今度こそ会計業務のペーパーレス化【第3回】
「電子帳簿保存法Q&A」徹底解説:中小企業のペーパーレス会計、こんな時はどうする?(1/2 ページ)
本連載の最終回では、国税庁「電子帳簿保存法Q&A(平成27年9月30日以後の承認申請対応分)」の回答を参照しつつ、中堅・中小企業における会計業務のペーパーレス化で失敗しないためのポイントを解説する。
電子帳簿保存法改正のポイントと実務について解説する本連載の最終回では、これからペーパーレス化を推進する、または検討する企業にとって、気を付けたい点や運用面でのポイントについて解説する。
第2回で解説した通り、国税関係書類のスキャナー保存に関する規制が緩和されたことで、ペーパーレス会計の環境を導入することは容易になってきている。しかし相応に準備のコストや時間を要することを考えると、さまざまな要因を考慮して失敗なく導入を進める必要がある。以下、国税庁が公表している「電子帳簿保存法Q&A(平成27年9月30日以後の承認申請対応分)」(以下「Q&A」)の回答を参照しつつ、実務上の留意点を解説する(以下「問○」の項番は「Q&A」における問の番号を示す)。
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ペーパーレス会計の導入について
ペーパーレス会計を導入するべきかどうかの判断基準は何か
オフィス文書を保管するスペースのコストや事務処理コストなどを基に総合的に判断すべきであるが、具体的には以下の要因を加味して決定するべきである。
- コスト削減要因
- 紙文書の保管スペースにまつわるコスト(月額~年額)
- 紙資料で出力、受領するコスト
- 税務調査や監査対応のコスト
- コスト増加要因
- スキャナー保存導入による初期コスト(環境準備、規定整備、トライアル運用など)
- スキャナー保存導入による運用コスト(ヘルプデスクなど)
記帳代行業者にスキャナー保存をまとめて委託する、といった運用は可能か
中小企業であれば、関連証憑類を記帳代行業者に送付して入力を委託するという運用が想定されるが、改正後の電子帳簿保存法は取引内容を順次記録する、という前提での制度であるため、一課税期間分をまとめて入力するという運用は実質的に不可能である(問10)。
参考:電子帳簿保存法Q&A(平成27年9月30日以後の承認申請対応分)
スキャンした書類データの保存はいつまでに行うのか。月次でも問題ないか
2015年の税制改正後の電子帳簿保存法では、「その業務の処理に係る通常の期間」を経過した後「速やかに」入力を行うとしている(問37)。「速やかに」とはおおむね取引の発生から1週間以内とされることから、業務処理サイクルが「週次」であれば「1週間+1週間」となり、「月次」であれば最長で「1カ月+1週間」が入力の期限となる。改正法では業務処理サイクルを「日次」「週次」で想定しているが、「月次」単位で画面や帳票に出力することができて、入力月と取引年月日の関係から追加入力の事実が確認できる場合には、入力日付のデータを持たない場合でも「月次」単位での保存も認められる(問16、17)。
事務処理ルールについて
スキャナー保存に当たっての事務処理ルールはどのように整備すればよいのか
事務処理の取り決めである「適正事務処理規定」として、以下の要件を定める必要がある。
- 相互けん制
- 定期的なチェック
- 再発防止等
定期的な検査や不備の報告についてもルールが定められており、これらについては国税庁Webサイトからひな型がダウンロードできるので活用してほしい。なお規定の整備にあたっては最初から完成形を目指すのではなく、トライアル運用を通じて規定の品質を上げていくことが肝要である(問45、58、59)。
参考:電子帳簿保存法Q&A(平成27年9月30日以後の承認申請対応分)
- 問45「規則第3条第5項第1号ロに規定する「各事務の処理に関する規程」、同項第4号の「適正な実施を確保するために必要な体制及び手続に関する規程」及び同条第6項の「事務の手続を明らかにした書類」との違いは何でしょうか」
