エコシステムの充実がクラウドを盛り上げる
パートナー同士の協業で知見を共有、市場拡大とともに成長したAWSのビジネス戦略(1/2 ページ)
AWSといえば代表的なパブリッククラウドサービスベンダーの1つだ。ビジネスにおけるクラウド利用が多くの企業に広がるほど、パートナーの協力が重要になる。同社はどのような支援制度を提供しているのか。
Amazon Web Services(AWS)といえば、パブリッククラウドサービス市場ではビッグ4(AWS、Microsoft、IBM、Google)の一角を占める大きなシェアを持ち、今では誰もが知る存在だ。
企業におけるクラウド利用は、かつては開発・テスト環境の用途が中心だったが、今では本番環境でも広く使われるようになり、クラウドの採用を優先的に考える「クラウドファースト」というキーワードも頻繁に耳にするようになった。AWSはそうしたムーブメントの中で、常に中心的な存在であり続けてきた。
そんなAWSの日本国内におけるパートナービジネスを率いるのが、アマゾン ウェブ サービス ジャパンでパートナー アライアンス本部に所属する今野芳弘氏。同氏はここ最近の日本国内におけるクラウド市場の動向について、次のような見解を述べる。
注
「ディストリビューター」「リセラー」という言葉の厳密な定義付けはないが、本稿では次のように位置付けている。
- ディストリビューター:幅広いベンダーから仕入れたIT商材を自社在庫として保有し、小売業者やユーザー企業に販売する卸業者。大規模な拡販、流通の役割に軸足を置く事業者
- リセラー: IT商材をベンダー、ディストリビューターなどから仕入れ、ユーザー企業に販売する、大規模な流通経路は持たない事業者。仕入れた商材をそのまま販売するのではなく、他のシステムと組み合わせたり機能を追加したりして付加価値を高めて販売するリセラーはVAR(付加価値再販業者)という
パートナーとの広範なエコシステムに強みを持つAWS
ビッグデータやモバイル、IoT(モノのインターネット)といった最新ITトレンドに取り組むためのプラットフォームとして、AWSは「以前から幅広い企業に採用されており、今でもそうした用途での利用は拡大し続けています」と今野氏は説明する。しかし最近では、長らくオンプレミスで運用してきた業務システムをAWSに移行したいというニーズが増えてきたという。
こうしたニーズに十分に応えるためにはAWSのサービス単体だけでなく、パートナーの協力が必要不可欠になると今野氏は説明する。基幹系システムをクラウドへ移行するとなると、開発・テスト環境や情報系システムを移行する場合と比べて、可用性やパフォーマンス、セキュリティ対策などさまざまな面で、はるかに高いハードルを越えなければならない。そのためにはインフラにクラウドを採用するだけでは十分ではなく、業務システムの構築や運用に関して高度な専門性を持つパッケージベンダーやシステムインテグレーター(SIer)、コンサルティングファームなどとの協業が不可欠になる。こうしたパートナーとの広大なエコシステムを築き上げている点が、AWSの強みなのだという。
AWSのパートナー施策の中核を担う「APN」
AWSのパートナービジネスの根幹を担うのが、「AWS Partner Network」(APN)というパートナープログラムだ。AWSを使ったビジネスを展開するパートナー向けにさまざまな支援策を提供するとともに、それらが緻密に体系立てられているのが特徴だ。
APNには、専用サイトを通じて簡単に登録することができる。その際、「APNコンサルティングパートナー」と「APNテクノロジーパートナー」の2種類のパートナータイプから1つを選択する必要がある。前者はSIerやコンサルファーム、デジタル広告代理店やVARなど、AWSにシステムを構築することでビジネス価値を提供するパートナーが該当する。そして後者は、パッケージベンダー、「Software as a Service」(SaaS)や「Platform as a Service」(PaaS)のベンダー、開発ツールベンダーなど、AWSで稼働する製品を開発・販売するベンダーが該当する。
パートナーとしてAPNに登録したばかりの企業は「レジスタード」というティア(APNにおけるパートナーの“レベル”)に位置付けられる。さまざまな要件(AWSの売上額、AWSを使った事例の数、AWS認定資格者の数など)をクリアしていくと上位の「スタンダード」「アドバンスト」に順次昇格していく仕組みだ。APNコンサルティングパートナーには、さらに上位の「プレミア」というティアも存在する。こうして昇格していくと、それに応じてAWSから、より手厚い技術支援や販売支援を受けられるようになる。
2016年8月1日時点で、国内ではスタンダード以上のAPNコンサルティングパートナーが154社、APNテクノロジーパートナーが219社あり、これ以外にも数倍の数のレジスタードパートナーが存在する。
パートナーが持つ強みをアピールできる「コンピテンシー認定制度」
このような体系を持つパートナープログラムは他のベンダーにも見られるが、APNのユニークな点はパートナーが自社の専門性や強みをアピールして差異化を図る仕組みを用意していることだろう。その代表的なものの1つが、「AWSコンピテンシープログラム」と呼ばれる認定制度だ。
AWSコンピテンシープログラムでは、特定の市場領域、技術領域、アプリケーション領域におけるスキルや事例(AWSコンピテンシー)を豊富に持つパートナーを認定することで、パートナーが自社の強みを顧客にアピールしやすくなる。AWSコンピテンシープログラムの認定を得るにはAPNパートナーであることに加えて、さらに一定以上の要件を満たす必要があり、「ユーザー企業がパートナーを選ぶ上でも信頼が置ける選定基準になります」と今野氏は語る。
現時点では、以下の各分野のAWSコンピテンシーの認定制度が用意されている。
- 業界業種別
- 金融サービス
- 政府
- 医療
- ライフサイエンス
- デジタルメディア
- マーケティングとコマース
- ソリューション別
- IoT
- 移行
- DevOps
- モバイル
- ビッグデータ
- セキュリティ
- ストレージ
- ワークロード別
- Microsoft Exchange
- Microsoft SharePoint
- Oracle
- SAP
AWSコンピテンシーの認定制度とは別に、AWSの数あるサービスの中でも特にクラウドならではの特徴を生かしたユニークなものを取り上げ、それに対応するパートナーを認定するプログラムも存在する。例えば「Aurora Ready パートナー」の制度だ。これは2015年10月に東京リージョンでも利用可能となった新しいデータベースエンジン「Amazon Aurora」に関するサービスを提供するパートナーを認定し、AWSのWebサイトやイベントなどで特に力を入れてアピールしているという。
このAurora Ready パートナー制度を発展させた形で、AWSは2016年11月に「AWSサービスデリバリープログラム」を発表した。これはAmazon Auroraを始めとするAWSの各サービスの導入・活用に長けたパートナーを認定するものだ。特定のAWSサービス・製品による顧客事例を複数持ち、サービス単位で一定の実績があるパートナーを認定する制度になることから、既にAurora Ready パートナーに認定された企業も多数含んでいる。
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