変化に強いアプリケーション開発の実現方法
API公開したけど収益化はどうする?――アプリ開発で気になる3つの最新トレンド
アプリケーション開発において、APIやマイクロサービス、ハイブリッドクラウドなど多くの新しいトレンドが生まれている。企業が新しいビジネスを創出するために、それらの技術をどのように活用すればいいのだろうか。
新しいビジネスを創出するために、アプリケーション間連係の仕組みであるAPIの公開や活用に取り組む動きが広がってきた。だがAPIをどのような戦略で、どのように活用すればよいのか悩んでいる企業は少なくない。アプリケーションを取り巻く状況が変化すれば、アプリケーションの開発方法や運用基盤の再考も不可欠になる。
アプリケーション開発の技術動向に詳しいIBMのイアン・ロビンソン氏に、API活用やアプリケーション開発における最新トレンドについて聞いた。ロビンソン氏は、IBMでWebアプリケーションサーバをはじめとするミドルウェア製品群「WebSphere」のチーフアーキテクトを務める。
――現在多くの企業が、アプリケーションの機能や蓄積されるデータをAPIで開放し、ビジネスの創出に生かそうとしています。
ロビンソン氏 APIを公開することは、他のアプリケーションとの連係やアプリケーション活用幅の拡大、収益性の向上など企業にとって良い効果をもたらします。われわれもWebSphereの開発において、APIを容易に公開できるように取り組んできました。
しかしAPIを公開しても、必ず収益に結び付くとは限りません。そこでAPIを使う上で社外からのアクセスを可視化するセキュリティや、扱うデータのプライバシー保護などを規定する「APIポリシー」の設定を検討してみてはいかがでしょうか。APIポリシーを設定することで、公開するAPIの品質を担保することができます。また定めたAPIポリシーに沿ってAPIをマネジメントすることで、アプリケーションや蓄積されるデータがどのようにビジネスで使われるのかを可視化できます。その可視化したデータを分析することで、どのようなAPIが収益につながっているか分かり、今後公開するAPIに生かせるようになります。
――アプリケーション開発を取り巻くトレンドについてはどう見ていますか。
ロビンソン氏 企業は最近、ビジネスの急速な変化に合わせて新しいアプリケーションを積極的に開発して、破壊的な変化を自ら起こし、それを最低限のコストで実現しようとしています。そのために必要になるのが、変化に強いアプリケーション開発の仕組みと、インフラです。
前者の代表例が、独立性の高い小規模なサービス(マイクロサービス)を組み合わせてアプリケーションを開発する「マイクロサービスアーキテクチャ」です。アプリケーション基盤の中心的要素であるアプリケーションサーバも、マイクロサービスアーキテクチャに必要な要素を持つアプリケーションプラットフォームとなることが求められるといえるでしょう。
マイクロサービスアーキテクチャと関連してよく話題に上がるのが、「Docker」の登場で注目度が高まったコンテナです。コンテナは、マイクロサービスアーキテクチャの実現に必須な要素ではありませんが、アプリケーションの起動を早くできたり、任意のクラウドやサーバなどの同じ環境で使えたりできるので便利です。
当社もこうした動きを踏まえ、PaaS(Platform as a Service)の「IBM Bluemix」で稼働するDockerコンテナの中で、アプリケーションサーバ「IBM WebSphere Application Server」(WAS)のランタイム(実行環境)である「IBM WebSphere Application Server Libertyプロファイル」(WAS Liberty)を稼働できるようにしています。
マイクロサービスアーキテクチャは、特定のプログラミング言語に結び付いているわけではありません。ただしJavaの企業用機能セットである「Java EE」(Java Platform, Enterprise Edition)は、さまざまなランタイムライブラリがあり、モジュール型のアーキテクチャを取ります。そのためマイクロサービスアーキテクチャとの親和性は高いと考えられます。
ハイブリッドクラウドの戦略
――変化に強いアプリケーションのインフラとは、どのようなものなのでしょうか。
ロビンソン氏 理想的にはクラウドですが、多くの企業にとっては、オンプレミスと組み合わせたハイブリッドクラウドが現実的な手段となるでしょう。
最近、企業が古いオンプレミスのアプリケーションをクラウドへ移行するとき、移行先にPaaSを使うことが多いようです。しかしオンプレミスで実行、運用している大半のアプリケーションは、PaaSをはじめとするクラウドで使うことを想定して設計されているわけではありません。
こうした古いアプリケーションを抱える企業の中には、既存のアプリケーションと、それに近しい機能を持つ複数のクラウドアプリケーションを併用しながら、徐々に既存のアプリケーションを縮小させる戦略を取るところもあります。
全てのアプリケーションをクラウドに移行する必要があるかというと、必ずしもそうではありません。どちらにするかは、さまざまな条件に基づいてユーザー企業自身が決める必要があります。選択に当たっては、コンプライアンス(法令順守)対応のしやすさやコストなどが検討する要素となるでしょう。
当社のWebSphereでも、ユーザー企業の環境に合わせてアプリケーションをクラウドに移行したり、プライベートクラウドで稼働させたりといった選択をできるようにしています。
――日本の企業が取り組むべき課題は何でしょうか。
ロビンソン氏 日本だけでなく世界共通の課題になりますが、既存のビジネスを継続させながら、新たなビジネス要件を満たすためのイノベーションを加速させることです。APIやマイクロサービスアーキテクチャ、ハイブリッドクラウドの活用は、まさにこうした状況をサポートすると考えています。
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