ハイパーコンバージドは「期待先行」
ハイプ・サイクルで予測する注目ストレージ技術、“幻滅期”にあるのは?
ハイプ・サイクルとはGartnerが提唱する「技術のライフサイクル」だ。新技術は周囲の期待を集めて進化して絶頂期を迎え、幻滅とともに姿を消すか、普及によって安定期を迎える。最新のストレージ技術の将来は?
IT関連技術を追いかける関係者にとってGartnerの「ハイプ・サイクル」レポートほど興味深い資料はない。ハイプ・サイクルの曲線グラフは、技術に対する期待度の典型的な推移を示している。ハイプ・サイクルではその推移に沿って技術のライフサイクルを5つのフェーズに分類する。
- 黎明(れいめい)期
- 過度な期待のピーク期
- 幻滅期
- 啓蒙(けいもう)活動期
- 生産性の安定期
市場に新しく登場した技術は、“黎明期”で期待が先行して注目を集めて“過度な期待のピーク期”を迎える。だが、熱狂は急速に冷めて“幻滅期”に陥り、そのまま衰退するか、あるいは導入実績を積み重ねて“啓蒙活動期”に移行し、順調にいけば、市場が確立して“生産性の安定期”に入る。
Gartnerはさまざまな技術について、この5つのフェーズのどの段階にあるか、成熟度と採用状況、ビジネス課題を解消する潜在的な能力、技術が生み出す新たな機会などを分析している。多くのIT関係者はデータストレージ技術を退屈だと思っているだろう。しかし、そんなことは決してない。
併せて読みたいお薦め記事
期待先行というハイパーコンバージド
- 「ハイパーコンバージド」を選ぶ際に確認したい“8つの質問”
- VDIに最適なのは? 実は違う「ハイパーコンバージド」と「コンバージド」を比較
- フラッシュストレージが期待を裏切るとき、ハイパーコンバージドへの実装を見る
幻滅との分かれ目にあるオブジェクトストレージ
クラウドデータバックアップはまだ“黎明期”
Gartnerのレポートで興味深いのはGartnerのアナリストが特定のデータストレージ技術を、ハイプ・サイクルの山と谷のグラフのどこに位置付けるかだ。例えば、クラウドデータバックアップは、黎明期の上昇曲線上にあると評価している。ますます多くの企業がSaaS(Software-as-a-Service)サービス(Google Docs、Microsoft Office 365、Salesforceなど)を利用し始めたり、これらの利用を拡大したりしている。
これらのサービスにおいてデータを喪失する心配はない。だが、これらのサービスが一定時間オフラインになると、データにアクセスできなくなってしまう。また、ユーザーの誰かが誤って1~2件のレコードを削除したら、復元する必要があるが、それにはコストが掛かる。例えば、Salesforceで失ったデータを回復してもらうには、1万ドルを支払わなければならない。サービスとしての成熟度やコスト負担の大きさからみて、クラウドデータバックアップが黎明期という評価になるのは当然だ。
期待先行のコピーデータ管理、ソリッドステートDIMM、ハイパーコンバージド
Gartnerは、一連の興味深い技術を過度な期待のピーク期と位置付けている。これは誇大なマーケティングと関係があると考えていいだろう。このフェーズにある技術で注目したいのが、コピーデータ管理とソリッドステートDIMMだ。コピーデータ管理はここ数年話題になっている。ソリッドステートDIMMは、純粋なメモリでも純粋なストレージでもない新タイプのフラッシュメモリだ。こうした技術への期待がピークに達しているのは、ストレージ専門家のほとんどがその潜在的なメリットを理解しているからだ。だが問題は、ほとんどのストレージ担当者にとってこれらの技術は、どこでどのように使うのか分かりにくいことだ。
Gartnerは、ハイパーコンバージェンスも過度な期待のピーク期に位置付けている。これは、この技術もやがて幻滅期に陥ることを示唆しているのだろう。興味深い予測だ。多くのIT専門家は、ハイパーコンバージド技術が新しいデータセンターの基盤をなすと予想しているからだ。
幻滅期の谷に向かうDRaaSとオブジェクトストレージ
ハイプ・サイクルの中でも技術にとって試練となるフェーズが、技術の検証が進み、ベンダーの淘汰(とうた)や消滅が進む“幻滅期”だ。Gartnerはこのフェーズに関する分析で、意外な見解を幾つか示している。それは、DRaaS(Disaster Recovery as a Service)やオブジェクトストレージといった関心を寄せる関係者が増えている技術を、“幻滅期”の谷に向かう下降曲線上に位置付けていることだ。
Gartnerは、これらの技術に問題があると指摘しているのではない。ただ、これらの技術に対する期待が膨らみ過ぎた時期は終わり、適正に実証したデータストレージ技術の選択肢として、市場に定着していく途上にあることを指摘していると考えるべきだ。DRaaSとオブジェクトストレージは、“幻滅期”の谷底をスキップして上昇曲線に乗り、短期間のうちにスムーズに“生産性の安定期”に移行するだろう。
DRaaSは、DR分野で起こったレプリケーション以来最高の技術革新といえる。DRaaSはDRを大幅に簡単に、安く、高速にしてくれる。一方で、オブジェクトストレージは、理解してもらう努力が必要だ。ストレージ担当者がその価値を把握するには少し時間がかかるだろう。しかし、オブジェクトストレージを現行の環境に統合しやすくする進化が急速に進んでいる。近い将来、オブジェクトストレージは多くのデータセンターに導入されていくだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
BMWも導入 78兆円市場に化ける「フィジカルAI」の衝撃
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー