OpenStack for Enterprise座談会【後編】
徹底討論:OpenStack導入を成功に導く、脱リニア思考&コミュニティー活用(2/2 ページ)
ユーザー企業へのメッセージ
――最後にOpenStackの活用を検討しているユーザー企業に向けて、成功へのヒントやアドバイスをお願いします。
鳥居氏 日本のGDP(国内総生産)は約20年間、横ばいか微減で推移しており“失われた20年”ともいわれています。ほとんどの企業がITシステムを導入しているにもかかわらず、ビジネスの生産性は向上しているとはいえないのが実情です。グローバルの視点から、日本企業は生産性が明らかに悪いことを自覚して、既存のシステム運用から脱却し、OpenStackを活用したクラウドネイティブな運用に変革するべきだと考えています。OpenStackは、安定性が疑問視される声がありますが、食わず嫌いではなく、まずは実際に使ってみて、業務改善に役立つことを実感してほしい。その結果、アベイラビリティ(可用性)などの問題が起きたら、運用者コミュニティーの「OpenStack Ops Meetup」(注2)を活用すれば対処法が見つかるはず。ぜひ多くの企業にOpenStack活用の第一歩を踏み出してもらいたいと思います。
注2:OpenStack Ops Meetupは、「OpenStack Summit」や「OpenStack Days Tokyo」などのイベントで開催する。開催情報は日本OpenStackユーザー会のWebサイトに掲載。直近では2016年12月7日に沖縄で開催予定だ。
林氏 これからの時代は、デジタルの力でビジネスを変革するデジタルトランスフォーメーションがビジネス成長のカギになります。従来のクラウド採用はコスト削減が大きな目的で、レガシーシステムをクラウド環境へ移行するだけでした。しかしOpenStackをベースにしたクラウド基盤では、ユーザー企業としてクラウドサービスを使うだけでなく、自らサービス事業者になるなど、攻めの経営の中でビジネスのデジタル化を進めることが可能になります。そのためにはOpenStack活用と合わせて、社内外のアイデアや技術を活用して新たな価値を生み出すオープンイノベーションに着手することも必要ではないかと考えています。
中島氏 日本では伝統を重視するリニア思考が強い傾向があります。例えばこの思考の影響下では、ITシステムをリプレースする際も、5年前に作ったシステムを、5年先も同じもので大丈夫だと考えてしまう。そうではなく、リニアな流れを断ち切って、クラウド時代に求められるシステムは何かをあらためて考え直す時期に来ていると思います。本当に怖いのは、今のシステムとそれを取り巻く環境が当たり前だと思い込んでしまい、「そこに存在する問題に誰も気付かない」という問題が発生してしまうことです。問題に気付くためにも、コミュニティーで情報を発信してフィードバックを得たり、OpenStack Ops Meetupに参加してディスカッションをしたりするなど、積極的にオープンな場に出ていってほしいと思います。自社のシステム環境がガラパゴス化しつつあり、競争力が低下していることが見えてくれば、OpenStackを活用したシステムの重要性に気付くはずです。
水野氏 日本OpenStackユーザー会の立場からユーザーとしての本音を言うと、OpenStackはまだまだ使いこなすのが難しく、エコシステムも選択肢がたくさんありすぎて、導入や運用に手間が掛かるといえます。そのため全面的にOpenStackの活用を推奨しているわけではありません。例えば、VMwareの管理ツール「VMware vCenter Server」を使っていてEOL(End of Life)になったから単純に流行のOpenStackに変えようと考えるのは、よくある失敗事例です。vCenterに比べるとOpenStackの機能は劣りますし、安定度も低いからです。もちろん、オープン化やエコシステム、トータルコストの削減という導入メリットもありますが、これを得るためには、自社で運用ノウハウを積んだり、詳細な設計を行ったりするなど、多大な努力が必要になります。OpenStackが話題になっているから飛びつくのではなく、メリットとデメリットを知った上で、本当にOpenStackが必要なのかどうか、社内の準備ができているのかどうかなどを洗い出して、コミュニティーも活用しながら判断することが重要です。先行してチャレンジできるユーザー企業には、どんどん取り組み、OpenStack活用の成功事例をコミュニティーに公開してほしいですね。成功事例が増えれば増えるほど、後から来る企業がその“獣道”を通って、OpenStackはさらに活用しやすい技術になると思います。
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