FacebookやGoogleとは違う
Appleがプライバシー重視を宣言、他の会社はなぜできないのか?
Appleの新しいプライバシーポリシーによってプライバシーに対する懸念は和らぎ、Apple Pay、Apple Watch、フィットネス情報のための地ならしもできた。
米Appleのティム・クック最高経営責任者(CEO)は、Appleは情報セキュリティとプライバシーの懸念の払拭に取り組んでおり、顧客にはAppleの新製品を信頼してほしいと、米Facebookや米Googleに当てつけるように訴えた。
クックCEOはAppleのWebサイトに2014年9月17日(米国時間、以下同)に掲載した公開書簡の中で次のように記している。
「数年前、インターネットサービスのユーザーは気付き始めた。無料のオンラインサービスを利用する自分は顧客ではない。自分は商品だと。だがAppleは、優れたカスタマーエクスペリエンスのために、あなたのプライバシーを犠牲にすべきではないと考える」
同社の9月17日のブログに記された通り、政府機関が同社に対してデータ引き渡しの捜索令状を執行しようがしまいが、iOS 8ではユーザーのiPhone上にデータを暗号化した状態で残す。
過去のAppleのセキュリティ上の怠慢については、あなたにも何か言いたいことがあるかもしれない。また、セレブのヌード写真流出で話題になった昨今の問題は同社の監視の不備が招いた可能性があるのに、他のIT企業にけんかを売るような態度を取るべきではないと思うかもしれない。だが、たとえどう思われようとも、Appleは自分たちが消費者のプライバシーの側に立ちたいと思っているようだ。
端的にいって、Appleがプライバシーに関して消費者の側に立つのは理にかなっている。少なくとも、NFC(近距離無線通信)決済やウェアラブル技術、接続型のヘルスエクスペリエンスなどへの参入で収益を上げたいと思うのであればだ。
信頼の溝
最高情報責任者(CIO)にとって、Appleの新製品発売とそれに続く消費者のプライバシー問題は複雑だ。消費者のプライバシーは潜在的に会社のセキュリティを脅かしかねないからだ。従業員が「Apple Watch」や「Apple Pay」「HealthKitアプリ」などのソースから集められた個人情報を保存する端末には、同時に会社の貴重な情報も保存されている。企業は自社の資産を守らなければならないが、従業員の個人情報には触れないよう気を配らなければならない。
CIOは顧客の視点から、このバランスを保とうと苦慮している。モバイルソリューションプロバイダー米MobileIronがドイツ、英国、米国の3地域の市場で一般消費者を対象に実施した調査によれば、80%以上の消費者が私物のモバイル端末を仕事に使っているにもかかわらず、個人情報の保護に関して雇用主を「完全に信頼できる」とした回答はわずか30%だった。同社はこの50%の差を従業員と雇用主との「信頼の溝」と呼ぶ。
実際に従業員の不信感は根強く、書面による保証を望んでいることも分かった。例えば、雇用主が見ることができる情報とできない情報について従業員に通知する書面、端末上の情報にアクセスする前に許可を求める書面、雇用主が端末上で見るのは会社の情報に限ると保証する書面、端末上で特定の情報を調べる目的についての詳しい説明などが求められている。
企業はこうした問題を考慮したうえで自社のモバイル戦略を策定する必要がある。MobileIronの戦略担当副社長を務めるオジャス・リージ氏は「重要なタスクに使われている会社のモバイル端末の扱いについて、多くの企業はポリシーやプロセスを定めていない」とブログに記した。
リージ氏は、プライバシーポリシーやコミュニケーションについて見直す際は、従業員の私物端末だけでなく、あらゆるモバイル端末が仕事用と私用の両方に使われていると想定しなければならないと指摘する。「重要なワークフローと個人情報を保護しながら会社の情報の安全を守るため、選択的管理と選択的消去のモデルに移行すべき」(同氏)。ポリシーは不可欠だ。見直し後のモバイル端末ポリシーに合わせて、モバイルアプリ開発ガイドラインを更新する必要がある。
「信頼が簡単に得られないことは分かっている」。Appleのクック氏は、プライバシーに関する書簡にそう記した。それは企業にも同じことがいえる。
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