Apple ID OD」プラグインは、攻撃者にユーザーのパスワードの変更を許した他、「IOGraphics」コンポーネントは攻撃者がコードを実行したり、サービス妨害(DoS:Denial of Service)攻撃を実行したりすることを可能にした。幸いにも、2015年8月のアップデート「Yosemite 10.10.5」により、こうした問題をはじめとする多数の欠陥が修正されたが、修正版がリリースされるまではMacの脆弱性は放置されたままだった。
El CapitanはMac OS Xのセキュリティの救世主か?
Appleは2015年9月、「El Capitan」(OS X 10.11)をリリースした。従来のアップデートと同様、このリリースでも脆弱性に対処し、Yosemite 10.10.5に含まれていた未知の欠陥と未修正のセキュリティ問題が修正された。これらの中には、「bash」「Certificate Trust Policy」「CFNetwork」「HTTP」プロトコル、「Finder」、IOGraphics、「PHP」、カーネルなど広範なコンポーネントに影響する問題も存在した。
El Capitanは、以前のバージョンのOS Xが抱えていた多数のセキュリティ問題に対処した。だが新OSでセキュリティの強化を目指したAppleの努力にもかかわらず、El Capitanにも「Core Text」やCFNetwork、「Security Agent」などのコンポーネントに影響する脆弱性が多数含まれていた。また、カーネル自体も依然として脆弱性を抱えていた。例えば、ネットワークアクセス権限を持った攻撃者がコードを実行できる可能性があった。また、悪質なアプリケーションがファイルを上書きしたり、DoS攻撃を仕掛けたりすることも可能だったようだ。だがAppleおよびCVEリストによると、「El Capitan 11.1.1」アップデートは一般に知られている全ての問題に対処したとしている。
ここで気になるのは“一般に知られている”というキーワードだ。AppleはMac OS Xのセキュリティの脆弱性を修正するパッチをリリースするまで、脆弱性の詳細を明らかにしない。このため、企業のIT部門はアップデートが提供されるまで、どんな欠陥が出現するのか予測がつかないのだ。
El Capitanで何が修正されたのか
恐らくEl Capitanで最も目立つ変更点は「System Integrity Protection(SIP)」だろう。これは新しいセキュリティ技術で、保護されたフォルダやファイルが悪質なソフトウェアによって変更されるのを防ぐのに役立つ。従来のOS Xでは、rootユーザーアカウントは権限が制約されていなかったため、あらゆるシステムフォルダやアプリケーションにアクセスできた。管理者がソフトウェアをインストールするときに自分のユーザー名とパスワードを入力すれば、システムへのrootアクセスが可能になった。このため、管理者アカウントのパスワードが盗まれると、マルウェアの侵入を許す可能性があった。
SIPの導入により、マルウェアは容易に侵入できなくなった。rootアカウントの権限が制約され、同アカウントが実行できる処理が制限されたからだ。特定のシステムフォルダにrootアカウントが変更を加えることもできなくなった。システム内で保護された部分への修正が許されるのは、一部の処理だけに限定されるようになった。
El Capitanでは2要素認証システムも改善された。2要素認証はOS Xにとって新しい機能ではないが、今回の改良でセキュリティが強化されるとともに、使いやすくなった。新方式では、他の要素での認証が失敗した場合でも、アカウントにアクセスするのに復旧キーを必要としない。El Capitan以前は、ユーザーが復旧キーを紛失すると非常に面倒なことになりかねなかった。場合によっては「Apple ID」を完全に放棄しなければならず、Apple製端末を仕事で利用しているユーザーにとって、これは生産性の大幅な低下をもたらした。今では、Appleの顧客サポートが問題解決に当たってくれる。
El Capitanでは「App Transport Security(ATS)」も追加された。これは、アプリケーションとそのバックエンドとの間でセキュアな接続を適用するという機能だ。ATSはデフォルトで有効になっており、HTTPを使用するアプリケーションは全てHTTPSでシステムに接続することが要求されるため、データ通信の安全性が高まる。
El Capitanに残された問題
AppleのEl Capitan 11.1.1アップデートは幾つかのセキュリティ問題を修正したが、2つの問題が未解決のままだ。OS Xに残されているセキュリティ問題の1つが、「Gatekeeper」に関連したものだ。GatekeeperはMac用ソフトウェアの素性および整合性を確認するユーティリティで、そのセキュリティの不備のせいでマルウェアの侵入を許したり、パスワードを盗まれたりする恐れがある。もう1つの問題は、OS Xのパスワード管理システムである「Keychain」だ。このシステムには欠陥があるため、不正なアプリケーションが保護されたデータを盗んだり削除したりする可能性がある。
これら2つの問題は程度の差こそあれ、いずれもリスク要因ではあるが、それよりも懸念されるのは、Appleが既に把握しているかどうかにかかわらず、まだ姿を現していない未知の脆弱性だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
「IBM iはDXのボトルネック」は誤解 意外と知らない今風モダナイズの効果
-
5
「朝8時にバッチが終わらない」データ爆発の危機をJPX総研はどう乗り越えたか
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
AI導入後に発覚する「社内文書を読めない」問題 情シスは何を直せばいい?
-
8
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー