「サイバーセキュリティ保険」を正しく理解する【第2回】
「サイバーセキュリティ保険」がなかなか普及しない“本当の原因”とは?(2/2 ページ)
「加入条件」や「情報開示」にも課題が
加入時に課せられる条件とその不明瞭さが、加入の妨げになっている可能性もある。サイバーセキュリティ保険の加入時には、「最新のデータ暗号化を適用する」「セキュリティパッチの更新率を100%とする」など、適切なサイバー攻撃対策や内部不正対策などの条件が付される場合がある。保険会社がヒアリングなどによってセキュリティ強度を評価し、レベルが低ければ保険料が割高になったり、そもそも加入できなかったりすることもある。
セキュリティ対策に日常的に力を入れている企業であれば、サイバーセキュリティ保険契約の時点で保険会社から「十分なセキュリティ強度を備えている」と評価されることもあるだろう。だがそれは一時的なものだ。例えば自社で構築したシステムや使用しているパッケージソフトウェアに、新たな脆弱(ぜいじゃく)性が見つかる可能性は常にある。その場合の責任は誰がどう負うのかについて、業界全体で合意が取れているわけではない。
有事の際の保険金請求(求償)のときに、保険会社が被害に遭った企業に詳細なインシデント情報の提供を要求することも、加入が進まない一因だとの指摘もある。保険会社がどこまでの情報開示を求めるのか、企業がどこまで情報開示に積極的になれるのかも課題だといえるだろう。
企業がサイバーセキュリティ保険を有効利用するために
課題が少なくないサイバーセキュリティ保険だが、加入によって得られるメリットは金銭的な補償だけではない。他のメリットとして考えられるのが、企業のブランドイメージ向上への寄与だ。保険会社が求める厳しい加入条件を満たすことを訴求すれば、サイバー攻撃や内部不正などの予防策を充実させ、さらにインシデント情報の開示にも積極的な企業だというイメージが定着する効果が期待できる。
安心でき、信頼できる企業の商品やサービスを選びたいと考える消費者は多い。サイバーセキュリティ保険に加入したこと、また加入していることを積極的にアピールすることが、セキュリティ対策に適切に投資し、顧客に安心感を与えているというブランドイメージの向上につながる可能性がある。
サイバーセキュリティ保険の妥当性を正しく判断するには、企業が自社のセキュリティリスクを正しく把握することが欠かせない。自社が想定する脅威とその被害に対して、サイバーセキュリティ保険が投資に見合う価値があるのかどうか。その判断は、セキュリティ対策全体の投資戦略の中で下す必要がある。まずは自社にとって重要な「守るべき情報資産」を特定した上で、システムやネットワーク、業務フローのどこにリスクがあるか問題点を明らかにし、セキュリティ対策の目標と計画を策定していくことが不可欠だ。
セキュリティ対策の整備に必死になるあまり、被害が発生した場合に備えた投資をする体力がなくなってしまうと、それもまたリスクを抱えることになる。しかし、サイバーセキュリティ保険の高い保険料のために、十分なセキュリティ対策ができなくなっては本末転倒だ。こうした事態を避けるためには、適切なセキュリティ投資ができているのかどうか、定期的な精査が大事になる。
自社が現時点および将来に、どれだけ情報システムに依存するのかを考慮し、必要なセキュリティ対策に投資をしているか、あるいはサイバーセキュリティ保険の契約内容が適切かどうかを定期的に見直し、新しい製品や保険の十分な検討も重要だ。そのために、信頼できる保険会社や専門の保険プロフェッショナルといった相談できるパートナーを選ぶことも大事なポイントとなるだろう。
執筆者紹介
阿部欽一(あべ・きんいち)
「キットフック」の屋号で活動するフリーランスのライター/ディレクター。社内報編集、編集プロダクション等を経て2008年より現職。「難しいことをカンタンに」伝えることを信条に、「セキュリティ」「マーケティング」など、企業のIT活用をテーマにした解説記事やインタビュー記事の執筆の他、動画やマンガやアニメーションを用いた学習コンテンツなどを多数プロデュースしている。
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「サイバーセキュリティ保険」を正しく理解する
サイバー攻撃などによる被害を補償する「サイバーセキュリティ保険」。その補償内容はどうなっているのか。最新の動向は。徹底解説する。
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