「アクティブラーニング」の場を学校だけにしない
“全教室無線LAN完備”の工学院中高が「セルラー版iPad mini」をあえて選んだ理由(3/3 ページ)
課外活動で生かせるセルラーモデル 「Office 365 Education」の利用も
工学院中高は、従来の授業の良い部分を否定せず、生徒がより主体的になれる参加型の授業を実現するためにiPad miniを生かす。メインで活用するアプリは、Loiloの授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」だ(参考:「ロイロノートのDNAを継ぐ“生徒目線”の授業支援アプリ『ロイロノート・スクール』」)。自分の意見や考えをまとめて発表したり、他人と比較したりするなど、ロイロノート・スクールを活用して生徒が参加できる場面を増やすように工夫している。
セルラーモデルの強みを生かすべく、課外活動などでも積極的にiPad miniを活用する。中学1年生のバス合宿や遠足では、生徒同士が現地で撮った写真を教育機関向けソーシャルネットワーキングサービス(SNS)の「Edmodo」で共有。部活動の遠征や修学旅行など、学校外でiPad miniをはじめとするIT製品を駆使することで情報リテラシーの育成にも役立てる。
さらに工学院中高は、日本マイクロソフトの教育機関向けオンラインオフィススイート「Office 365 Education」も活用している。注目すべきは、無料版の「Office 365 Education E1」(現「Office 365 Education」)ではなく、有料版の「Office 365 Education E3」を選択したことだ。Office 365 Education E3は、「Microsoft Word」「同Excel」「同PowerPoint」といった「Microsoft Office」クライアントアプリケーションのオンライン版(「Office Online」)だけでなく、フル機能のインストール版もクライアントPCやiPadシリーズなどで利用できる。これとセルラーモデルのiPad miniを併用することで、生徒の学ぶ機会を広げているのだ。
Office 365 Education E3を選定した理由は、
- 現在、オフィススイートの定番はMicrosoft Officeであること
- 工学院中高の教職員は、Windows 8.1以上が稼働するクライアントPCを利用していること
- 上記の状況・環境との親和性を鑑み、授業で用いるiPadも、Microsoft Officeクライアントアプリケーションのインストール版を用いるのがベターであると判断したこと
- 自宅ではiPad以外のクライアントPCや「Mac」を教育で活用することも視野に入れたこと
- 「OneDrive for Business」以外のオンラインストレージの併用(多重バックアップ)を考慮したこと
- 月額利用料金が安価であること
などだ。さらに、既存のディレクトリサービス「Active Directory」と連係したユーザー認証も施しているという。
工学院中高では、生徒が取り組む課題やレポートなどのファイル形式は、教員の標準端末であるWindows端末から添削しやすいWordやExcel、PowerPoint形式に指定している。生徒も自分のiPad miniからこれらのMicrosoft Officeアプリを使い、いつでもどこでも学習の続きができる。その他、オンラインストレージ同期サービスの「OneDrive」を生かして、コンピュータ室のクライアントPCとも連係した作業を可能にしている。小野垣氏は「学内、学外、端末種別を問わず、いつでもどこでも学習コンテンツや成果物にアクセスできる環境を生かした学習スタイルを目指すことが、今後の学びの幅を広げる」と語る。
「当たり前」をITが効率化、主体的な学習を促す
2015年4月からiPad miniの活用を進めてきた工学院中高。その効果や手応えはどうか。小野垣氏は、「ネットワークに常時つながるセルラーモデルのiPad miniを生徒が持つことで、学びの機動力が増した」と語る。今までは、コンピュータ教室に行かなければインターネットを活用した調べ学習はできなかったが、今は普通教室で短時間に調べることができるようになった。自分の意見を紙に書かなくても、簡単に共有して他の生徒と比較・検討することが可能だ。こうしたアクションは以前の授業でも可能であったが、ITの活用で効率化が可能になった。結果として、生徒が授業中に学習に関わる場面が増え、主体的な姿が見受けられるようになったという(写真4)。
今後は、高校でもタブレット導入を進める工学院中高。21世紀型教育を支えるツールとして、ITを積極的に生かしていく考えだ。
執筆者紹介
神谷加代(かみや かよ)
教育ITライター。「教育×IT」をキーワードに教育機関で進むタブレット導入事例やIT活用、子ども向けプログラミング教育、EdTech関連の話題などを、Webメディア、書籍、雑誌などで執筆。著書に『iPad教育活用 7つの秘訣』(共著、ウイネット)、『こどもプログラミング読本――「未来をつくる力」を育てる』(共著、技術評論社)、『子どもにプログラミングを学ばせるべき6つの理由 「21世紀型スキル」で社会を生き抜く』(共著、インプレス)。
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