ヒラリー・クリントン氏のアドバイザーが語る
2020年代は「ロボットが人間に命令する時代」、最も影響を受ける人は?
テクノロジー政策の専門家アレック・ロス氏は、認知ロボット工学が労働市場に与える影響と、未来の産業を手中に収めるのに米国が最も有利な立場にある理由を語った。
世界中で巻き起こっている革新の波により、これから10年の間に人々の暮らしや企業の在り方は大きく変わるだろう。ヒラリー・クリントン氏の国務長官時代にイノベーションアドバイザーを務めていたアレック・ロス氏は、自身の著書『The Industries of the Future』でそのように語っている。今回のインタビューでは、認知ロボット工学がもたらす影響と世界規模で戦おうとしている米国企業の展望について語った。
このインタビューは抜粋になります。
――著書ではロボット工学についてたくさん触れられていました。中でも物理ロボットに多くのページが割かれていましたが、認知ロボットについてはどうお考えですか。また、ロボットが処理する思考は、今後ナレッジワーカーの代わりを果たすようになると思われますか。
ロス氏 認知ロボット工学は非常に興味深い分野です。ロボット工学は“手動的で反復的”なものから“認知的で非反復的なもの”への変質が可能になろうとしています。それを実現したのが、2015年に達成された2つの大きな発展です。1つは、モデリングにおける数学的ブレークスルーです。ロボットの掌握動作など、非常に複雑なモデリングが必要だったものが実現可能になりました。もう1つは、クラウドロボット工学の発展です。ロボットには桁違いに高額なハードウェアとソフトウェアが欠かせないという概念は、クラウドロボット工学によって無意味になります。その結果、機械学習と優秀な人工知能は、5年前に想像していたよりもずっと手の届きやすいものになりました。つまり、これらは徐々にナレッジワーカーの仕事の中に入り込んでくることが予想されます。
労働用ロボットは、主に肉体労働者に取って代わると考えられていましたが、明らかに頭脳労働者に取って代わる方向に進んでいます。ロボット工学の経済について考えてみましょう。人間の設備投資は大変低いものの、運用コストは高くつきます。人間を雇用する場合、事前投資はあまり掛かりません。必要なのは、コンピュータなどの購入費くらいでしょう。ただし、運用コストは相当に掛かり、2週間に1回のペースで給与を支払わなければなりません。一方、ロボットのコスト構造は逆で、設備投資は高くつきます。ロボットは高価ですが、運用コストは非常に安く済みます。24時間稼働し、給与を払う必要もありません。健康保険も不要で、病気にもなりません。つまり、優秀なロボットの価格が手頃になればなるほど、設備投資と運用コストのトレードオフは協働ロボットにどんどん有利に働くようになります。それは肉体労働者だけでなく頭脳労働者にとっても同じことが言えます。
――McKinsey and Companyは、今後10年のうちに世界中で1億4000万人ものナレッジワーカーの仕事を認知ロボットが実行するようになると予測しています。この状況が経済や企業の在り方に及ぼす影響を考えると、魅力的であると同時に恐怖も覚えます。
ロス氏 これから労働環境は、人間がコンピュータに命令する状況と人間がコンピュータに命令される状況の両方があり得る時代に突入しようとしています。1990年代の自由貿易がそうであったように、2020年代には労働自動化に対して労働者が反対運動を起こすのではないかと考えています。
これから興味深い時代が到来します。インターネットはコミュニケーション、コラボレーション、商業に劇的な変化をもたらしましたが、これからの10年間にはインターネットが過去20年間でもたらしたのと同程度の変革が起こると思います。
――著書では、多くのトピックがグローバルな視点で語られていました。昨今のグローバル経済では、テクノロジーが力関係を変えます。また、テクノロジーは勢力バランスを変える可能性も秘めています。その中で今後米国企業が生き残れるかどうかについて、あなたの考えをお聞かせください。
ロス氏 米国は3つの明確な強みを持っているため、有利な立場にあると思います。まず、米国には世界有数のナレッジワーカーがそろっています。そして、米国では、アイデアを育てて市場に出すために、ハイリスクキャピタルを初期の段階で調達することが可能です。それから、米国は世界のどの地域よりも企業家精神にあふれていて、誰も取らないリスクを喜んで引き受けます。そのため、今後も米国は他のどの国よりも、未来の業界を手中に収めるのに有利な立場にあると確信しています。
私が米国企業の経営者だったら、今後の成長市場となるであろう米国外のフロンティア市場を特定することに注力します。1990年代に中国とインドに投資して、関係を築き上げ、事業を立ち上げた結果、今も巨額の利益を得ている人々がいます。それと同じように今後10年、12年、15年のうちに急成長するであろう市場が多数存在しています。また、大規模で成長の速い市場で地位を確立することが、どの米国企業にとっても賢い身の振り方でしょう。
私はメキシコ、中央アメリカ、南アメリカの将来を大変楽観的に捉えています。今後も米国市場は強者として君臨し続けるでしょう。ですが米国企業は非常に強く、ドルは貨幣として強く他国の経済の発展にもかかわるべきという事実は利用した方が良いと個人的には思います。
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