領収書のスマホ撮影ルールの“落とし穴”も解説
領収書のスマホ撮影いよいよ解禁、電子帳簿保存法の「絶対に外せないポイント」は(1/2 ページ)
帳票の電子化に興味はあれど、国税庁への申請や社内の体制作りをどうするか迷っている中堅・中小企業は少なくない。システム選びや社内規定整備で、多くの人が誤解しがちなポイントを整理する。
電子帳簿保存法におけるスキャナー保存の要件が、2015年度、2016年度と続けて規制緩和となった。2016年9月30日以降の申請分からは領収書のスマホ撮影が可能になることから、いよいよ証憑(しょうひょう)類の電子保存を開始する法人数が増加しそうだ。特に中小企業の場合、これを機に初めて証憑類の電子保存に着手する企業は少なくない。国税庁への申請や社内の体制作りに、どのように取り組んだらよいのかと迷っている中堅・中小企業は多いだろう。
本稿では、ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)が2016年7月に開催したセミナー「今こそスタート! 電帳法スキャナ保存制度」の内容を基にポイントを紹介する。スキャナー保存要件に関して、多くの人が誤解しがちな要素を整理することで、制度の理解に役立ててほしい。
併せて読みたいお勧め記事
連載「今度こそ会計業務のペーパーレス化」
- 電子帳簿保存法改正、スキャナー保存できる文書とは?
- ペーパーレス経理業務フローを整備しよう――3カ月の準備期間で用意する4ステップ
- 「電子帳簿保存法Q&A」徹底解説:中小企業のペーパーレス会計、こんな時はどうする?
電子帳簿保存法改正とスキャナー保存制度
インボイス方式導入を見越して、国税関係書類の電子化を前向きに
電子帳簿保存法に基づいて、国税関係書類の電子化を実施することで生まれるメリットは幅広い。主なメリットには、次のようなものがある。
- 業務記録保全性の向上
- 紛失・流出防止
- 処理作業工数の削減
- 廃棄工数削減
- 運搬工数削減
- 保管作業工数削減
- 保管スペース削減
- 検索/閲覧性の向上
さらに、経営層にとっては次のようなメリットが生まれる。単にシステムを導入するだけでなく、経営層の期待まで踏まえた目標を意識して運用することで、この制度を活用する意味が出てくるだろう。
- 監査時の説明の明瞭化
- 間接業務の効率化
- ペーパーレス化によるコスト削減
- 労災リスク低減
- 顧客対応の迅速化
さくら中央税理士法人の代表税理士である安田信彦氏は、「2015年度に続き、2016年度にスキャナー保存要件の大幅な規制緩和を実施したのは、消費税の『適格請求書等保存方式』(インボイス方式)導入を想定したものだったのでは」と指摘する。インボイス方式は、消費税の納税額から製品/サービスの仕入れの際に支払った消費税額(仕入れ税額)を差し引く「仕入税額控除」を受けるための経理方法の一種だ。消費税に複数税率が採用されると、従来の経理方法である「請求書等保存方式」では適正な仕入れ税額の計算が困難になる。請求書等保存方式はインボイス方式とは異なり、請求書や帳簿といった仕入税額控除の証拠書類に、消費税率や税額の記載を義務付けていないからだ。そこで2016年度の税制改正関連法では、事業者の納税額を正確に把握する目的で、軽減税率の適用から4年後にインボイス方式を導入する方針を示している(注)。
※注 安倍晋三首相は2016年6月1日の記者会見で、消費税増税と軽減税率の導入を2019年10月に延期すると発表した。実施時期については最新の情報を確認してほしい。
インボイス方式では税率や税額をそれぞれ記載する必要があるために、事務処理は大幅に増加することが見込まれる。そこでスキャナー保存要件の規制緩和でスキャナーやスマートフォンといった身近な電子機器の活用を認めたことは、企業が国税関係書類を処理する工数を削減することが狙いの1つだったのではないかという見方があるのだ。確かに今国会では消費税増税は見送りとなったものの、「国税関係書類の電子化は、将来のインボイス方式導入を踏まえた効率化の一環として取り組むべき」と安田氏は話す。
法律が求める基本原則を理解することが、運用ルール理解の早道
ただし注意しなければならない点がある。それは「電子帳簿保存法は、通常の文書の電子化とは異なる」ことだ。電子帳簿保存法の対象となるのは、国税関係帳簿書類だ。国税関係書類は、帳簿に記載された取引の存在、取引相手の実在、取引内容の確かさを国が確認するために必要な手掛かりとなる。そのため、通常の文書の電子化にはない要件を法律で指定している。例えば「真実性の確保」という基本原則の意味は、取引書類ごとの改ざんの有無を確認することだ。企業としての利便性以上に、税務調査が行われる際のデータの信頼性確保、正確性、効率性を重視している点を忘れてはいけない。
スキャナー保存要件については、国税庁が同庁WebサイトにリーフレットPDFで公開している。2016年9月30日以降に申請した場合の新たな要件に準じた内容なので、併せて参照してほしい。
参考
- リーフレット「電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の要件が改正されました」(国税庁)
スキャナー保存の対象文書は、大別すると次のように「重要書類」「一般書類」の2つがある。
- 重要書類
- 領収書、契約書
- 賃金やものの流れに直結・連動する書類(請求書、納品書など)
- 一般書類
- 賃金やものの流れに連動しない書類(「重要書類」以外の書類を指す:例えば、見積書、注文書、検収書、入庫報告書、貨物受領書、契約の申込書など)
安田氏は「文書の保管スペースを減らしたいと考えるなら、まずは一般書類から電子化に取り組むとよいのではないか」と指摘する。一般書類は重要書類よりも、入力期間の制限に関するルールが厳しくないからだ。まず一般書類を電子化する準備期間を置き、運用に慣れてきたら重要書類の電子化に着手する、などと段階的に取り組むことも1つの方法だ。
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