マクロで捉える OpenStackソリューション選定【第3回】
OpenStack導入を失敗させる、“ダメSIer”を見分ける3つの視点(1/2 ページ)
OpenStackプロジェクトにおいて、SIer選びは非常に重要だ。「非」エキスパートなSIerにつかまらないために、ユーザー企業が気を付けたいポイントを紹介する。
第1、2回ではOpenStack製品、つまりディストリビューション、アプライアンス、バンドル製品を提供するベンダーを選定する際、気を付けたいポイントについて述べた。今回は製品から離れ、その設計や構築、運用を支援するパートナーについて考える。
これまでの連載
連載インデックス:マクロで捉える OpenStackソリューション選定
昨今、システムインテグレーター(SIer)の悪しき慣習を批判する「SIer不要論」がメディアを騒がせている。だがOpenStackに関しては、筆者は「SIer重要論」の立場を取っている。もちろん従来型の、多重下請け構造のSIを指しているのではない。
まずスタンスを明確にしておきたい。筆者はOpenStack構築のイニチアチブは、ユーザー企業が取るべきだと考えている。
OpenStackは持続的改善には向いていない。ある意味破壊的なソリューションだ。ユーザー企業自らが、インフラ担当とアプリケーション担当との間にある壁を壊す必要があるかもしれない。事前にはROI(投資対効果)が明確でないかもしれない。ベンダー丸投げでは立ち行かない。
小売のWalmart、金融機関のWells Fargo、オンライン決済サービスのPayPal Holdings、ケーブルテレビのTime Warner Cable、自動車メーカーのBMWなど、OpenStackの先行ユーザーは、自らが情報発信をしている。例えばカンファレンスで、OpenStackを活用するに当たり、どんなビジネス課題や技術的挑戦があったのか、どうやって解決したのかを胸を張って語る。主体的に技術を理解し、プロジェクトをリードしていなければできないはずだ。
このような話をすると「欧米では内製化が進んでいるし、人材の流動性もある。開発者を集めやすいからでは」という意見がありそうだ。そうかもしれない。だが、ここからがポイントだ。
先行ユーザーだからといって、プロジェクトの全リソースを自社でまかなっているわけではない。その陰には、“エキスパートSIer”が存在する場合が多い。表に出さないだけで、必要に応じてSIerを巻き込んでいるのだ。
ではエキスパートSIerは、何のエキスパートか。もちろんOpenStackのエキスパートである。ユーザー企業のOpenStack設計や構築、運用を支援する。コミュニティーに積極的に関わり、その動向を押さえている。そんな技術者集団である。
先行ユーザーの成功事例を聞くと、ユーザー企業とエキスパートSIerの2階層でプロジェクトを進めている印象がある。他の登場人物は、その横にプロジェクトマネジメントオフィスがあるくらいだ。多重下請け構造による伝言ゲームではなく、1対1のキャッチボールのスピード感でプロジェクトを進める。
先行する欧米のユーザー企業でも、自社で完結しないことが多い。日本ではなおさら、OpenStackプロジェクトのためだけにユーザー企業自らが人材を確保することは難しいはずだ。いかにエキスパートSIerを味方に付けるかが、プロジェクトの成否を左右する。
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「非」エキスパートSIerにつかまらない
ではどのようにエキスパートSIerを見つければいいか。まず振るいにかけよう。「非」エキスパートSIerには特徴がある。
1.リーダーに技術力がない
SIerのリーダーがメッセンジャーであるケース。ユーザー企業の技術的要望や質問にロジカルに、テンポよく回答できない。すなわちエキスパートでない。
OpenStackはインフラの3大ハードウェア要素(サーバ、ストレージ、ネットワーク)とOS、複数のオープンソース基盤ソフトを組み合わせている。構成要素が多岐にわたるので、全体を見渡し、破綻しない設計をする必要がある。
それ故、ユーザー企業との接点である、例えばアーキテクトや技術リーダーには総合力が求められる。ユーザー企業の問いに自分の言葉で明快に回答する、もしくは考えを伝える能力が必要だ。毎度それぞれの担当者に確認するやり方では、そこがボトルネックとなりプロジェクトは遅々として進まない。全体整合性も怪しくなる。
もちろんOpenStackを隅々まで理解しているスーパーマンは多くない。詳細は各担当に任せていてもいいだろう。だが、会話の中でそのテンポや論理性の有無から、全体を見渡せているエキスパートか否かは感じ取ることができるはずだ。もしリーダーに専門性を感じないのであれば、組まない方がいい。
エキスパートのリーダーに期待されているのは、調整能力ではなく、技術力のはずだ。
2.「何でもできる」と言う
従来型SIerにおいて、ユーザー企業からの「難易度が高い」要望を、SIerが製品ベンダーやパートナーへの交渉力で解決することは少なくなかった。プロプライエタリ製品の活用やスクラッチ開発においては、それがSIerの1つの能力でもある。だから「うちに任せてくれれば何でもやります」「RFP(提案依頼書)の要求事項への答えは全てマルです」となりがちである。
OpenStackではそうはいかない。なぜならオープンソースだからである。開発はコミュニティーが民主的に行っている。どこかのベンダーが勝手に実装できないのだ。
「公開の義務がないのなら、独自に追加、変更してしまえばいいのでは」という意見もあるだろう。でも想像していただきたい。数カ月後にその追加/変更がコミュニティーによって違う実装で行われるかもしれないのだ。当然、周辺機能や対応製品はコミュニティー実装に合わせてくる。そうして“ガラパゴスOpenStack”は、独自進化を強いられる。それを作ったSIerに依存し続けることになる。
こうした背景を理解した上で、難しいことは難しいと説明できるSIerを評価すべきだ。
3.ハードウェアを売りたがる
ハードウェアとOpenStackのバンドル提供を否定するわけではない。多様なハードウェアの組み合わせが考えられるOpenStackでは、組み合わせ検証が済んだ製品には価値がある。
しかし、案件全体のバランスから見て、過剰と思えるハードウェアを提案するSIerには注意したい。
パブリッククラウドなどハードウェアを購入せずに済むサービスの選択肢が増えた今、ハードウェアビジネスに注力してきたSIerにとって、OpenStack案件は非常に魅力的だ。
しかし、OpenStackではサーバでストレージ、ネットワーク機能を仮想的に実装するやり方が進んでいる。本当にそのストレージやネットワーク製品は必要だろうか。妥当な根拠や数値なく提案された場合、距離をおいた方がいいだろう。“ハードの切れ目が縁の切れ目”にならないように。
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マクロで捉える OpenStackソリューション選定
当連載はエンタープライズ、中でもベンダーの協力を得てOpenStack環境を構築しようと検討しているユーザー企業を対象に、「どのような観点でベンダーを選定し、協力関係を作り上げ、活用するか」をテーマに、実践的な情報をお伝えしたい。主な対象は、OpenStackそのものを提供するディストリビューションやアプライアンスである。
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