別れるユーザーの判断
SAPユーザーが思い悩む「SAP S/4HANA」への移行時期、リアルタイム処理をいつ手にする?(1/2 ページ)
ユーザーやアナリストの多くは、インメモリデータベースを求めて「SAP S/4HANA」への移行は避けられないと考えている。だが、移行がなかなか進まない企業も少なくない。その理由とは。
多くのSAPユーザーはロードマップを手にして旅に出ている。目指すはSAPの「SAP Business Suite 4 SAP HANA」(S/4HANA)だ。メモリにデータを配置して処理する「インメモリデータベース」を目指す旅が簡単なものになると考えるユーザーはほとんどいないだろう。
多くのユーザーやアナリストは、SAPの「SAP ERP」システムをS/4HANAにアップグレードすることは免れないと考えている。だが、具体的なプロジェクトにはまだ乗り出していない。ほぼ全てのITプロジェクトに共通することだが、計画がなかなか進まない理由はたくさんある。技術面やビジネスプロセスの問題、経済的な理由までさまざまだ。
併せて読みたいお勧め記事
SAP S/4HANAに関する記事
SAPに関する記事
海運業をグローバルに展開するMaersk Lineは、S/4HANAへの移行を全て保留にしている。そう話すのは、同社のCFO(最高財務責任者)兼IT部門責任者のモートン・クリスティアンセン氏だ。
Maersk Lineは同社のERPプラットフォームとしてSAPの「SAP ERP Central Component」(SAP ECC)を運用している。だが、すぐにS/4HANAにアップグレードする計画はないという。もっと重要なIT優先事項があるためだ。「長い目で見れば結局はS/4HANAに移行することになると考えている。だが、その前に片付けておかなければならない多種多様なITプロジェクトがあるため、今後2、3年はS/4HANAを導入することはないだろう」とクリスティアンセン氏は話す。
同氏の説明によると、Maersk Lineは複雑なITプロジェクトに乗り出している。それは、オンライン顧客サービスを構築するプロジェクトだ。同社の現行プロセスはいまだに電話やメールへの依存度が高いので、これをリプレースすることが目的だという。「この大規模な取り組みには何年も掛かる可能性がある。このプロジェクトが最優先で、S/4HANAはその目標を実現する要素の1つにすぎない」と同氏は言う。
同社は、SAPのデータウェアハウス(DWH)である「SAP Business Warehouse」(SAP BW)システムをインメモリDWH「SAP HANA」に移行する計画が差し迫っていた。だが海運業の市場が軟化したことで計画は保留になった。
「実は、SAP BWをSAP HANAにアップグレードする取り組みをすぐにでも始める計画を立てていた。だが、コスト面の理由から延期を決めた。SAP BWをSAP HANAにアップグレードする理由は、現状のSAP BWのパフォーマンスが足りないためだ。実のところSAP BWのライセンスを2015年7月に買い戻した。当社にとってSAP HANAが最適であることは確かだが、経済面を考えると、しばらくは現状を維持するしか道はない」と同氏は語る。
クリスティアンセン氏の説明によれば、Maersk Lineはハードウェアのアップグレードとデータのアーカイブを計画しているという。それは、SAP HANAへのアップグレードから少なくとも1、2年は現行の実装を運用できるようにするためだ。
S/4HANAの会計サービス「Simple Finance」がリアルタイム機能を備えていることを考えると、アップグレードは避けられない。「速度は現実的な問題だ。当社でのSAP BWの主な用途は財務処理だ。他社と同様、決算の確定期日がますます厳しくなっている。これは実に厄介だ。かなり複雑な処理なので、S/4HANAがサポートするリアルタイムデータがあれば大いに助かるだろう」とクリスティアンセン氏は述べる。
他の企業はまだS/4HANAの計画をまとめ始めたばかりだが、どの企業も最終的には本気で移行する構えだ。
ジェームス・シェイファー氏は、ダラスを拠点にイベントや展示会の計画、実施を手掛けるFreemanのシステムアナリストだ。同氏によると、FreemanはS/4HANAの導入を計画しているが、そのプロジェクトはようやく始まったばかりで完了には何年もかかるという。シェイファー氏は、実現可能なロードマップの作成に着手するため、2015年5月の「SAPPHIRE NOW」でSAPの幹部と直接会って話をした。
「SAPの幹部と会って、S/4HANAの実装に向けた10年計画を立てる方法について意見を交換した。10年とした主な理由は、SAPがSAP ECCをあと10年間はサポートすると発表したためだ」とシェイファー氏は言う。
Freemanは2007年にSAP ERPを実装し、現在は「SAP EHP 7 for SAP ERP 6.0」を運用している。主に使用しているのはバックオフィス機能で、財務や購買、人事、給与計算などに対応していると同氏は話す。管理者は現行システムの動作に満足しているものの、トランザクションやレポートの処理時間を短縮できるS/4HANAの能力には注目している。「Simple Financeのデモは魅力的だった。月末の締めに総勘定元帳(GL)コックピットを使用できるのが気に入っている。これがあれば処理が簡単になり、決算の確定に掛かる時間を短縮できる」と同氏は言う。
プロジェクトはまだ策定段階だ。S/4HANAの実装を完了するまでにさまざまな点でSAPの支援が必要になるだろうとシェイファー氏は考えている。
「SAP HANAサーバが必要になるだろうし、移行の準備では自社のサポートチームからの支援も欠かせない。恐らく、SAPのシステム管理プラットフォーム『SAP Solution Manager』のレポートを活用することになり、新しいアーキテクチャのトレーニングも必要になる」(同氏)
Freemanは実装プロセスにおいてSAPや別のテクノロジーパートナーと契約することになるとシェイファー氏は見込んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[サイバーソリューションズ株式会社] メール誤送信対策のルールが肥大化 苦しむ情シスはどうすれば救われるのか? -
事例
[横河レンタ・リース株式会社] AIの全社活用が加速 トヨタ・コニック・プロに学ぶ「AI PC調達」の秘訣 -
製品資料
[横河レンタ・リース株式会社] 人材不足時代の「PC調達」ガイド:知っておきたいリースとレンタルの違い -
製品資料
[横河レンタ・リース株式会社] PC調達に「レンタル」を選ぶことのメリットは? リース・購入との違いも解説 -
事例
[Datadog Japan合同会社] プレイドはKARTEの障害早期検知とシステム改善をどう実現したか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
2
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
3
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
4
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
5
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
6
「サイバー犯罪株式会社」に潜入 現地調査で判明した“犯罪者求人”の実態
-
7
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
8
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
9
【基本情報技術者試験】メモリ不足でもアプリが動くのはなぜ? OSを支える「仮想記憶」
-
10
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
8
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
9
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
10
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー