別れるユーザーの判断
SAPユーザーが思い悩む「SAP S/4HANA」への移行時期、リアルタイム処理をいつ手にする?(2/2 ページ)
アナリストは明確なメッセージをSAPに求めている
S/4HANAと「HANA Cloud Platform」との統合を通じてSAPが伝える物語には説得力がある。だが、こうしたメッセージは顧客の実際のニーズに合わせなくてはならない。そう指摘するのはEnterprise Applications Consultingで社長を務めるジョシュ・グリーンバウム氏だ。
「SAPは、同社が伝えるメッセージを実情や顧客のニーズに合わせようと努力している。それには時間がかかるというだけのことだろう。SAPユーザーは2つのグループに大きく分かれ始めていると考える。大規模アップグレードを本気で阻止し、何としても現状にしがみつこうとする保守派と、独自路線派、つまりイノベーターだ。後者は、間違いなくSAPが望む見方でHANA Cloud Platformを捉えている。つまり、数多くの革新を実現でき、S/4HANAのようなサービスを我が物にするための戦略を立て、実現に向けて動き出している」とグリーンバウム氏は語る。
SAPは非常に明確な道筋を中心に、ユーザーが理解できるメッセージにまとめる必要がある。
「技術面には定評があり、クラウドも優秀に見え、感触も良い。本当の問題は、もっと多くの機能をS/4HANAに組み込めるかどうかだ。S/4HANAは大企業の要望に応えるためにより多くの機能を用意する必要がある。だが個人的見解としては、S/4HANAはクラウドに組み込む方が適切だと考える。S/4HANAは実際のところ、短期戦術的手段ではなく、長期戦略を練る中で役割を担うものだ。戦略的手段であることから、SAPユーザーからすれば、推奨戦略の方向性が3つも4つも存在することは率直に言って分かりにくい」(グリーンバウム氏)
「SAPが直面する課題は、ユーザーのS/4HANAへの移行にコンポーネントベースモデルを勧めるか、それとも全面的移行を勧めるかの判断だ」とフリーランスのSAPアナリストで、Diginomicaの共同設立者であるジョン・リード氏は話す。テクノロジーは魅力的だが、SAPを実装している大半の企業は、一部のビジネスプロセスを本格的に再編成してからでなければSimple Financeを実装できない。
「相対的に見て、S/4HANAの中で最も成熟したコンポーネントはSimple Financeだ。だが、S/4HANAのSimple Financeを導入した既存のSAPユーザーと話をしたことはまだない。S/4HANAの導入を開始したが、まだ何も実装できていない中小企業数社に話を聞いたが、彼らはSimple Financeによって財務システムの扱い方が少し変わるだろうと話している。こうした変化が徐々に大きくなっていくと考える」とリード氏は言う。
リード氏によれば、SAPがSimple Financeとともに多くのERP機能を組み込むことでS/4HANAを強化していると発表したことが、追い風となるはずだという。だが、SAPがコンポーネントベースモデルのアップグレードを支持しているかどうかに関して、はっきりしないところがある。
「コンポーネントベースモデルの魅力は実装が大ごとではなくなる点だ。必要なときに必要なコンポーネントを選んでアップグレードすればよい」とリード氏は話す。この方法なら、他のベンダーが提供するサービスの確認を顧客に促すリスクをSAPが低減できると同氏は指摘する。
だが、リード氏にはSAPが進んでこの方法に乗り出そうとしているという確信がない。さまざまな機能領域に相互依存が非常に多く、こうした依存関係の存在がコンポーネントベースのアップグレードを難しくする恐れがあるためだ。SAPが大規模アップグレードに向けた最初の一歩としてSimple Financeを使用する戦略を取る可能性が高い。
リード氏によれば、企業は今のところSimple Financeから始める方針を取ることができるという。だが長い目で見れば全面移行することが唯一のモデルであることをSAPは示唆している。「それが不適切な戦略というわけではないのだが、コンポーネントベースの方法に比べると戦略としてはややリスクが高いと考えている」(リード氏)
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