テレワークは「自分の仕事の価値とは何か」を問い掛ける
テレワークは社員の価値を浮き彫りに――向いてないのはどんな人?(2/2 ページ)
テレワークで専門性の高いスタッフを確保――ブレインワークス
ブレインワークスは中小企業の経営サポート事業やアジア進出のビジネス支援事業などを手掛ける、中堅規模のIT企業だ。「中小企業の生き残り戦略として、時代やニーズの変化に適応しないことは最大のリスクだ。テレワークは経営改革のきっかけになる」と、ブレインワークス取締役 大西信次氏は同社のテレワークの取り組みを紹介した。
ブレインワークスでは1999年頃からテレビ会議システムを導入した。日本だけでなく、ベトナムにオフショア開発の拠点を置くことから、テレビ会議システムを自社の会議だけでなく、さまざまなオンラインサービスとして提供している。例えばセミナーや研修、現地スタッフへの技術指導、商談への同行などだ。中でもユニークなのは、通訳スタッフをテレビ会議システムで遠隔地から参加させるサービスだ。「通訳者や熟練工といった専門性の高いスタッフの確保と派遣は一般的に難しいものだが、同席するという条件を外せば、可能性が広がる。だからこそテレビ会議システムが生きる」(大西氏)。
同社のメインオフィスは東京、大阪、ホーチミンにあるが、サテライトオフィスが神戸、沖縄、名古屋およびハノイの各支店にある。在宅勤務のスタッフもおり、各拠点を自社のテレワーク用システムで結び、オンラインの会議、研修、打ち合わせができる環境を整えている。また、徳島県にある2つのNPO法人と提携し、テレワーク勤務ができるサテライトオフィスを整えている。
このように、長年テレワークを自社で実践し、サービスとして他社にも提供している同社が「テレワークをやってみて初めて分かったこと」として、大西氏は次の5点を挙げた。
- 社員がテレワークを嫌がる
- 「簡単なのでやってみてください」と促したり、社長や上司がある程度の強制をしないと、社員は現状維持を選ぶ傾向にあり、テレワークをしないことを正当化する。例えば「あの書類が会社にあるからテレワークはできない」などと言い訳をする。働きかけを続けることで、徐々にテレワークを受け入れ始める。
- テレワークには向き不向きがある
- 自律的に働く能力のある人はテレワークに向いているが、そうでない人には向かない。大西氏は「自律的な働き方のできない人は、会社に来ても生産性が高いわけではない。逆に言うとテレワークは、社員の生産性を見直すよいきっかけになる」と語る。
- 業務によっても向き不向きがある。例えば書類作成業務などはテレワークに向いている。「会議や打ち合わせに忙殺されがちなマネジャー職は、週1日だけでもテレワークにするとデスクワークに集中できて非常にはかどるものだ」(大西氏)。一方で大西氏も、「初めて会う顧客とテレビ会議で打ち合わせをするのは難しいだろう」と話す。
- 家事がはかどる
- 「在宅勤務で周囲の目がないといっても、気分の切り替えは簡単ではなく、テレワーク中はそうそうだらけられないものだ」と大西氏は自身の経験を話す。その点で家事は在宅勤務中の気分転換にちょうどよいという。
- 「印刷、椅子、郵便、印鑑、子供の声」が意外と困る
- 企業向け機材の性能は家庭用よりも優れているものが多く、テレワークの場面で性能差が際立つものがプリンタと椅子だ。オフィスチェアのように長時間のデスクワークに向いたものがあれば理想的だ。
- 郵便や印鑑のように、その場にいないと処理できないことも意外と困るという。ただしこれは、電子印鑑を使ったり、オフィスにいるスタッフに郵便を頼んだり、ワークフローの工夫次第で解決できる。
- 社内のスタッフ同士の打ち合わせなら、子供の声が聞こえても許容してもらえるものの、社外の人とのコミュニケーションは現実的には難しい。大西氏は「将来的には社会全体でテレワークを許容していってほしい」と期待を寄せる。
- 圧倒的な緊急時対応力
- 事故や災害時のような交通網がまひしている状況、またはインフルエンザなど“少々の業務はできるが自宅待機が必要”な状況などにも、テレワークのシステムがあれば業務が止まらない。
課題となるのはセキュリティ面だ。テレワークの際に使用するPCは会社の機材を使うのか、私物を利用するのか。データのやりとりや保存のルール、サイバー攻撃対策、CADソフトのような専門性の高い業務用のアプリケーションを外部から利用する際はどうするべきか、その時の回線はどうするか、など課題はさまざまだ。だが、テレワークだから特別にセキュリティ対策を強化する必要はなく「一般的に企業がやるべきセキュリティ対策をしていれば十分だ」と大西氏は指摘する。機材についても「社員の私物PCをシンクライアント端末として利用するのが現実的なのではないか」と話す。
労働力確保や生産性向上、ワークライフバランス、事業継続対策、コスト削減など、テレワークにさまざまなメリットがあることは論をまたない。中でも大西氏は「テレワーク導入によって『会社行くことが仕事の意義ではない』と自覚するきっかけにしてほしい」と語る。「テレワークを始めることで、自分の仕事の価値とは何か、付加価値を生み出す仕事とは何か、会社でないとできない仕事とは何か、などを見つめ直すことになる。それが社員一人一人の意識改革につながり、生産性の高い働き方に変えていくきっかけになるだろう」と大西氏は経営の観点からテレワークの意義を訴えた。
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