懸念される重要インフラへの影響
「ランサムウェア」感染で運賃が無料に? 米市営交通局で何が起きたのか(1/2 ページ)
米サンフランシスコ市交通局がランサムウェア攻撃を受け、運賃を一時無料化する事態に追い込まれた。身代金を払うことなくシステムを復旧させたものの、課題は残る。
米国のサンフランシスコ市交通局(SFMTA)は、身代金要求型マルウェア「ランサムウェア」に攻撃されたシステムを復旧し、データの流出は一切なかったと説明した。一方で攻撃側の主張は、交通局の説明とは食い違っている。
SFMTAは2016年11月25日(金曜日)の午前、ランサムウェア攻撃に見舞われた。広報担当のクリステン・ホランド氏がブログに記載した説明によると、地下鉄区間のある路面電車「Muni Metro」について、「潜在的リスクあるいは乗客に迷惑を掛ける可能性を最低限に抑える」目的で、万全を期すため駅の券売機と改札機を停止した。その結果、乗客が無料で乗車できる状態になった。電車の運行に支障は出なかったという、
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ランサムウェアについてもっと詳しく
攻撃の実態は
一部のシステムの暗号化に使われたマルウェアは主に、オフィスコンピュータやさまざまなシステムへの接続に影響を与えた。だがSFMTAのネットワークが外部から不正侵入されることも、攻撃者がわれわれのファイアウォールを突破して侵入することもなかったという。
ホランド氏はブログの中で次のように述べている。「この攻撃で主にオフィスコンピュータ900台に影響が出たが、Muniの運行や安全性に影響は出なかった。乗客の料金システムがハッキングされたわけでもない。報道されているような、われわれのサーバのデータへの不正アクセスもなかった」
そうした説明は多くの点で、このランサムウェア攻撃を仕掛けた側の主張とは食い違う。「Andy Saolis」のハンドル名を名乗るこの人物は、100ビットコイン(約7万3000ドル)を要求し、自分の管理下に置いたと主張するSFMTAマシン2112台の一覧を公開した。この台数は、SFMTAが説明している台数よりもはるかに多い。
セキュリティ企業Mimecastのサイバーセキュリティストラテジストであるマシュー・ガーディナー氏は、攻撃者はSFMTAがどの程度の額まで損失を出せるかを知った上で身代金を設定した公算が大きいと指摘した。
「ほとんどのサイバー犯罪集団は、自分たちが人質に取ったシステムの価値と、身代金をどれだけ簡単に払わせることができるかを、てんびんに掛けている」とガーディナー氏は説明する。「7万3000ドルという額は恐らく、(1日当たり)50万ドルにも上るMuniの運賃徴収能力を自分たちが封じたと知った上で設定した。その額と比べれば7万3000ドルは比較的少額だが、サイバー犯罪集団から見ればかなりの額になる」(同氏)
このランサムウェア攻撃に関連したメールアドレスの持ち主は、セキュリティ情報サイト「CSO」へのメールの中で、攻撃に使われた脆弱性をどうすれば修正できるかをアドバイスした。またSFMTAが身代金を払わなければ、連絡先や従業員の情報、顧客の情報など30GB分のデータを暴露すると脅迫した。
攻撃側が示した情報が正確なのか、単なる脅しなのかは不明だ。だがSFMTAは「できる限り透明性を高める必要がある」と、改ざん検知ソフトウェアベンダーTripwireのITセキュリティ・リスク戦略担当上級ディレクター、ティム・アーリン氏は言う。
アーリン氏は、SFMTAが今回の事件に関する自らの見解を公表する必要があるのは当然のことだと指摘しながらも「捜査が進んでいる最中に不完全な情報を公開しても、ほとんど助けにはならない」と説明する。被害の程度や根本原因を完全に把握できるまでには相当の時間がかかるからだ。
「攻撃者の言葉を額面通り受け取るのは危険だ」とガードナー氏は注意を促す。「彼らには事実を誇張する金銭的な動機がある」(同氏)からだ。それでも、まだ捜査が始まったばかりの現時点では、攻撃者の方が被害者よりも多くのことを知っているかもしれない。SFMTAは事件について発表した時点で、まだ被害に遭ったシステムを全て発見していなかった可能性もある。
「抜き取られたデータの全容を把握することは難しい」とガーディナー氏は説明する。SFMTAはファイアウォールやルーター、システムのログファイルといったデータをつなぎ合わせ、データは一切盗まれなかったという結論に達した可能性がある。だが「この種の分析のためには深いフォレンジック(デジタル鑑識)の専門知識やデータへのタイムリーなアクセスを必要とし、解釈にも時間がかかる」と同氏は語る。
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