領収書のスマホ撮影ルールの“落とし穴”も解説
領収書のスマホ撮影いよいよ解禁、電子帳簿保存法の「絶対に外せないポイント」は(2/2 ページ)
勘違いしやすいポイントを整理し、会社ごとに続けやすい運用体制を作る
システム選びや運用ルール作りにおいては、どんな点に留意しなければならないのか。JBMIAのドキュメントマネージメントシステム部会の副部会長である宮脇崇裕氏はセミナーで、国税関係書類の電子化に取り組むとき、誤解しやすい“落とし穴”と解決のヒントを紹介した。
1.税務署への申請は、電子化業務の説明が重要
「『電子帳簿保存法対応、申請実績あり』とうたう文書管理システムや会計システムを採用すれば、国税庁への申請も問題なく認可される」と考えがちだが、実はそれだけでは不十分だ。実績があるシステムを導入した場合でも、社内規定や業務フロー、マニュアル、記録方法などを書面で提出し、電子化業務に関するガバナンスを確保していることを第三者に説明できないと許可は下りない。「申請内容の審査においては、運用上のヒューマンエラーを無くす規定を定めているかどうかが問われている」(宮脇氏)
そこで宮脇氏は、運用においては次の4点を考慮し、ITシステムの導入検討と並行して、社内の運用ルールを整備していく必要があると説く。
- 対象業務と保管書類の棚卸し
- 現行業務で書類の保管を義務付けられている法令との関係、対応する部門、業務フロー、発生する書類の枚数、種類などの確認
- 課題の抽出
- 電子化業務に継続的に取り組むための現状の課題抽出、重要度や期限などから解決策を検討
- 対応後の業務設計と概算費用の算出
- 課題を解決する新しいシステムを想定した概略業務フローを作成し、この概略フローに基づいてシステム化の範囲を決定
- 国税関係書類の真実性、可視性を維持する方法の検討
- 業務や監査に関する社内規定やマニュアル、記録の中身を決定
2.スキャナーを使った電子化に携わった人の情報保持について
スキャナーによる電子化に利用したPCのログには、データ保存した作業者の記録は残るが、それを確認した人が誰なのかは残らない。そのため、スキャナーを操作した人の他に、書類と電子化したスキャンイメージが同一だと確認した人、または作業を直接管理する責任者の情報を保存する必要がある。
そこで、定期的に上書きされるシステムログとともに、業務チェックシート(いつ、誰が、何を何枚保存し、そのデータを誰がチェックしたかの記録)、組織図や業務分掌図など、電子化した人を特定できる情報を書類の保存期間に合わせて保存する運用体制を作ることで、この問題は解決できる。
3.証憑のスキャンイメージの取引検索の仕組みに関する誤解
会計システムと、証憑イメージを保存する文書管理システムの2つを別々に用意して運用するケースは珍しくない。ただし、このケースでは文書管理システム側の検索機能に注意してほしい。スキャナー保存制度では検索機能について、以下のように要件を細かく定めている。会計システムだけではなく、文書管理システム側でも同様の検索機能を搭載する必要がある。
- スキャナー保存制度が定める検索機能の要件の一例
- 「取引年月日」「取引先」「金額」「取引内容」など、国税関係帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索条件として設定できなければならない
- 日付や金額は範囲指定検索ができなければならない
- 記録項目は2種類以上の組み合わせ検索ができなければならない
例えば、次のような運用はスキャナー保存制度の検索機能に関する要件を満たしていない。文書管理システム側の検索機能で検索条件として指定できる項目が、「仕訳レコード(ID)」しかないからだ。
- 会計システム側の検索機能
- 以下の各項目による検索
- 仕訳レコード(ID)
- 取引年月日
- 取引先
- 金額
- 取引内容
- 上記項目の組み合わせ検索や範囲指定検索
- 以下の各項目による検索
- 文書管理システム側の検索機能
- 会計システムの仕訳レコード(ID)による証憑イメージの検索
- 証憑イメージは会計システムの仕訳レコード(ID)とひも付けて管理
- 会計システムの機能で検索して表示した帳票の仕訳レコード(ID)を文書管理システムに手入力して、目的の証憑イメージを検索
- 会計システムの仕訳レコード(ID)による証憑イメージの検索
