2020年に向けた病院内のIT化を推進する取り組みとは
iPhone 3200台導入の東京慈恵会医科大学、情報共有の在り方を一新(2/2 ページ)
iPhone活用のインフラとセキュリティ
慈恵医大ではiPhoneの導入に合わせてさまざまな院内インフラを整備しており、前に述べたように電波環境改善のために院内アンテナを設置すると同時に、病院内のWi-Fi環境も整備し、音声もデータも確実に通信できるようにした。
また、インフラの整備に合わせた医療設備やアプリの面でも、これまでポケットベルで受信してきたナースコールシステムをiPhoneで受けられるようにした。看護師が病棟内のどこにいても患者と会話できるようになった。また、医用画像を院外からも参照し、コミュニケーションアプリ「LINE」と同様の形式でチャットできるようにしたサービスであるJoinを導入するなど、iPhoneを生かして医療従事者間の業務効率を向上させる仕組みを構築している。
セキュリティ面では「モバイルデバイス管理(MDM)」「セキュアブラウザ(SecuredBrowser)」「共有電話帳(SecuredContacts)」「モバイルプレゼンス・チャットサービス(IDs)」などを提供するクラウドサービスであるCLOMOを導入。紛失や盗難による情報流出に備えつつ、利便性を高めた。
例えば、慈恵医大では数千人の医療従事者が働いており、同姓の場合も多い。共有電話帳であるSecuredContactsでは、医療従事者の顔写真と内線電話番号を集中管理・配信し、同姓の場合でも区別しやすくした。また、IDsによるiPhone同士のチャットや、MDMのエージェント機能を活用した一斉メッセージ送信機能を利用でき、それまで手間だった情報伝達も格段に改善した。
慈恵医大では、iPhoneが接続するネットワークと電子カルテなどの医療情報ネットワークとを完全に分離している。iPhoneからアクセスできる医療情報は、Joinで取得された医用画像(個人情報は自動削除済み)だけとなっている。医療従事者からはさらなる医療情報へのアクセスを求められる可能性もあると思われるが、インターネットに接続できる端末を医療情報にアクセスできるようにするのはリスクが高いため、現時点では賢明な仕組みだと考えられる。
医療ICTの推進に向けて
慈恵医大の取り組みは非常に大規模なもので、同様のことができる病院は日本でも数は少ないはずだ。しかし、同大学がリスクも承知しつつ、率先して患者目線・医療現場の生産性を向上する医療ICT構築に取り組んでいくことは、具体的な先行事例として実証された解決策を幾つも提示することになる。数年後の日本の医療ITの改善に大きく寄与するであろう。
また、今後は他の医療機関が慈恵医大の事例を参考にしつつ、iPhoneでなく通話機能の無い「iPod touch」や「iPad」を組み合わせることでコストを抑えつつ必要なシステムを導入していくことも可能であろう。慈恵医大は、日本医療の全体生産性を高めるために、医療機関でのモバイルITの運用ノウハウや各種規約などのオープン化を積極的に実施する予定であり、他大学・他病院からの見学や相談はいつでも歓迎するという。
2020年までのロードマップに示された慈恵医大のICTソリューションがどのように導入、運用されていき、日本の医療ITの改善に寄与するかを引き続き注視していきたい。
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