懸念される重要インフラへの影響
「ランサムウェア」感染で運賃が無料に? 米市営交通局で何が起きたのか(2/2 ページ)
攻撃者のメールに書かれていたこと
今回の攻撃者のメールを入手して、過去にランサムウェア攻撃を成功させていた痕跡を見つけたと主張するセキュリティ研究者もいる。セキュリティ専門記者のブライアン・クレブス氏にもたらされた情報によると、「米国を拠点とする製造業者」が63ビットコイン(約4万5000ドル)の身代金をSaolisに支払っていたこと、また2016年8月以来、「被害に遭った複数の組織からビットコインで少なくとも14万ドル」がゆすり取られていたことが、攻撃者のメールから分かったという。
ホランド氏によれば、SFMTAはランサムウェアへの対処に関して米国土安全保障省(DHS)に支援を求め、DHSと米連邦捜査局(FBI)による捜査に協力している。「SFMTAが身代金の支払いを検討したことはない。われわれにはシステムを復旧できる情報技術チームがあり、同チームが実際にそれを行っている」と同氏は説明する。「バックアップシステムがあったおかげで、障害が出たコンピュータのほとんどを稼働させることができた」(同)
専門家は、SFMTAがランサムウェア攻撃からの復旧に必要なシステムのバックアップを取っていたことを一律に評価している。米国のインシデントレスポンスシステムベンダーPlixer InternationalのIT・サービス担当ディレクター、トーマス・ポア氏は「SFMTAがシステムを復旧させるためのバックアップを取っていないという心配はしていなかったが、評判に与える影響が心配だ」と話した。
ポア氏は、公共交通網の質を低下させることがいかに簡単かが、一般の人々に伝わってしまった点に危険があると指摘。この状況は多くの人に不安を感じさせ、「サンフランシスコ市は本当に交通網を管理できているのか、それとも誰か別の者が制御しているのかと疑問に思うだろう」と語る。「不正侵入されたいきさつを市が容易に突き止め、システムを修正できることを願う」(同氏)
カナダのセキュリティベンダーNuData Securityのビジネス開発担当副社長、ロバート・キャップス氏は、サンフランシスコ市のMuniに対するランサムウェア攻撃を「警鐘と受け止めるべきだ」と話す。「サイバーリスクと無縁な組織は存在しない。あらゆる分野の全組織が同様の攻撃の被害に遭う前に、セキュリティ強化の手段を探る喫緊の必要性に迫られている」(キャップス氏)
準備を怠った場合の代償は極めて大きく、経営破綻に追い込まれることさえある。コストには、暗号化されたデータを取り戻すために要求される現金や、ダウンタイムのコスト、インシデント対応にかかわる直接的なコスト、データの損失が含まれる。さらに極端なケースでは「病院や医療機関で生命が失われる可能性もある」とキャップス氏は言う。
「重要インフラはサイバーセキュリティを念頭に置いた設計にはなっていない」と、重要インフラのセキュリティ対策を手掛けるNation-Eのアイダン・ユーディ・イドリー最高経営責任者(CEO)は述べる。そのことがデジタル攻撃における「現実世界の結果」を招いているという。「サイバーセキュリティを念頭に置かずに構築されたレガシーシステムには脆弱(ぜいじゃく)性がある。それがサイバー攻撃に対する重大な弱点を作り出している」(イドリー氏)
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