- 問58「規則第3条第5項第4号ロの「定期的な検査」は、検査の対象となる各事務を行っている者が行ってもよいのでしょうか」
- 問59「規則第3条第5項第4号ハの「不備があると認められた場合において、その報告」とは誰に報告すればよいのでしょうか。また、同ハの「改善のための方策の検討を行う体制」はどのような体制をいうのでしょうか」
「適正事務処理規定」のサンプルについて
- 問54「当社は、代表取締役とその妻が経理部長を行い、2人で製品製造販売を営んでいる同族法人です。この度、国税関係書類(請求書、納品書、見積書(控)、注文書)のスキャナ保存を始めようと考えていますが、規則第3条第5項第4号(適正事務処理要件)に規定する「次に掲げる事項に関する規程」とは具体的にどのような規程を整備すればよいのでしょうか」
- 「適正事務処理規定」のサンプルpdf
(国税庁)
書類の電磁的記録を保存するタイミングはいつの時点と考えるのか
国税関係書類をどの日付をもって保存するかについて、以下のような状況が想定されている。
- 相手方に交付する書面については、実際に相手方に交付した時点とされる(作成した時点ではないので注意)
- その他の書面については、作成を完了したと認められる時点(作成した時点)とされる
なお、画面のハードコピーでの保存は認められないので注意が必要だ(問11、21)。
参考:電子帳簿保存法Q&A(平成27年9月30日以後の承認申請対応分)
- 問11「法第4条第2項の承認を受け、国税関係書類を電磁的記録によって保存する場合、具体的にどの時点における電磁的記録を保存する必要がありますか」
- 問21「電磁的記録の書面への出力に当たっては、画面印刷(いわゆるハードコピー)による方法も認められますか」
(国税庁)
データ記録事項の関連性を確保するのはどのように想定すればよいのか
帳簿間の記録事項の関連性を確認するための記録方式として、以下3つのケースが例示されている。
- 明細データで記録等する場合
(明細データの単位で仕訳を生成し、元帳に転記する)
- 集計した結果(合計額)を転記する場合
(売上帳などの明細データの合計額の単位で仕訳を生成し、元帳に転記する)
- 集計した結果を記録等する場合
(商品別売上帳の明細データから日別などの単位で集約データを生成し、売上帳で月別に集約した単位で仕訳を生成し、元帳に転記する)
明細データで記録等する場合が標準的なパターンになるが、取引量や明細データの運用方針によりその他のケースを想定したい(問18)。
参考:電子帳簿保存法Q&A(平成27年9月30日以後の承認申請対応分)
(国税庁)
スキャナーの操作やスキャンデータについて
書類をスキャンする単位はどのように考えるのか
書類は取引の単位、すなわち証憑ごとにスキャンするのが原則となるが、「一の入力単位」として複数枚で構成される請求書や台紙に複数の領収書等を貼付された状態でスキャンしても問題はない。また、スキャナーのサイズよりも大きい書類については分割して保存しても差し支えなく、ファイルを圧縮して保存しても差し支えない(問52、61)。
参考:電子帳簿保存法Q&A(平成27年9月30日以後の承認申請対応分)
- 問52「スキャナの読取サイズよりも大きい書類を受領した場合、その書類を分割するなどしてスキャナで読み取ることでも差し支えないでしょうか」
- 問61「スキャン文書について圧縮して保存することは認められないのでしょうか」
(国税庁)
タイムスタンプはユーザーが操作して付与しなければならないのか
タイムスタンプの付与は、スキャンしたタイミングで直ちに行うのが原則である。なお市販のPDF作成ソフトではタイムスタンプ埋め込み方式が標準機能として実装されているため、特にユーザーが意識せずともタイムスタンプ情報を保持することが可能である。タイムスタンプ機能が付いてないスキャナーを利用する場合にはユーザー自身の操作でタイムスタンプを付与する必要がある。
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