OpenStack Days Tokyo 2016 事例レポート
10年先の基盤となるか――JFEスチール、NTTドコモ、富士通がOpenStackに期待すること(1/2 ページ)
日本国内最大規模のオープンクラウドイベント「OpenStack Days Tokyo 2016」から、JFEスチール、NTTドコモ、富士通のOpenStack活用事例を紹介する。各社はOpenStackに何を期待しているのか。
日本国内最大規模のオープンクラウドイベント「OpenStack Days Tokyo 2016」が、2016年7月6日、7日に開催された。4回目となる2016年は「10年先のプラットフォームへ」をテーマに、基調講演や導入事例講演、スポンサー講演など多数のセッションおよびOpenStackの関連各社ソリューションが展示された。
本稿では7月7日の基調講演「エンタープライズに聞くOpenStack活用の心得。なぜOpenStackの導入を決めたか」に登壇したJFEスチール、NTTドコモ、富士通の3社によるOpenStack導入事例を紹介する。
関連記事
OpenStack事例
OpenStack導入のコツ
OpenStackのメリット
OpenStackディストリビューション選定
JFEスチールが目指す「変化に対応できるインフラ」
トップバッターを務めたのは、JFEスチール IT改革推進部の渡邉 健太郎氏だ。「JFEスチールにおけるOpenStack Cloudをはじめとする先進技術を活用した攻めのIT経営の推進」と題し、同社がOpenStackを活用したIT戦略をいかに実践しているのかを説明した。
JFEスチールはITビジョンに「継続的業務改革」と「戦略的IT活用」を掲げ、変化に対して迅速に対応できるグローバルレベルのIT活用を進めている。ここでポイントとなるのが「迅速に変化に対応できる」という点だ。JFEスチールでは、製造拠点を5カ所に分散配置しており、それぞれが個別にITインフラを構築してきた経緯がある。「ITビジョンを実現するためには、これらのITインフラを刷新し、今後のグローバル化に向けて、変化に強い柔軟な先進的ITインフラを構築する必要があった」という。
具体的には、仮想化によってデータセンターを統合し、各製造拠点のITインフラを全て統合システム管理基盤に集約していく。仮想化による統合データセンターでは、グループクラウドを活用し、特定ベンダーに依存しないオープンで標準化された技術を使用する。また、BCPの観点から、東西にデータセンターを分散し、24時間365日止まらない可用性を担保する。さらに、将来的にはビッグデータ解析基盤としての役割も視野に入れる。
このデータセンターを支えるグループクラウドとして、日本IBMと共同で構築したのが「J-OSCloud」だ。ここにOpenStackが使われている。J-OSCloudには、従来通りの高いサービス品質を維持することに加え、資源面と運用面の双方での圧倒的なコストパフォーマンス、運用効率の向上といった要件が求められた。これらを全て解決するのがOpenStackであった。
J-OSCloudでは、使用するOpenStackのキーコンポーネントを「Nova」「Glance」「Cinder」「Keystone」の4つに絞り込んだ。「J-OSCloudを通じてデータセンター内のさまざまなデータやハードウェアを抽象化することで、ユーザーはハードウェアリソースを柔軟に活用できる。また、OpenStackをベースにしたことで、特定のハイパーバイザーに依存しない、完全にベンダーフリーのスピード感あるITインフラを構築することができた」と、OpenStackを採用したポイントについて述べた。
JFEスチールの目指すITビジョンは、OpenStackの導入によって着実に具現化されつつあるようだ。
NTTドコモがOpenStackで実現したモバイルネットワークの仮想化
次に登壇したのは、NTTドコモ ネットワーク開発部 担当部長の深江誠司氏だ。「モバイルネットワークへの仮想化技術適用」と題し、同社の展開するモバイルネットワークに仮想化技術を適用した事例を紹介した。
「スマートフォンの普及によってデータトラフィックが急激に増大しており、その変化の予想が困難になってきた。一方で、社会インフラとしての信頼性や大規模災害への備えとして、いつでもつながる、使える安心感が求められている。しかし、通信事業者の収益は高まっておらず、モバイルネットワークのさらなる効率化やコスト最適化が大きな課題になっている」と、深江氏は、移動体通信事業者を取り巻く現状を語る。
これらの課題を解決し、次世代通信ネットワークの実現に向けてチャレンジするべく、NTTドコモでは、モバイルネットワークへの仮想化技術の適用を決断したという。ネットワークを仮想化することのメリットについて深江氏は、「ネットワーク設備の経済性向上」「通信混雑時のつながりやすさの向上」「通信サービスの信頼性向上」「サービスの早期提供」の4つを挙げている。
