エコシステムの充実がクラウドを盛り上げる
パートナー同士の協業で知見を共有、市場拡大とともに成長したAWSのビジネス戦略(2/2 ページ)
「次世代のMSP」を育成・支援するためのMSP認定プログラム
パートナーが自社の差異化ポイントをアピールできる認定制度として、「MSP認定プログラム」がある。これはMSP(Management Services Provider)としてAWSを使ったシステムの運用や監視をアウトソーシングサービスとして請け負うパートナーに対して、一定のスキルや実績があることを認定する制度だ。
一見すると、先ほど紹介したAWSコンピテンシープログラムと似ているようにも見えるが、今野氏によればMSP認定プログラムはAWSコンピテンシープログラムより若干ハードルを高く設定しているという。
MSP認定プログラムでは、オンプレミスシステムの運用・監視と同様のスキルだけでなく、「クラウドならではのダイナミックなスケーラビリティやポータビリティを存分に生かした運用が行える『次世代のMSP』としての能力が求められます」と今井氏は説明する。そうした要件を満たしていることを担保するために、外部監査によって100項目以上のチェックポイントをクリアすることを認定取得の条件としている。
認定取得の要件には、システム運用の観点から見たDevOps(開発と運用の融合)の方法論に精通していることも含む。先ほど紹介したAWSコンピテンシーの認定対象分野の中にもDevOpsがあることからも分かる通り、AWSは現在パートナーに対してDevOpsの価値を積極的に提案している。
Amazon.comやAWS自身も、WebサイトやWebサービスを開発・運用するための方法論としてDevOpsを長らく採用しており、現在はそこで得られた成果を「クラウド運用のベストプラクティス」としてパートナーに対して積極的にフィードバックしているのだという。
今野氏によると、AWSは2015年に700件以上のサービスリリースや機能強化を提供した。Amazon.comのWebサイトに至っては、1秒間に複数回という頻度で更新している。こうした頻繁なリリースサイクルは、旧来のウオーターフォール型の開発方法論では実現が難しい。そこでAWSはインフラの機能をAPIで公開したり、システムの機能をマイクロサービスとして実装したりすることで、DevOpsとの親和性を高めてきたという。「こうした経験から得られたDevOpsのノウハウを、パートナーの方々にも活用していただきたいと考えています」(同氏)
Amazon.comやAWSの内部で実際に使っているツールはパートナーに公開しており、実際にこれを使って成果を上げる企業の事例も表れている。その多くでは、数カ月に1回だったサービスリリースの頻度が週1回程度まで短縮されたという。
膨大な学習コンテンツで体系的にクラウドスキルを習得
APNは、AWSを使った最先端のクラウドサービスの実現を目指すエンジニアやアーキテクトのモチベーションに応えられるだけの技術支援プログラムが充実している。技術者向けのコンテンツだけでなく、AWSの販売やマーケティング活動を支援するための各種施策も豊富にあり、AWSについて基礎から体系立てて学習できる基礎的なトレーニングプログラムの用意もある(図)。
エンジニアのクラウドスキルの証明手段として、設計、開発、運用の3つの分野におけるAWS認定資格もある。海外では、このAWS認定資格の1つ「AWS認定ソリューションアーキテクト―アソシエイト」が、人材育成コンサルティング企業Global Knowledge Trainingの「15 Top-Paying Certifications for 2016」(稼げる資格ランキング2016年)で1位になったという。
参考
15 Top-Paying Certifications for 2016(Global Knowledge Training)
パートナービジネス拡大に向けて、AWSが対峙すべき課題は大きく2つある。1つ目は、パートナービジネスの主戦場である中堅・中小企業向け国内IT市場の「二極化」だ。調査会社IDC Japanが2016年2月に発表した予測によると、2016年以降は中堅企業(従業員規模500~999人)など従業員規模が大きい企業ほどITに対する投資の金額が大きいが、小規模企業(従業員規模99人以下)では最低限のIT支出にとどまるという。地域別で見た場合も、大都市圏(東京、大阪、名古屋など)の中堅・中小企業ではITへの投資が積極的な一方で、その他の地域の中堅・中小企業ではIT投資の抑制傾向が続くと予測している。
2つ目はクラウドがもたらす価値の周知だ。今野氏は「クラウドはオンプレミスのサーバと置き換えるもの、という“誤解”がなかなか消えない」と話す。配車サービス「Uber」や民泊サービス「Airbnb」など、クラウドをはじめとするデジタル技術があるからこそ実現可能な新しいビジネスが生まれ始めている。「『クラウドだからこそできるビジネス基盤』を考えることは重要な経営戦略です。『クラウドを使うと何ができるのか』という問いは、CEO、CIO(最高情報責任者)といった執行責任役職者が考える課題だという理解が広まってほしい」。今野氏はこう強調する。
AWSは、クラウドの真価を伝え、適切な活用方法を普及させていくことも重要な役割だと考えている。同社のAPNにおける認定制度について「昇格のための審査要件を比較的厳しくしています」(今野氏)というのも、こうした考えが背景にある。厳格な審査はパートナーのサービス品質の向上につながるはずだ。
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