平らな電子部品から解放
技術の2大トレンド、「IoT」と「3Dプリント」の連携が生み出す破壊的ビジネスとは(2/3 ページ)
IoTと3Dプリント:全ては速さとデータの価値次第
バイダ氏がネズミ捕りで注目しているのはワナの部分ではなく、ネズミの死骸が見つかったときに警告するセンサーと報告機器だ。「もしネズミ捕りを120個製作して、それを顧客に提供してフィードバックを得たい場合、最終的な製品に近いモノを迅速に製作する方法が必要になる。現在、それらを実現できる設計は、小規模でなるべく複雑ではないものだ」とバイダ氏は説明する。
バイダ氏は、BotFactoryで営業部門とマーケティング部門の責任者を務めるJF・ブランドン氏と同社の最高技術責任者(CTO)であるカルロス・タラゾナ氏に対して、Squinkの速度と解像度を向上させ、よりハイエンドな企業プロジェクトの試作品を、高速かつ低コストで少量の試作品を作成できるように促した。
現状は、設計者が規模の経済を達成するには、何千もの基板に取り組むしかない。投資家は設計と試作に掛かるコストの高さに恐れおののいて離れてしまう。さらに市場競争は流れが早く、「IoTは迅速な試作作成と開発が必要になる」とバイダ氏は指摘する。
Squinkは卓上サイズで、2層基板をプリントできるモデルは3999ドル、1層基板のプリントに対応したモデルは3199ドルで販売している。Squinkは回路をプリントできるだけでなく、別のプリンタヘッドを使用して、PCBの構築における「ピック&プレース」の部分も自動化できる。またチップなど基板の表面に取り付けるデバイスを乗せてはんだ付けもできる。こうしてSquinkは、従来のPCB設計ファイルを読み取るCAD設計から基板の完成までの全工程を独自の方法で自動化している。
BotFactoryは硬質な基板やフレキシブル基板へのプリントについても卓越している。例えば、Zebra TechnologiesはRFIDタグの試作にSquinkを使用している。
フリーマン氏は次のように主張している。「イスラエル企業のNano Dimensionが開発した『DragonFly 2020』が、現在、真の意味で3Dとして機能している唯一のPCBプリンタだ」。DragonFlyも卓上サイズだ。ただし、プリンタとプリンタの設置、インクをまとめたスターターパッケージを20万ドルで販売している。
Nano Dimensionは、このDragonFlyをイスラエルの防衛企業に初納品したばかりだ。設立4年目を迎えたNano Dimensionは、フォーチュン100の消費財会社、電気通信会社、医療デバイス企業、米国の国防総省とも協議や共同開発を進めている。
Nano DimensionのPCBプリンタの解像度は150ミクロンと高い部類に入る。同社はこれを90ミクロンにまで下げることを目標にしている。また長期的には、試作製作から生産に移行することも考えている。
平らな電子部品から解放するIoTと3Dプリント
Nano DimensionのCEOを務めるアミット・ドロール氏は、多層3次元が可能にする設計の自由について壮大な夢を描いている。「ノートPCやスマートフォンなどのデバイスが平たいのは、PCBが平面でなければならないからだ」と同氏は指摘する。現在、多層を作る唯一の方法は、各層を精密に製作し、それらに穴を開けてバイアス(多層PCBの垂直電線管)でつなげることだ。「曲線の多いロボットの内部を見てもらえば分かるが、内部空間は平面だ。強度と領域という点では、平面は最も効率が悪い」とドロール氏は話す。また医療デバイスや軍事デバイスでは、重さも鍵となる要因の1つだ。
ここまでに紹介した全てのプリンタは、特許を取得したインクを使用しなければならない。各社は、このインクによって大きな利ざやを得ている。Nano Dimensionの「銀ナノ微粒子インク」は、イスラエルのエルサレム・ヘブライ大学から特別にライセンスが供与された湿式化学処理の発明をベースにしている。PCBプリンタメーカーのVoxel8は、ハーバード大学教授のジェニファー・ルイス氏の材質科学研究所から生まれたものだ。3DのPCBプリントの進歩は、比較的低温で焼結したり、溶かしたりして適切な伝導率や粘着性、柔軟性を持つ回路に仕上げられる銀微粒子の電導性インクの発展に依存している。
50万ドル前後の3Dプリンタを利用するOptomecは、年中無休で生産をしたり、電気回路以外にも多くの材質による試作を進めたりしている。同社は、センサーやアンテナを曲面に直接プリントしており、その一部はIoT製品のパーツだ。発電システムに用いられるタービンのブレードなどにもセンサーをプリントしている。このセンサーは、予防整備を実施するのに間に合うタイミングで、中央の監視施設に金属疲労を報告する。Optomecの噴霧技術は、回路のプリントの精度も非常に優秀で、10ミクロンから3ミリの間で、抵抗器やコンデンサーのような受動素子や電気回路を作成できる。Optomecで噴霧生産管理部門のディレクターを務めるミカエル・オライリー氏は「現在、当社はスマート医療デバイスメーカーと秘密保持契約(NDA)を締結して取り組んでいることがある」と語る。
Xeroxのパロアルト研究所は、材質に加えてインクジェットや噴霧、成形用の多彩な機能を持つディスペンサーヘッドを搭載した3Dプリントシステムを開発している。2016年7月にカリフォルニアで開催された「SEMICON West」で、パロアルト研究所の上級研究者であるボブ・ストリート氏が、「健康追跡のためのプリント済みハイブリッド配列」と題した講演をしている。この講演で、血中酸素といった体からの信号を監視する光検出や、特定の酵素を検出する電気化学センシング、激しい振動といった、極端な物理条件のポリフッ化ビニリデン(PVDF)をプリントした地盤の指標値を求める「プレッシャーメーター」と加速度計が取り上げられた。
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