解決策としては、上流のシステム側で検索情報の“台紙”を作成することだ。例えば経費精算など上流システムで入力した検索情報をQRコード化し、証憑の貼り付け台紙に印刷する。これを証憑とともにスキャナーで読み取り、文書管理システム側でも検索情報として登録する。「同じ情報の二重入力が発生しないよう工夫することが大切だ」と宮脇氏は説明する。
4.保存イメージの訂正削除の記録
文書管理システムに保存した取引書類を訂正(差し替え)する場合、「旧書類を上書きし、削除した担当者のログを保管しておけばいい」という考えは誤りだ。訂正や削除をした場合には、元データをさかのぼって確認できるように記録を残さなければならない。
システム側で記録することが困難ならば、旧書類の削除をしない運用にすればよい。例えば取引書類の訂正(差し替え)が起きた場合には、新取引書類を追加登録し、旧取引書類の区分は「旧データ」扱いに変更し、削除はしない、といった方法だ。「旧書類の扱いは、分類を変えて見えないようにする程度でよい。元のデータは削除しない運用を徹底する必要がある」と宮脇氏は強調する。
5.スキャン後の国税関係書類を廃棄するタイミング
「定期検査」実施までは、電子データと原紙の同一性を確認した後でも保存しておかなければならない。廃棄のタイミングを早めるためには、定期検査サイクルを短くすることだ。ここでの定期検査は自社の経理部門が行う定期検査ではない。スキャナー保存要件で指定している「1年(決算期間)に最低1回以上の定期検査」のことだ。この検査は電子化の事務をしている人以外の人(適正事務処理要件で定める「検査者」。外部の第三者や税務代理人など)が実施する必要がある。紙を廃棄するまでの期間を短くするためには、定期検査の頻度を多くする運用とすればよい。
6.システム説明書の備え付け
電子化業務に使用するスキャナーやスマートフォンなどの説明書は、納税地に備え付けなければならない。そうなると、電子化業務で利用している全ての機器、機種の説明書を本社に置き、機種変更時にもその都度変更する必要がある。特に機種変更の頻度が多いスマートフォンの説明書をどう保管するか、悩むところだ。
この問題は、オンラインマニュアルの利用で解決できる。スキャナー、スマートフォンなどの機器の説明書は、納税地からオンラインマニュアルでいつでも確認できる体制を作ればよい。スキャナー保存制度の初期申請時には申請書に機種を記入する必要があるものの、機種変更をしても税務署へ変更申請をする必要はない。
7.スマートフォンでの電子化によるタイムスタンプ付与期限
領収書をスマートフォン撮影で電子化するケースで、領収書受領者が出張中の場合など、スキャナー保存制度が求める「3日以内」のタイムスタンプ付与が難しいこともあるだろう。このように領収書受領者が3日以内にイメージデータにタイムスタンプを付与できなかった場合は、受領者が撮影したイメージデータを廃棄する。そして帰社後に、社内のスキャナーで電子化するプロセスにのっとって領収書を電子化し、タイムスタンプを付与すればよい。
8.電子化したイメージの長期保存
サーバのHDDに長期保存するとなると、ハードウェアの寿命やOSのサポート期間切れといった問題が起こり得る。国税関係書類の保存年数は7年のため、データを確実に長期保存するためには、サーバの維持管理やデータの入れ替え、外部保存などイメージデータの長期保存対策が必要だ。
例えば宮脇氏は、光学媒体(Blu-ray DiskやDVDなど)にアーカイブデータとして保存する、仮想化環境で文書管理システムをゲストOSごとに2年度単位で大容量磁気テープにイメージバックアップする(リストア稼働テストも済ませる)、といった方法を推奨する。オンラインストレージサービスなどへのデータ保存も1つの手段だが「サービス自体の歴史が短いために、10年後にサービスが存続するか確実とは言えない」と宮脇氏は懸念を示す。
宮脇氏は、これらのポイントとともに、システム設計の際には「経理部門のニーズだけではなく、経営課題解決につながるようなシステム開発をするよう、機能の優先順位付けをすべき」と指摘する。そのためには現場のニーズだけでなく、経営層にもメリットが大きいシステムとは何かを考える必要がある。
「少額領収書を電子化し、全ての証憑を検索情報に登録する作業は意外に手間がかかるものだ。『紙で保存する方が楽だ』と言われないよう、会社全体で業務負担が増えないシステム選びと運用体制を目指してほしい」(宮脇氏)
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