「Apple vs FBI」一時休戦に
FBIがiPhoneのロック解除、それでも「勝者はApple」との声も(2/2 ページ)
今後の展開
今回の新たなiPhoneクラッキング技術と、Appleに対する申し立てを取り下げるというFBIの判断が、バックドアと暗号化を巡る争いの今後の展開にどう影響するかという疑問は依然として残る。TripwireのITセキュリティ&リスク戦略担当ディレクター、ティム・アーリン氏は、今回のケースに関してFBIが実質的に暗号化問題を避けて通ったが、論議はこれからも続くと予想する。
「少なくとも、FBIは今後のケースのための前例を作ることに失敗した。もし今後のケースでAppleの協力が必要な状況になれば、もう一度やり直さなければならない。もしFBIが勝利していれば、今後のケースで企業に対して同様の対応を強制できる強力な前例を確立できていたはずだった」と同氏は言う。
Carbon Blackの共同創業者で最高セキュリティストラテジスト、ベン・ジョンソン氏は、それほど簡単に影響は予想できないと述べ、次のように指摘した。
「これには2つの側面があり、一部にはFBIにとって非常に有利な展開になったという意見もある。ただしAppleは次回、この件に言及し、『FBIはAppleの助けを借りなくてもクラッキングできた』というかもしれない。Appleがセキュリティ研究者を動員し、iPhoneに内在する脆弱(ぜいじゃく)性を発見して回避するために、可能性のある想定について研究することも目に見えている」
情報セキュリティコンサルティング企業Privacy Professorのレベッカ・ヘロルド最高経営責任者(CEO)は、FBIの助けにはならないかもしれないが、害になることもないとの見方をする。
「長い目で見れば恐らくAppleの助けになる。同社は少なくとも、『もし暗号化されたファイルやシステムに彼らがアクセスしたければ、事実上同じような種類の全OSのためのバックドアとして機能する新システムの構築をわれわれに強要する。その代わりに、NSA(国家安全保障局)でも別の筋でも何でも使って端末をクラッキングすればいい』と主張できる。1台のiPhoneをクラッキングすることは、IT企業に自分たちが確立したセキュリティシステムを破るプログラムを強制的に開発させるのとはプロセスが異なる。今回のような状況で使われた手段は、スマートフォンのシステム全てに広く適用できるようなものではない可能性がある。Appleがもしプログラムを開発していれば、それは可能だったかもしれない」(へロルド氏)
使われた手法がAppleのモバイルOS「iOS」の既知あるいは未知の脆弱性を利用していたのかどうかは分からない。必然的に、FBIがこのiPhoneクラッキングの技術をAppleに開示すべきなのか、あるいは実際に開示するのかという疑問が生じる。
「FBIはバックドアを欲しがっている。自分たちが見つけたドアを閉ざす理由はない。FBIが公然とバックドアを仕込もうとしたことは、FBIにとってマイナスになるかもしれない。Appleには多くの賛同者がいて、今度はFBIに対して責任ある脆弱性情報の開示を求めるだろう」。へロルド氏はそう語り、iPhoneクラッキングの技術をAppleに開示することはFBIのためになる可能性もあると指摘する。
「実際に、もしFBIがAppleに情報を開示すれば、次に今回のような事態が起きた場合、有利な状況に持ち込むために活用できる。FBIは『サンバーナディーノの事件ではFBIがAppleのiPhoneのセキュリティ強化に協力した。だから今回はAppleがFBIに協力して、米政府だけが使える魔法のようなバックドアを開発し、Appleの現行製品や進化を続けるスマートフォンなどのスマート端末の強力な暗号を突破できるようにしてほしい』と主張できる」。へロルド氏はそう話している。
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