クラウドやコラボレーションの役割に変化か
ユーザーが注目、Microsoftに買収されたLinkedInの次のアクションは?
MicrosoftのLinkedIn買収で、どのようなクラウドアプローチが登場することになるのか。それはマイクロサービスに近いモデルで、従業員のニーズに合わせてもっとパーソナライズしたものになるだろう。
従来のITアプリケーションは、特定の作業を目的とするか、個々の従業員を対象とするものだった。「LinkedIn」がサポートするようなソーシャルメディアコラボレーションは違う。このモデルでは、従業員が1つの共通フレームワークの中でアプリケーションや他の従業員と共同作業を行う。では、こうしたモデルにおいてクラウドはどのような役割を果たすことになるのか。
その答えは、2016年中に完了する見通しのMicrosoftのLinkedIn買収でより明確になるだろう。
新しいITアプリケーション観
特定の作業を目的とするアプリケーションの場合、モバイル性による生産性向上には限度がある。確かにスマートフォンでどこからでも利用することはできる。しかし、当人がどこにいて何をしたいのかに関係なく、同じ使い方しかできない。ソーシャルメディアの場合、どこにいて何をしたいのか、という次元をアプリケーションに加えることができ、ITにおけるプレゼンスの概念を拡大できる。
「Skype」や従来の「Microsoft SharePoint」ツールでは、プレゼンスといえばアプリ内でオンラインになっていることを指す。LinkedInのフレームワークを使ってコラボレーションをサポートすることになれば、Microsoftはプレゼンスに新しい次元を加えてくるだろう。例えば、従業員の現在の人間関係、関心事、居場所などだ。そうすれば、LinkedInグループを発展させたLinkedInプロジェクトと呼べるようなものになり、LinkedInグループよりチームコラボレーションに一層特化した機能を提供できる。
そうした変革なしに、LinkedInをMicrosoftのコラボレーション機能の新しい戦力に加えることは考えにくい。そのようなLinkedInプロジェクトにメンバーとして人間を登録できるのなら、アプリケーションやサービスもメンバーとして登録できるだろう。プロジェクトにツールをつなげることができれば、そのメンバーである従業員とつなげることで、アクセス制御や監査の情報交換が可能になる。企業がプロジェクトを作成するとき、その業務に必要なサービス一式をつなげることもできる。プロジェクトの規模として大企業から1人の従業員まで幅広い範囲に対応すれば、それぞれの目的に特化した全てのアプリケーションをプロジェクトツールとして実行できるようになる。
例えば、ある従業員がサービス呼び出しを実行したい場合、「サービス呼び出し」プロジェクトにつながることでそのプロセスを開始できる。そのプロジェクトでは、作業に必要なツールを見つけたり、チームメンバーをプロジェクトにつなげたりする。プロジェクトのメンバーはポリシーに基づいて、共通の情報を参照したり、共通のサービスを利用したりできる。
ヒューマンドリブンではなくイベントドリブンのプロジェクトにすることも可能だろう。特定のイベントが発生したらプロジェクトを開始し、プロジェクトポリシーの条件に従って、ツールを実行したり、メンバーに通知を送ったり、別のヒューマンドリブンプロジェクトを開始させたりする。例えば、「フォールトエスカレーション」というイベントドリブンプロジェクトから、前の例の「サービス呼び出し」というヒューマンドリブンプロジェクトを開始させるなどだ。
MicrosoftのLinkedIn買収で変わるクラウドの役割
MicrosoftのLinkedIn買収でこうした新しいアプローチを採用することになれば、クラウドにも変革をもたらす可能性がある。プロジェクトにつなげる各ツールは、1つの作業全体ではなくもっと細分化したタスクを実行するマイクロサービスのようなものになるだろう。プロジェクトで情報を伝達したり人々をつなげたりするときには、スマートエージェント機能や人工知能も活用できる。クラウド用にアプリケーションを作成する代わりに、プロジェクト記述を書くようになるだろう。
この転換がクラウドに変革をもたらす理由の1つは、マイクロサービスとの関連にある。モノリシック(一枚岩)なアプリケーションでもなければ、数個のコンポーネントに分かれたアプリケーションでもなく、もっと小さなタスクに細分化したサービスを使うようになるだろう。そうしたサービスを従業員が共有できるようにし、その多くは必要に応じてインスタンス化させ、常に従業員と密接なものにして使いやすさを改善していく。
アプリケーションをプロジェクトにつなげれば組織管理や数々のビジネスツールの展開にも役立つから、その点でもクラウドは進化するだろう。ツールやサービスをプロジェクトにつなげる方法を標準化して管理できるようにし、プロジェクトのフレームワークでワークフローも管理すれば、それぞれの部門に合わせたやり方で従業員をサポートできる。同時に統合とコンプライアンスの確保も維持できる。
最大限に効果を上げるには、従来のアプリケーションモデルに代わってクラウドモデルで生産性を高めるべきだ。モバイルワーカーに対応するためのコンテキストモデルでもそれは可能だが、浸透していない新しいアーキテクチャが必要になる。その点、ソーシャルメディアなら、モバイルにもオンライン作業にも対応した新しいコラボレーションモデルが既に広く浸透している。このモデルなら、従業員のニーズに合わせてパーソナライズした新しい方法でアプリケーションを構築でき、その結果、生産性も高められる。
MicrosoftのLinkedIn買収でクラウドがこのように大きく変わるということは予想できるが、両社から正式な発表があったわけではない。とはいえ、合併や買収だけでなくモビリティもそうした変革の原動力になるはずだ。また、Amazon Web ServicesやGoogleなど他の大手クラウド各社も、プロジェクトコラボレーションモデルによるアプリケーション統合の方向に進む可能性がある。Googleの「Google Wave」は失敗に終わったが、このモデルと共通する要素が多々あった。Google Waveがフレームワークとして失敗した主な原因は、Googleが自社ではなくパートナーの機能を利用しようとしたことにある。Microsoftはそこから教訓を得たのかもしれない。
Microsoftは今、パブリッククラウドサービス、パブリックコラボレーションフレームワーク、データセンターアプリケーション、コラボレーションプラットフォームを提供するという特異な立ち位置にある。その優位性をすぐにでも生かすことができれば、今後のクラウドアプリケーションアーキテクチャを決定する主導権を握ることができるだろう。
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