また、「ネットワーク仮想化のメリットを最大化するためには、複数のベンダー装置を組み合わせたシステム構成が重要になる」との考えから、NTTドコモでは、2014年4月に6社との複数ベンダー組み合わせ実証実験を実施。併せてオープンプラットフォームへの取り組みとして、2014年9月にはオープンソースプロジェクト「Open Platform for NFV」(OPNFV)の活動に参加している。
その後、さまざまな標準化活動や実証実験を経て、世界初となる複数ベンダーのEPC(Evolved Packet Core)ソフトウェアを動作可能なネットワーク仮想化技術を開発。2016年3月には商用ネットワークでの運用を開始した。「新たに開発したネットワーク仮想化技術は、ETSI NFV ISG(※)のアーキテクチャフレームワークに準拠しており、複数ベンダーのソフトウェアとハードウェアを容易に組み合わせることができるオープンな環境を実現している。この仮想化インフラ管理(VIM)の部分にOpenStackを採用している」という。
※ EPCをはじめとしたネットワーク機能の仮想化を実現するアーキテクチャや要求条件をまとめる通信事業者主導の団体。
今後のOpenStackに期待することでは、OpenStackアップグレードパスの拡大を挙げる。「モバイルネットワークは24時間絶え間なく通信サービスを提供していく必要がある。しかし、仮想ネットワークサービスを継続したまま、OpenStackのアップグレードを実現するためには、連続したバージョンアップが必要となる。つまり、年2回、全てのOpenStackをバージョンアップしなければならない状態になっている」と指摘した。
OPNFVにおけるOpenStackの取り組みとしては、OPNFV Doctorプロジェクトで、ハードウェアなどの故障をリアルタイムに検知して切り替え指示を行う機能を検討中だ。「現在、オペレーターとして必要な機能をOpenStackに導入する取り込みを推進している」とのこと。「また、OPNFV Promiseプロジェクトでは、仮想マシンの割り当てを確実に成功させるリソース予約機能を開発している」と、OpenStackの新機能開発に積極的に参加し、仮想ネットワークサービスのさらなる品質向上を図っていく考えを示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[アトラシアン株式会社] IT運用や従業員サポートは生成AIでどう変わる? 使い方や導入の流れは? -
製品資料
[株式会社みらい翻訳] 音声翻訳活用の課題を解決、“本当に使える”ツールの特徴とは? -
製品レビュー
[Wrike Japan 株式会社] 400店舗を支えるWalmart Canada、散在する情報やアナログな管理をどう変えた? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 年間100件超のDXプロジェクトを統合管理、JERAはどのように実現した? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] グローバルなクリエイティブ業務を合理化、エスティーローダーに学ぶ実践のコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
全社標準Copilotに絶望? MS Copilotで問い合わせ6割減できた企業は何が違った
-
3
「定期診断」発想は要注意? いまセキュリティに求められる持続的な対策とは
-
4
“AIコーディング”でどのツールを選ぶ? 「ChatGPT」「Claude」の真価
-
5
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
-
6
「制御用組み込みPC」に関するアンケート
-
7
「複数AIの野放し」に歯止め Salesforceが6製品統合で挑むAI統制の覇権
-
8
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
「ネットワークインフラの現状と課題」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
2
生成AIで文書活用を進めるには? 効率化と安全性をどう両立する
-
3
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
「スクラム」と「カンバン」の違いとは? アジャイル型開発手法を徹底比較
-
9
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー