モバイルアプリ開発の新潮流「mBaaS」入門【第1回】
モバイルアプリ開発を加速する「mBaaS」のメリット/デメリット
「mBaaS」という単語を聞いたことはあるだろうか? スマートフォンアプリのバックエンド側の仕組みをクラウド上で提供するサービスだ。この記事ではmBaaSを使う際に考えるべきポイントや主な機能を紹介する。
mBaaSとは何か?
「mBaaS」という単語を聞いたことがあるだろうか。ここ数年話題に挙がることの多い、“XaaS”といわれる分野の1つだ。Bはバックエンド、つまりBaaSとは、システムにおけるバックエンドをサービス化したもの、「Backend as a Service」のことである。そしてmBaaSとは、その中でも特にモバイル分野に特化したサービス「mobile Backend as a Service」を指す。
iPhoneの登場以降、モバイルアプリケーション市場は活況を呈している。カレンダーやカメラアプリ、ゲーム、ソーシャルなど、さまざまなジャンルのサービスがアプリとして登場し、スマートフォン向けに提供されている。
それらのアプリを大きく分類すると、ネットワークを使っているかそうでないかという分け方ができる。ネットワークを使っていないアプリとしてはコンパスや計算機のような小さなユーティリティ、カメラアプリなどが挙げられる。しかし、それ以外のアプリを見ると、どれも程度は違うものの、ほとんどがネットワークを使っていることに気付くはずだ。ゲームであればランキング機能を使って世界中の人たちとスコアを競い、チャット、ソーシャル、Webブラウザなどはネットワークがなければそもそも使うことができない。タスク管理アプリですら、ネットワークを使って他のユーザーやデスクトップと共有・同期を行っている。無料アプリにとっての収益の要である広告もネットワーク経由で配布されている。スマートフォンアプリにおいてネットワークは切っても切れない関係にあるといえるだろう。
ネットワークはアプリの自由度、可能性を飛躍的に向上させる。幸い、ほとんどのスマートフォン利用者が定額の通信プランに加入しており、ネットワークの利用に対して前向きだ。また、日本のモバイルネットワークは高速で、利用者のストレスになることはまずない。だからこそ最近のアプリはネットワークを積極的に使う傾向にある。
そして、その時に問題になるのがアプリとは異なるシステムの必要性だ。つまりネットワークの向こう側にある仕組みを作らなければならないのだ。具体的に言えば、ランキングデータを蓄積したり、写真や利用者の入力したデータを保存したりする仕組みである。しかも、それらが安定、安全のもとに常に利用できる状態になっていなければならない。万が一、データが消失したりシステムがダウンすれば、アプリ自体が利用できなくなるだけなく、ユーザーの信頼性を損ない、最悪のケースでは損害賠償を請求されるリスクもある。そのため、アプリ開発とは別でサーバサイドのプログラマーを雇用(または外注し)、システムを開発する必要がある。しかし、事はそうそう単純ではない。刻々と変わるビジネス状況に合わせたシステムの追加開発、柔軟性の維持、24時間365日の安定した運用、iOS/Androidといった2大プラットフォームに共通した機能の提供など、課題は山積みなのだ。
mBaaSの誕生とメリット/デメリット
そんな背景で登場したのが今回紹介するmBaaSだ。ネットワークにつなぐ必要があるモバイルアプリの汎用的な機能を、多様なアプリに対応できる形で提供している。システム管理は、ノウハウを有する提供事業者によって24時間365日の安定した運用がなされる。アプリの規模に応じた料金体系を選択すれば、負荷が高まった際のサーバ増設(スケーリング)や万一のバックアップも考える必要がない(mBaaSではデータがバックアップされているのが一般的だ)。汎用的な機能を簡単に実装できるだけでなく運用も楽になることで、アプリ開発に専念できる。アプリ開発者にとって、このメリットは非常に大きい。
