Gartnerアナリストが評価基準を解説
クラウド最新ランキング発表、トップ2ベンダーがベストな選択とは限らない理由
GartnerのアナリストがIaaSプロバイダーランキングを発表し、その評価基準を解説した。ランキング上位のプロバイダーが必ずしもあなたにとってベストなチョイスとは限らないと警鐘を鳴らした。
2016年8月15日、Gartnerが米国で開催した「Gartner Catalyst Conference」初日のセッションは、映画『スター・ウォーズ』の壮大なテーマで幕を開けた。「クラウドウォーズ」という大々的なタイトルを冠したこのセッションは、大手IaaS(Infrastructure as a Service)プロバイダー3社の比較を紹介し、数百の参加者を集めた。
このセッションでGartnerのアナリスト、イライアス・クネイサー氏は、同社が7月に発表した『In-Depth Assessments』という一連の報告書に基づいて、IaaSプロバイダー3社、Amazon Web Services、Microsoft、Googleの最新順位を紹介した。
AWS、Azure、Google:スコア上のベストと自社にとってのベスト
ランキングは、コンピューティングやネットワークなどの技術面と、サポートや料金などの非技術面で各社を評価し、首位はAmazonの「Amazon Web Services」(AWS)で獲得スコアは92%、2位はMicrosoftの「Microsoft Azure」(Azure)でスコアは88%、3位はGoogleの「Google Cloud Platform」(GCP)でスコアは70%だった。
クネイサー氏は、テクノロジートレンドの指針を求めるGartnerの顧客の間ではAWSとAzureに関心が集中しているが、この2つがあらゆる企業にとって最善の選択肢となるわけではない、と強調した。
「現在首位のプロバイダーはAWSだが、だからといってAWSがあなたにとってベストであるとは限らない。検討すべき要素、考慮すべき項目はたくさんある」とクネイサー氏は語った。
検討要素の1つがスコア自体だ。Gartnerが実施した2015年のランキングと比べると、AWSは96%から4ポイント低下、Microsoftは1ポイント上昇、Googleは3ポイント上昇した。ただし、クラウド機能の開発と発展は猛スピードで進んでおり、Gartnerがプロバイダー評価に用いる基準項目の数も2015年の205個から2016年の234個に増えた。AWSとAzureとGoogleを評価する基準も増えたことになる。
「3社とも、スコアはわずかに上下しただけで、ほぼ変わらない水準を保っている」とクネイサー氏はいう。
結局のところ、企業が選ぶべきなのは、自社の要件に最適なIaaSだ。例えばAWSは「スケールが大きく」、高可用性と豊富な機能やサービスを提供している。
「何といっても、このセグメントとこの市場を生み出したのがAWSだ」(クネイサー氏)
一方、Microsoftに多大な投資を行ってきた企業、大半のデスクトップでWindowsが稼働している「大多数の」企業は、Azureに魅力を感じる。例えば、Microsoftの「Hyper-V」で仮想マシンを利用したり、Microsoftの「System Center」でサーバやデスクトップを管理したりしているなら、Azureが適しているだろう。
評価した3社の中で最も新参のGCPは、「GoogleのGoogle」だとクネイサー氏は評した。検索エンジン最大手の同社は大きく前進し、2015年よりスコアを伸ばした(2014年にはGartnerのランキングに含まれていなかった)。
Gartnerの顧客でGoogleを利用している企業の間では、そのストレージ容量と広範で強力なネットワークが好評だ。また、プログラミングを高速化するコンテナなどの革新技術や、それを管理するオープンソースの自動化システム「Kubernetes」も人気だ。
もう1つ、Google利用者に喜ばれているのが、Googleのコンピューティングリソースの料金体系に採用されている継続利用モデルだ。
「価格交渉が不要でコストを細かく計算しなくて済めば、利用者は喜ぶ。継続利用モデルでは、特定のシステムを長く利用するほど割引を受けられる。シンプルで利用者に分かりやすい」(クネイサー氏)
マルチプロバイダーアプローチへの移行
クネイサー氏は、プロバイダー各社にはそれぞれ弱点もあり、それがGartnerの評価ランキングにも反映されているという。例えばAWSにはバックアップサービスがない。Azureは機能設定が複雑で時間がかかる。Googleには制約が多く、強力な自動スケール機能は、取引が集中する時期などに合わせてスケジューリングすることができないし、コンピューティングリソースの分散を最適化するバックエンドロードバランシング機能もない。
Gartnerの評価対象に入っていないIaaSプロバイダーも多数ある。例えば、仮想化ベンダーVMwareの「vCloud Air」は評価対象に入っていないが、クネイサー氏によれば、最新の収支報告から判断して近々ニッチ市場製品化する可能性があるからだという。また、OracleのIaaSはまだ新しく、サービスも機能も限られているので、評価対象に入らなかった。
評価とスコアはさておき、この市場は白か黒かで判断できるものではないとクネイサー氏はいう。クラウド分野はまだ変化し続けており、企業はアプリケーションごとに異なるベンダーのプラットフォームを利用するマルチベンダー方式に移行しつつある。例えばMicrosoftのクラウドビジネススイート「Office 365」を使うためにAzureを採用すると同時に、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)の用途にAWSを利用し、ストレージ用にGoogleも使うといった具合だ。
「これからは複数のプロバイダーを使うようになり、大手クラウドプロバイダーが互いに競争するのではなく、[競争(competition)しながら協調(cooperation)する]“コーペティション”(coopetition)へ移っていくだろう」(クネイサー氏)
今回のGartner Catalyst Conferenceに参加したジャン=ミシェル・ヘフロン氏もそうしたアプローチを検討している一人だ。同氏は、米国と英国で病院を運営するHCA Healthcareでクラウドおよびエンドポイントサービス担当副社長を務めている。同社は主にAzureに投資してきたが、現在AWSへの移行を検討中だという。Googleも検討対象ではあるが、今回のセッションで多くの機能が不足していることを知り、IaaS市場で比較的新しいGoogleが他社にない利点をもたらすとはあまり思えない、とヘフロン氏はいう。
「Googleにはこの2年間注目してきたし、これからも注目したいと思う。ただ、現時点では、私の18カ月戦略にGoogleを使いたいとは思わない」とヘフロン氏は語った。
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