マクロで捉える OpenStackソリューション選定【第1回】
“マルバツ表”だけでは分からない、OpenStackディストリビューション選びのコツ(1/2 ページ)
OpenStackディストリビューションを選ぶ際、ベンダーが提示する“マルバツ表”の丸の数だけで評価するのは危険だ。では何で選ぶのか。
オープンソースのクラウド基盤ソフトウェアである「OpenStack」への注目がますます高まっている。2015年10月にはその世界的な開発者会議「OpenStack Summit」が東京で開催され、日本でも盛り上がりに拍車が掛かっている印象だ。
しかし、歴史の浅い市場ということもあり、その実態はいまだよく理解されていない。華々しい先行ユーザー事例の一方で、TechTargetジャパンの主たる読者層であるユーザー企業のIT部門には十分な情報が届いていない。そして残念ながら、誤解も多い。
そこで、当連載はエンタープライズ、中でもベンダーの協力を得てOpenStack環境を構築しようと検討しているユーザー企業を対象に、「どのような観点でベンダーを選定し、協力関係を作り上げ、活用するか」をテーマに、実践的な情報をお伝えしたい。主な対象は、OpenStackそのものを提供するディストリビューションやアプライアンスである。
なお、筆者は4年ほどOpenStackのコミュニティー、ビジネスに携わった後、この秋にOpenStackビジネスの最前線から離れたばかりである。個人としてユーザー、コミュニティーの一員となったわけだが、生きた情報を客観的にお伝えできるタイミング、立場にあると考えている。この記事がユーザーのより深い理解とOpenStackの健全な市場形成につながることを願っている。
関連記事
OpensStackのメリット/デメリット
OpenStackの導入のコツ
OpenStack事例
マルバツ表、という文化の終わり
案件初期のベンダー、製品選定において、クラウドとオープンソースをなりわいとする筆者の周囲でここ数年大きく変わってきたのは“マルバツ表”の位置付けである。そう、機能をはじめとする評価項目と製品名を縦横に並べた、あの表だ。これに価格の観点を加えて比較検討することも多い。
殊にOpenStackディストリビューションにおいては、このマルバツ表の意味がなくなってきている。
マルバツ表は一見、客観的だ。丸の数をカウントすれば定量評価もできる。優先度で重み付け、加点をしてもいいだろう。だがこれを、OpenStackディストリビューションでやるとどうなるか。
機能
実態はさておき、基本的にどのディストリビューションでも機能は同じに見える。なぜなら元は同じOpenStackだから。「Big Tent」にある機能を評価対象にするかどうかで差がつく。
実績
オープンなものを使っているのに特定のベンダーの宣伝をしたくないというユーザーが多く、事例は公開されにくい。主観的な評価になりがち。
価格
価格に関してはベンダーの考え方が多様で、フェアに評価できない。例えば、「データセンター単位で契約」「ハードウェアとセット販売」「要相談」など。
備考
備考――ここにベンダーが差別化要素を盛り込む。ベンダーの思惑がさまざまでフェアに評価できない。
Big Tentについて補足しておこう。2015年半ば、OpenStackコミュニティーは中核機能と付加機能の分離を決めた。それ以降、サーバ、ストレージ、ネットワーク、認証など主要機能を中核機能として“コア”、付加機能をBig Tentと表現している。Big Tentには野心的な、裏を返せば未成熟な機能が多く追加されていく。
これが何を意味するか。Big Tent機能の取り込み方針はベンダーの色が出る。積極的か、保守的か。どのようなテストをしているか。品質基準はあるか。
ということは、単純に丸の数で評価すると、言葉は悪いが「たいしたテストもせず、目をつぶって」Big Tentの機能を多く搭載した製品でも、評価が高くなるということだ。
そして、マルバツ表の最大の問題は、その時点の情報でしかないことだ。OpenStackは半年ごとにメジャーバージョンアップする変化の激しいソフトウェアである。クラウド関連技術や市場環境が変化を続けている以上、そのメリットの負の部分として受け入れざるを得ない。
それ故、半年後にはベンダーの追従能力や方針次第で、マルバツ表の評価は大きく変わり得る。すぐに陳腐化する。
情報収集や検討が進んだ段階で、ユーザーが自らの価値観と優先度を基に作るのであれば、マルバツ表を否定しない。しかし、商談初期にベンダーが持ってくる一般的なマルバツ表は恣意的なものが多く、あまり意味がないと筆者は考えている。
もちろん、ユーザーからそれを求めるのは賢明ではない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
マクロで捉える OpenStackソリューション選定
当連載はエンタープライズ、中でもベンダーの協力を得てOpenStack環境を構築しようと検討しているユーザー企業を対象に、「どのような観点でベンダーを選定し、協力関係を作り上げ、活用するか」をテーマに、実践的な情報をお伝えしたい。主な対象は、OpenStackそのものを提供するディストリビューションやアプライアンスである。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント -
製品資料
揺らぐ境界防御 いま企業が特に警戒すべき「3つのセキュリティ課題」とは?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
2
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
3
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
4
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
5
画面をティッシュで拭くのはNG Dellが推奨するPCの正しいお手入れ方法
-
6
VDI運用の“生きたノウハウ”を共有 歴史あるユーザー会の魅力とは?
-
7
メインフレームは死なず AI活用で20年来の高収益をたたき出す基幹システムの底力
-
8
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
9
「GitHub Copilot」3000人に配布も基本機能しか使われない 保険大手が得た教訓
-
10
GitHub Copilotを使いこなす第一歩 初めてのプロンプト6つのコツ
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー