続く「Apple vs. FBI」
MSがプライバシー保護でAppleを支持、「地獄への道はバックドアから始まる」
Microsoftの法務担当者が、強力な暗号化の基盤を弱めようとする米政府の動きを批判し、暗号化技術を支持するよう業界に呼びかけた。
Microsoftのブラッド・スミス プレジデント兼最高法務責任者が2016年2月29日、米サンフランシスコで開かれた「RSA Conference 2016」で、同社は強力な暗号化と顧客のプライバシー保護に力を入れると言明した。
スミス氏は基調講演の中で、Appleと米連邦捜査局(FBI)の争いではAppleを支持すると表明。米政府に対しては、顧客のプライバシーを妨害し侵害しているとして批判した。
「Microsoftは、われわれの業界の各社と一緒になって、この重要な案件においてAppleの側に立つ」。スミス氏はそう言明して聴衆の盛大な拍手を浴びた。
合法的な命令には協力
スミス氏によると、Microsoftは合法的な命令に対しては常に進んで司法当局や政府機関に協力してきた。例えば2015年にパリで起きたテロ事件では、事件後に逃走したテロ容疑者に関わるコンテンツについて、法に基づき14件の開示を命じられたという。「14件全てに応えることができた。命令は合法的と判断して、コンテンツを引き出した。そのためにかかった時間は平均すると30分以下だった」とスミス氏は打ち明ける。
一方で同氏は、特にアイルランドのMicrosoftのデータセンターにある電子メールのコンテンツに関連した米司法省との法律論争を引き合いに、米政府が法の支配を回避しようとしていると批判した。電子メールの開示を命じた米司法省の令状に対し、Microsoftは情報がアイルランドにあることを理由に、米政府がメールを入手するためにはアイルランドの適切な法務機関を経由する必要があると反論している。
スミス氏は言う。「政府機関が正当な企業を捜査したいと思えば、そしてその企業が保有する情報を入手したいと思えば、その企業のところへ行って、その企業に対する令状や召喚状を示すべきであり、それをせずにクラウドサービス事業者のところへ行くことは許されないとわれわれは固く信じる。米国では2世紀以上にわたって、それが法および法執行の在り方だった。クラウドコンピューティングによってその均衡が変わることがあってはならない」
強力な暗号を支持
スミス氏はまた、暗号化を迂回(うかい)しようとするFBIの「ゴーイングダーク(Going Dark)」キャンペーンや、暗号化強度を弱めようとする米政府の動きには反対すると強調した。「善意に基づくとしても、1つはっきりしていることがある。地獄への道はバックドアから始まる。暗号化技術は強力なままであるべきことを確認しなければならない」。聴衆はこの発言にも大きな拍手を送った。
スミス氏は聴衆に対し、強力な暗号化技術を支持し、守るよう訴えた。この技術を弱めたり損ねたりしようとする動きは、情報セキュリティ業界に対する一般の信頼に壊滅的な影響を及ぼしかねないと述べ、「セキュリティに関しては、暗号化より大切な技術はないと日々肝に銘じる必要があると考える。だからこそわれわれは立ち上がってよく考え、声を上げる必要がある。かつてないほど、他の何よりも明確になったことがある。人は自分が信頼できない技術は使わない。つまり信頼はわれわれの業界全体にとって絶対的な基盤といえる」と力説した。
その目標に向け、暗号化委員会を設けてサイバーセキュリティと法執行上の課題について公に論議するというマーク・ワーナー上院議員(民主党、バージニア州出身)とマイケル・マコール下院議員の提案を支持するとスミス氏は表明。ただし米国の法律はひどく時代遅れになっていて、21世紀の技術に合わせて改正する必要があるとも指摘した。
「われわれが必要としているのは、技術が単純な物理的法則ではなく、法の支配によって統制される世界だ。われわれは優れた法律を必要とし、開かれた論議を必要としている。法が追い付くことができた場合のみ、世界は技術を信頼してくれる」。スミス氏はそう語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[日本オラクル株式会社] ピンチをチャンスに変えたEPR製品は? 先行企業の導入事例3選 -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] 無自覚なリスク 秘伝Excelファイルが監査の壁、不正・ミスの温床となる理由 -
製品資料
[日本オラクル株式会社] 戦略的経理の第一歩 失敗のない「脱Excel」を実現する秘訣とは? -
技術文書・技術解説
[日本オラクル株式会社] いまさら聞けないオンプレERPとクラウドERPの違い 最適な製品をどう見極める? -
事例
[株式会社ビザスク] 連結売上高が約2倍に成長、富士フイルムが実践した新規事業創出の戦略とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
「0.3秒のスピード顔認証」の入退室管理が社員に好評 事例に学ぶオフィス改革
-
4
「ノートPC派」は損をしている? Dellと考える“自作PC”のメリット
-
5
エンジニアの生産性はどう測る? マネジメントに不可欠な可視化の実現方法とは
-
6
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
7
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
8
1200万円のSaaS導入を回避 スギ薬局「運用費10万円」のAIエージェント構築術
-
9
「また同じ説明か」 消費者の半数が離脱するAIチャットbotの“記憶喪失”
-
10
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー