利用シーンでイメージするForce.comとHerokuの連係
100人に100通りのチラシを配る、「Heroku」による全日本食品の会員サイト開発事例(2/2 ページ)
100人いたら100通り、全日本食品の顧客別チラシ
全日本食品は小売業を組織化するボランタリーチェーン(VC)を営む企業だ。地域に根差した小規模食品店の食品スーパーへの転換を支援するために、「全日食チェーン」という加盟店制度を設けている。現在、加盟店は全国に1800店舗存在する。
加盟店は地域のエンドユーザー(スーパーマーケットの買い物客)と密に接する一方、加盟店の本部である全日本食品は情報システムとビッグデータ活用を武器に、加盟店の競争力強化に取り組む方針を掲げている。
全日本食品ではエンドユーザーの個人情報は収集していないものの、エンドユーザーが加盟店のスーパーに登録したIDとPOS(販売時点情報管理)システムの購買履歴を基に、ID付きレシートデータを集積している。このデータを活用することで最適売価を設定したり、商品を自動発注したり、「顧客別チラシ」(ZFSP:Zen-Nisshoku Frequent Shoppers Program)を作ったりする。ZFSPは、エンドユーザーの過去1年間の購買履歴から、購入したことのある商品、購入しそうな商品を整理し、エンドユーザーごとにチラシを作成、レジで自動値引きする仕組みだ。全日本食品の情報システム本部 本部長 恩田 明氏は「会員が150万人いたら150万通りのチラシを配る。一人一人、内容が違う」と述べる。2015年にはこの取り組みが評価され、データサイエンティスト協会主催の「データサイエンスアワード2015」最優秀賞を受賞した。
そんな全日本食品は、店内以外でのエンドユーザーとのタッチポイントを増やし、来店頻度を向上させる「次期POSプロジェクト」においてHerokuを活用している。Herokuではエンドユーザーが見る「会員サイト」を構築し、寺岡精工のPOSシステムとリアルタイムに連係する。このPOSシステムは、ZFSP、会員情報、ポイントプログラムのシステムを備える。「顧客ID(エンドユーザー)が先月いつ来店し、何をいくら購入し、何ポイント使ったのかを基に、Herokuで構築した会員サイトに特売情報を流している」という。会員サイトには、加盟店である店舗の情報として、お店の写真、クレジットカードや電子マネーの利用案内、地図などを掲載している他、「Facebook」や料理レシピサイト「クックパッド」とも連係している。またエンドユーザーがZFSPの特売情報をスマートフォンで確認すると、クーポンの残数がリアルタイムで表示される。買い物履歴やボーナスポイント獲得までの必要購入金額も分かるため、来店への動機付けになる。
恩田氏が自ら「すごい」と述べるのは、エンドユーザー自身が欲しい商品を特売にできる権利だ。「欲しいものが安く買えるので、当然、店舗へ行く気が起こる。POSだけでなく会員サイトも含め、究極のワンツーワンマーケティングを目指している」(同氏)
Herokuを使ったことについてはどう考えているのか。恩田氏は「Herokuは期待通りのPaaSだった」と評価する。クラウドサービスなのでハードウェアに起因する障害やミドルウェアのセキュリティアップデートに対処する必要がなく、AWSのマネージドサービスを専門にするSIerにサポートを依頼する必要もなかったという。クラウドメール配信サービス「SendGrid」、画像管理クラウドサービス「Cloudinary」といったサードパーティー製アドオンの充実度や、これらのサポートをワンストップで提供する体制も評価している。技術に関する問い合わせは日本語で日本人スタッフが対応する点も、安心感につながっているようだ。なお、会員サイトはシステムインテグレーター(SIer)のフューチャーアーキテクトと共に開発した。
運用性では、Webアプリケーションの複製やアプリケーションのリリースがコマンド1つででき、ロールバックもワンクリックでできた点を評価した。さらにHerokuがAWSの東京リージョンで利用できる点もメリットとして大きい。「当初は米国リージョンを利用し約1.0秒要していた当社サーバとのAPI通信が、東京リージョンに切り替えてから0.2秒に短縮した」(恩田氏)という具体的な効果があったそうだ。
一方でHerokuの課題として恩田氏が挙げるのは、ジョブ制御をするためのアドオンの少なさだ。ジョブ制御アドオンは「企業利用を目指すなら充実させるべきではないか」と同氏は指摘する。
今後は、加盟店をサポートする全国のスーパーバイザーを支援するシステムをForce.comで構築することを検討中だという。「加盟店の利益向上のための仕組みを目指す」と語った。
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