Parseのサービス終了が追い風に
モバイルアプリ開発でもシェア拡大、AWSモバイルサービスの全体像(2/2 ページ)
AWS Mobile Hubのエンドツーエンドの欠如
AWS Mobile Hubは、Amazonらしい既存市場の破壊に向けた第一歩にすぎず、このパターンで同社は急成長を遂げてきた。IaaS(Infrastructure as a Service)と、従来のクラウドコンピューティングプラットフォームがコモディティ化していることで、Amazonは、市場における差別化を維持するために新たにサービスを再パッケージ化しなければならない。そこで登場したのがAWS Mobile Hubだ。開発プロセスを簡略化し、モバイル開発者が必要とする基本的なAWSサービスに統合されたインタフェースを用意したのだ。そう話すのは、広告テクノロジー企業VidRollで最高技術責任者(CTO)を務めるジェームス・ヤング氏だ。
「Amazonはこの新たな付加価値によってどのような結果が生じるか、どこで顧客を引き付けて確保できるかを把握しようとしている」とヤング氏は指摘する。
モバイルアプリ開発者向けに自社のサービスをまとめるAmazonの取り組みは、完成にはまだ程遠い。Unity Technologiesの「Unity」やXamarinの「Xamarin」のサポートなど、一部のオプションはコンソールに組み込まれていない(Mobile Hubの一般提供開始直後にXamarinはMicrosoftによって買収されている)。そのような部分については、AWS Mobile SDKを使用することでAWS Mobile Hubアプリの足りないところを補える。
現時点では、AWS Mobile Hubを通じてAWSの基本サービスの全機能が利用できるわけではない。例えば、Cognitoは、AWS、Facebookの「Facebook」、Twitterの「Twitter」「Digits」、Googleの「Google+」でのエンドユーザーログインのサポートだけではなく、未認証ユーザーもサポートしている。ただし、FacebookとGoogle+以外でのログインについては、AWS Mobile HubコンソールでなくAWS Mobile SDKを使用して構成しなければならない。
AWS Mobile Hubは、堅牢な製品に匹敵するものではない。具体的には、KonyおよびAppceleratorのプラットフォームや、Adobeの「PhoneGap」などだ。これらのプラットフォームは、モバイルバックエンドサービスに加えて、フロントエンドアプリ開発ツールを提供している。そう語るのは、MarkoInsightsでテクノロジーアナリストを務めるカート・マルコ氏だ。
そのレベルに到達するには、AWS Mobile Hubはこうしたツールに含まれる統合開発環境(IDE)との結び付きを強化する必要がある。クラウド競合企業のMicrosoftとGoogleは、この種の統合の取り組みを既に終えている。Microsoftの場合は「Visual Studio」、Googleの場合は「Android Studio」ツールにそれぞれ統合している。AWS Mobile Hubの場合は、まだ自前で用意しなければならない部分が少なくないとマルコ氏は指摘する。
「多くの場合、モバイルバックエンドに関する話題ではクライアント側との密接な結び付きがある。一方、ほとんどのAWSアプリでは、クライアント側の要素はそれほど多くない」(マルコ氏)
Amazonは、買収やパートナーシップによって、この限界を近い将来に打破する可能性があると同氏は補足する。
AWSインフラ、勝利の可能性
Amazonがモバイル市場に参入する際に、同社の定評のあるインフラが競争上の最大の強みになる点は今後も変わらない。そう指摘するのは、コンサルティング企業でありクラウドソフトウェアプロバイダーのCloud Technology Partnersでシニアバイスプレジデントを務めるデイビッド・リンティカム氏だ。
「Amazonのサービス一辺倒なら、AWS Mobile Hubが最適なプラットフォームになることは間違いない」(リンティカム氏)
モバイルバックエンドを確立するための個々の試みが必ずしも成功するとは限らない。その代表格がFacebookの「Parse」だ。Parseは、ちょうどAWSがAWS Mobile Hubを市場に投入したときに、突如として終了が発表されたサービスだ。各プロバイダーは、Parse終了の機会を逃すまいとしている。だが、強制退去を迫られたParseユーザーに対して最も障害の少ない道を示しているのは、既に100万人のユーザーをインフラで運用しているAWSかもしれない。
そのようなParseユーザーの1社が人材登用ソフトウェアメーカーのJobviteだ。2015年、Jobviteは同社初のモバイルアプリの作成を目指しており、Amazon SNSのモバイルプッシュ通知を検討した。その理由は、同社が他の多くのサービスを既に「Amazon Elastic Compute Cloud」(Amazon EC2)で運用していたためだ。
「戦略的に見れば、SNSを利用することは適切だったろう」とJobviteでエンジニアリング部門のディレクターを務めるダニエル・リプキン氏は話す。
だが、Parseの方が監視ダッシュボードで一歩先を行っていた。このダッシュボードを使用すると、IT部門の管理者と開発者がイベントの詳細や他の機能を掘り下げることが可能だったと同氏は語る。Parseのサービス終了が発表されたとき、Jobviteのモバイルアプリはβ版テストに進めようという段階にあった。このタイミングでAWS Mobile Hubの一般提供が始まったのはタイミングが良かった。リプキン氏によれば、AWS Mobile Hubで生成されたSNSコードは簡単に取り出してアプリ内に移植できたという。
「Amazonはこのような事態を考慮に入れた素晴らしい仕事をした。恐らく当社と同じ状況にあるユーザーは他にも多数存在する。そのようなユーザーは、AWS Mobile HubをParseの代替サービスとして考えるようになっているだろう」(リプキン氏)
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