メリットとデメリットを見極めて適材適所を
コンテナ技術の取り込みで期待集まる「OpenStack」、大躍進の陰に残る課題とは(2/2 ページ)
依然残るOpenStackインフラの課題
6年近く前に登場して以来、OpenStackインフラは大きく進化している。OpenStack Foundationは少数の大企業に働きかけ、OpenStackの導入、使用経験を公表してもらっている。WalmartやPayPalなどだ。最新のユーザー調査によると、OpenStackの導入先の65%は、この技術を本番環境で使用しているという。
OpenStackインフラは、通信事業者のネットワーキング層として広く利用されており、多くのサービスプロバイダーがその上でサービスを構築している。パブリッククラウドの基盤としての導入も世界的に進んでいる。だが米国では、従来のように大企業での利用が主体となっており、こうした利用では依然として課題がある。
OpenStackは、以前からネットワーキングとスケーリングが弱く、SDN(Software Defined Networking)プロジェクトの「Neutron」が大きなネックとなっている。Neutronについては、過去2回のリリースサイクルで大幅な改良が加えられており、OpenStackプラットフォーム全体はエンタープライズ用途に対応できるが、さらなる向上が必要だと、LivePersonのホルツァー氏は語る。
「OpenStackコミュニティーは今後1~2年間、OpenStackのインフラ、特に、基本的なコンピュート、ネットワーク、ストレージについて、高いスケーラビリティの実現に力を入れる必要がある」(ホルツァー氏)
また、アップグレードも悩みの種だ。LivePersonはOpenStackの「Kilo」リリースにアップデートしているところだが、最初に全てのインスタンスをあるホストから別のホストに移行しなければならない。ネットワークドライバの再起動に30秒のダウンタイムが必要だからだ。小さなチームでアップデートをこなすしかない企業では、完了するのに何週間もかかるかもしれないと、ホルツァー氏は説明する。
OpenStackは、リリースサイクルが6カ月で、コードネームはアルファベット順に付けられている。最新リリースの「Mitaka」は2016年4月に公開された。
OpenStackの初期リリースは、本番環境に利用できるほど安定していなかった。2013年公開の「Grizzly」リリースが最初の実用版だったと見ている人が多いと、資産運用会社HedgeServのグローバルインフラ運用担当シニアディレクターを務めるデーブ・ブロジェット氏は語る。それ以来、リリースを重ねるごとに使い勝手やスケーラビリティ、管理効率が向上している。こうして技術が成熟したことで、今後はOpenStackを取り巻くエコシステムが最適なところを見極めながら、磨きをかける取り組みを進めることになる。
「プロジェクトが技術的に一定のレベルに到達したことから、商用ベンダーはこの活動の収益化に本腰を入れるようになり、エコシステムはより着実な形で機能するようになる。これからもこのプロジェクトでさらに多くの成果が挙がると思うが、コミュニティーとベンダーのエコシステムによる開発とその成果の利用は、もっと地に足が着いた形で行われるようになるだろう」(ブロジェット氏)
レガシーの制約
プライベートクラウドはしばしば、AWSのようなパブリッククラウドプラットフォームの人気の急上昇を念頭に置いた、その場しのぎの方策として軽んじられる。だが、レガシーシステムやスタッフをかなり大量に抱える企業は、選択や行動の自由度が限られていると、OpenStackの推進者は指摘している。
パブリッククラウドの導入では、コストの安さが最大の動機であることが多いが、大企業では、実はその逆の行動が取られていると、ホルツァー氏は説明する。パブリッククラウドを利用すれば、スタートアップ(新興企業)は物理層を扱ったり、サポートスタッフを雇ったりしないで済む。だが、サーバの数が増えると、それらのサーバを買ってホスティング施設に置き、そのワークロード管理に必要な十数人の担当者を雇う方が、安上がりなことが多いという。
一方、HedgeServは、仮想化大手のVMware製品を利用して、OpenStackインフラを運用している。当初は、同社製品でOpenStackのオープンソースツールを管理することに不安も感じたが、評価した結果、同社製品が一定レベルの安定性や信頼性を備えていることが分かったという。こうした非エフェメラル(一過性でない)ワークロードをパブリッククラウドで実行した方が安くつくと考える人は、そうした判断に当たって考慮すべき経済性を理解していないと、ブロジェット氏は指摘する。
「全てのワークロードをパブリッククラウドに移行すれば安上がりになると思う人は、社内システムを非効率に運用しているか、プライベートクラウドの包括的なコストプロファイルを作成したことがないかのいずれかだろう」(ブロジェット氏)
また、コンプライアンスやセキュリティ、データの所在地といった問題の観点から見ても、プライベートクラウドは魅力的な選択肢になる。その一方で、Microsoftのような企業とのソフトウェアライセンス契約によって、企業のワークロードの移行先となるパブリッククラウドの選択肢は、限られてくる。
「われわれはNetflixのように業界でもてはやされる、全てがクラウドで完結する企業ではない。われわれは大量のレガシーワークロードを抱えている」(ブロジェット氏)
だが、プライベートクラウドは、ユーザーは絶賛しているものの、業界アナリストはさまざまな疑問を投げかけている。プライベートクラウドベンダーはひそかに、「ユーザーを説得して自社環境について公表してもらうのが難しい」と愚痴をこぼしているが、アナリストはそのこともしばしば引き合いに出し、「これは、プライベートクラウドの導入実績が限られていることを示している可能性がある」と指摘している。
OpenStackインフラに関しては、適所を見つけることが重要だと、Gartnerのキャンシラ氏は語る。OpenStackを使いこなせるスタッフの確保も、依然として大きな課題だが、これについては新しい認定プログラム(特定のベンダーに特化したものではない初の認定プログラム)が役立ちそうだ。さらにキャンシラ氏は、「プライベートクラウドはユーザー層が限られており、OpenStackは、Microsoftのパブリッククラウドのオンプレミス版となるAzure Stackと競合する恐れもある。また、VMwareが製品価格を下げれば、OpenStackにとって脅威になるかもしれない」とも付け加えている。
「OpenStackの競争力を高めるには、ユーザーエクスペリエンスや管理性を向上させるために、2倍投資しなければならないだろう。OpenStackは支持を広げているが、それはあくまでも少しずつだ」(キャンシラ氏)
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