ネイティブアプリか、Webアプリか
「世界レベルのHTML5チーム」がこだわったモバイルアプリ開発手法とは
ネイティブアプリか、Webアプリか。モバイルアプリ開発ではどのようなプラットフォームでアプリを開発するかを決定するのは簡単ではない。プロジェクト管理アプリを開発したある企業の事例を紹介する。
職場での共同作業と効率改善を促進する取り組み自体は何も目新しいことではないが、それを達成するための手段は進化しつつある。その背景には、従業員がモバイル端末から情報にアクセスするようになったことがある。Webベースのプロジェクト管理アプリケーションを開発する米Wrikeのアンドルー・ファイレブ最高経営責任者(CEO)は、この変化に後れを取らないために、同社の製品をモバイル環境に対応させる必要があると考えた。
ファイレブ氏にとって最大の課題は、同社のプロジェクト管理製品である「Wrike」のユーザーが複数のプラットフォームから簡単に同ツールにアクセスすることを可能にするモバイル戦略を策定することだった。「製品を早急に投入するとともに、“魅惑的”なユーザーエクスペリエンスを提供したかった」と同氏は語る。
ファイレブ氏は、Wrikeの最高技術責任者(CTO)およびモバイル開発者とともに、提供すべき機能のリストを作成した。開発チームが必要としたのは、カスタマイズ可能な機能を提供し、拡張性を備えたツールだった。そのころ、モバイル分野ではAndroidが大きな勢力を持っていたが、開発チームはAndroidユーザー専用の製品を開発してiOSユーザーをないがしろにすることは(また、その逆も)避けたかったという。
さらに開発チームは、「HTML5」の機能を最大限に活用できる柔軟なプラットフォームを目指そうと考えたという。きれいなグラフを作成する機能だけでは不十分だと思ったからだ。Webブラウザとモバイル端末で同じエクスペリエンスを実現できることが不可欠だったのだ。「Webアプリケーションは魅力的で拡張性が高いのに、モバイルアプリの方は簡素極まりない、というのではだめだと思った」とファイレブ氏は話す。
開発エンジニアたちは、マーケティング資料の作成よりもコーディング作業を重視した。彼らは企業の担当者に会って話を聞くことよりも、開発フレームワークに注目し、実証試験を何度も繰り返した。複雑な利用形態に対応できるかどうか確認するためにプロトタイプも作成した。この作業を通じてファイレブ氏が特に注意を払ったのは、開発したアプリケーションが動的な負荷を処理できるだけでなく、優れたレスポンスとインタラクティブ性を備えるようにすることだった。
開発チームが重視したのが、「HTML5を積極的に活用しながらも、アプリケーションストアから配布できるネイティブアプリケーションの形にする」ためにハイブリッドアプローチを採用することだった。「ハイブリッド型フレームワークを評価する際には、ユーザーに意識されるような遅延がないことを確認する必要がある」とファイレブ氏は話す。「ハイブリッド型アプリでもネイティブアプリと同等のエクスペリエンスを実現しなければならないのだ」
ファイレブ氏がモバイルアプリ開発計画でハイブリッドアプローチを採用しようと思った理由はもう1つある。同社は既に「世界レベルのHTML5チーム」を抱えていたからだ。「既存の人材とツールを活用することが、製品を市場に投入するまでの時間を短縮する手段になる」と同氏は考えたのだ。
開発ツールの選定に当たってファイレブ氏は数社のベンダーの製品を検討したが、最終的にHTML5の機能と柔軟性に優れた米Senchaの「Sencha Touch」を選んだ。開発チームの印象では、このツールは強力なフレームワークで、カスタマイズ機能にも優れているので、Webブラウザ上でもモバイル端末上でも高品質のユーザーエクスペリエンスを実現できそうに思えたという。
HTML5フレームワークの利用という点では実装はスムーズだったが、携帯電話ベンダー側の要因による問題も発生した。ファイレブ氏によると、ユーザーがアプリケーションをたまに使う程度では発生しないが、「HTML5技術の限界」を超えると出現するバグがあるのに気付いたという。
こうした状況に直面した場合にどう対処すべきかについて、同氏は次のようにアドバイスしている。「まず、Webアプリケーションとモバイルアプリの違いは、画面が大きいか小さいかというフォームファクターだけではないことに注意しなければならない。入力方法も違えば、ユーザーの操作方法も異なるのだ。ネイティブアプリケーションにするのか、それともハイブリッド型あるいはHTML5方式にするのかを決めるに当たっては、最終目標がどこにあるのか考えることが大切だ」
「既にWebベースのアプリケーションを持っている企業であれば、製品を市場に投入する最も手っ取り早い方法はハイブリッド型アプリを開発することだ」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社フィックスターズ] 組み込みデバイスへのAI実装で開発速度と品質を両立する方法 -
製品レビュー
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 実画面を見れば納得 営業・設計・開発を「AI×CRM」でつなぐとこうなる -
比較資料
[アイティメディア広告企画] ERP導入ガイド:「OBIC7」「SMILE V 2nd Edition」「Oracle NetSuite」を比較 -
市場調査・トレンド
[アイティメディア株式会社] AI Overviews時代のB2Bマーケ! 成長企業が選ぶ戦略とは? -
市場調査・トレンド
[アイティメディア株式会社] なぜあの施策は失敗したのか? B2Bマーケ施策を成功させる3つの鉄則
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
NVIDIA「一強体制」の終わりか データセンターを襲う“電力の壁”
-
2
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
3
岐阜県庁が7000人規模でも重くならないテレワークを「Prisma Access」で実現
-
4
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
5
IBM iのブラックボックス化を打破 資産継承と進化を実現する「IBM Bob」の実力
-
6
ソフトウェア部品表「SBOM」のフォーマットとは? 国際標準「SPDX」の中身
-
7
Microsoft 365侵害企業の9割はMFA導入済み 1002人調査で見えた盲点
-
8
Microsoft 365導入後も稟議は「Excelをメールで回覧」 承認が止まる理由
-
9
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
10
Amazon配送車の車載カメラが引き起こす4つのプライバシー議論
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
3
10G回線の真価をフルに享受するには? 導入前にチェックしたいポイント
-
4
SCS評価制度時代の「SASE選定」ガイド
-
5
顧客対応自動化の要点:RAGとデータ連携で“業務で使える生成AI”にする方法
-
6
マンガで解説:情シスの負担を減らす「MDRサービスのインシデント対応」の中身
-
7
「EDR」選定ガイド:比較・検討フェーズで整理すべきポイントを解説
-
8
なぜAIは組織で定着しないのか? 全社展開を阻む「3つの壁」と突破のヒント
-
9
ランサムウェア攻撃“究極の対策”はこれだ
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー