流出情報に各国政府“暗躍”の痕跡も
Androidアップデートを装い感染、新種マルウェアの大いなる謎
イタリアを発信源とするマルウェアは、当初“悪名高き”Hacking Teamとの関連が指摘されたが、別の監視ソフトウェアメーカーが関与していた可能性もでてきている。
被害者が提供したマルウェアを調べていた研究チームが、新種のAndroidスパイウェアを発見した。このスパイウェアは音声と映像の記録、GPSの有効と無効の切り替え、端末上のデータの窃盗と改ざんができる機能を備えていた。
このマルウェアについて研究チームは当初、悪名高いイタリアの監視ソフトウェアメーカーHacking Teamのものと考えていたが、調査を重ねたところ政府機関にスパイウェアを提供している別のイタリア企業だった可能性もあることが分かった。
「平凡で退屈な商用の迷惑スパイウェアを除けば、実際のところ大した展開はない」と解説するのはRedNagaの研究チームだ。同社によると、この不審なソフトウェアはAndroidのアップデートを装ってVodafone APN(Access Point Name)と関係があるように見せかけて、可能な限りのあらゆるパーミッションを要求するアプリのようだった。
RedNagaのティム・ストラツェレ氏はこのスパイウェアについて、かつてHacking Teamにつながっていた2つのIPアドレスや、マルウェアのコードに使っているイタリア語から、当初はHacking Teamが生み出したものと推理していた。一方、別なセキュリティ調査企業Motherboardでは、イタリアのナポリにある監視ソフトウェアを開発する新興企業Raxir SRLが開発した可能性が大きいと指摘している。その根拠は問題のマルウェアで制御サーバに使われているデジタル証明書に関連組織としてRaxirの記載があることを挙げている。
RedNagaによると、問題のマルウェアには、1度実行すると自らをランチャーから自動的に消去するコードが存在する他、被害者の端末に常駐する機能、被害者が端末を使っている間は潜伏できる能力、音声と映像を密かに記録する能力、制御ネットワーク経由でダウンロードした別のマルウェアを実行する能力など、ほとんどのスパイウェアに一般的な機能を備えている。加えて、実質的に全てのパーミッションを有効にして、攻撃者が通話履歴や連絡先、ネットワーク接続、メッセージなどにアクセスできる状態にすることも可能だった。
問題のマルウェアは、攻撃を受けた某政府機関(その政府機関からは名前は伏せるよう要望があった)の職員からRedNagaの研究チームが入手したものだったが、調べたところこのマルウェアが別の場所でも既に動作していた形跡があった。
ストラツェレ氏は、「契約で定められていることや犯罪捜査が続いていることからファイルを公開できないが、一般からの情報提供を通じて同様のファイルが複数出回っていることを確認できた。このファイルは提供を受けたサンプルと酷似している。各バージョン間の機能にほとんど違いはなく、難読化の機能も同じだ。そうした他のサンプルは既に一般に出回っていることから、この脅威については関係者に説明しやすい」と述べている。
Hacking Teamは2015年に大規模な攻撃によって大量の情報が流出した。その攻撃者が収集した400GBものデータを公開している。この中には内部文書やソースコード、同社が監視ソフトウェアを拡散させるために使っていたゼロデイの脆弱(ぜいじゃく)性に関する考察などがある。この情報漏えいによって、米国を含む多数の国の政府機関がHacking Teamからスパイウェアやデジタル監視ツールを調達している実態が浮き彫りになっている。
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