クラウドやVPS(仮想専用サーバ)などによってサーバ費用は下がってきているとはいえ、開発したアプリが成功するかどうかが分からない状況下で、一定のコストが掛かり続けるサーバのホスティングがリスクに感じられることはないだろうか。mBaaSの場合、一定量までは無料であったり、機能が限定されている代わりに安価だったりするので、サーバをまるまる1台借りるのに比べて随分と安くなる。また、mBaaSを使うことで、サーバ費用だけでなく開発費用のコスト削減も可能だ。モバイルアプリで必要とされるバックエンドの機能は大体どのアプリにも共通していて、アプリ開発者は毎回同じ作業を繰り返している。それにもかかわらず人件費やシステム開発費は大きいのが実情で、さらに運用時にも毎月大きなコストが必要になる。そもそもモバイルアプリ開発を熟知しているサーバサイドの開発者を探すこと自体が大変なことだ。その開発に数カ月を費やしている間に、ビジネスチャンスを逃してしまうかもしれない。そういったコストやリスクがアプリ開発を躊躇(ちゅうちょ)させてしまっているとしたら、それは非常にもったいない。その点、申し込めばすぐに使い始められるmBaaSのスピード感は、一度試してみる価値がある。
そしてもう1つ、mBaaS利用の大きなメリットとして、アプリ提供者がアプリ開発に専念できるというのがある。アプリが成功するかどうかはサーバサイドではなく、UI(User Interface )/UX(User Experience)などのアプリのフロントエンドによって決まる。前述の通りサーバサイドで必要とされる機能はおおむね同じであるため、サーバサイドの仕組みによってアプリの差別化を図るのはとても難しい。つまりアプリのUI/UXをいかにデザインし開発するかが差別化の重要なポイントであり、そのアプリが成功するかどうかを分けるのだ。そのため、利益の源泉たるフロントエンドのアプリ開発に専念できるメリットは相当大きいといえるだろう。
逆に、mBaaSを利用するデメリットは何だろうか。まず、サービス提供事業者にデータを握られることが挙げられる。ユーザーデータに関する自社のセキュリティポリシーを策定し、信頼できるmBaaS提供事業者を選ぶ必要性があるだろう。また、mBaaSはクラウドサービスであるため、インフラ環境が共有であることも挙げられる。共有しているインフラに他社が大きな負荷を掛けたために影響を受ける可能性はゼロではない。とはいえ、これは昨今のVPSやクラウドサービスを用いる上でのリスクと同等といえるだろう。最後に、自社でイチから開発するのに比べると柔軟性という点で劣るかもしれない。mBaaSで提供されている機能以上のことはできないので、アプリの要件を満たしているかどうか、あらかじめ検討する必要があるだろう。
mBaaSの主な機能
mBaaSが提供する主な機能としては、「ストレージ」「プッシュ通知」「ユーザー管理」「ソーシャル連動」、さらにゲーム関連であれば「ランキング」などがある。また、開発者向けの管理画面では、プッシュ通知の配信数と開封率、データ/ユーザー管理、リポートなどが提供される。これらを解析することによってアプリ開発をよりスムーズにしたり、何らかの問題が発生した際に管理画面を通してメンテナンスしたりもできる。ユーザー向けの機能は開発したとしても、管理画面から操作できる解析機能やメンテナンス機能の開発は先送りされやすいものなので、それもmBaaSのメリットといえるかもしれない。
今回はmBaaSの概念、そのメリットおよびデメリットについて紹介した。次回「知らないと損する、モバイルアプリ開発で無くてはならない3つの機能」は、mBaaSを使って具体的にできることやmBaaSの市場状況について紹介する。
三嶋英城(みしま ひでき)
ニフティ株式会社
2005年ニフティ株式会社入社。
主に新規サービス開発に携わり、2010年以降、スマートフォンの普及とともにネイティブアプリの企画を推進。2013年からクラウド事業に従事し、自身が痛感してきたアプリビジネスの課題を解決するため、mBaaSを立案。2013年9月に「ニフティクラウド mobile backend」を起ち上げる。
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モバイルアプリ開発の新潮流「mBaaS」入門
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