機械学習なくしてCESにもSXSWにも出るべからず
ハードウェアを飲み込んだソフトウェアが機械学習に飲み込まれる
数年前、テクノロジー業界を席巻したのはソフトウェアだった。そのソフトウェアの中で主役の座に躍り出ようとしているのが機械学習アルゴリズムだ。こうした傾向には相応の理由がある。
2011年、テクノロジー分野の起業家マーク・アンドリーセン氏は、「Wall Street Journal」の記事で「世界はソフトウェアに飲み込まれてしまった」と発言した。当時、誰もがハードウェアを作ろうとしなかった。誰もがソフトウェアに注目し、その収益力も高かった。現在に目を移すと、ソフトウェアと機械学習モデルとの関係にも同じことが当てはまる。
テクノロジー分野では相変わらずソフトウェアの人気が高い。そのソフトウェアの中でも圧倒的な勢いがあるのが機械学習だ。機械学習を組み込んでいないソフトウェアは、International Consumer Electronics ShowやSouth by Southwest Interactiveのようなカンファレンスに出展する意味がないともいえる。企業向けソフトウェアについてはまさにそのとおりの状況だ。マーケティング活動を強化し、新しい製品を生み出し、生産システムを正常な状態に保つために機械学習が使われている。そして、機械学習を取り入れるかどうかが業界における成否の分かれ目になる。
利用者から見た場合、機械学習を取り入れた注目度の高い製品にガジェットがある。ガジェットと聞くとテクノロジー企業ならハードウェアを想像しそうだが、これはソフトウェアの話だ。Amazonの「Amazon Echo」やGoogleの「Google Home」のような製品で唯一興味深い点は、機械学習モデルが原動力として利用されていることにある。こうした機械学習のアルゴリズムは、利用者の音声による質問を解釈して、その嗜好や予定を記憶し、長時間掛けて人間との対話を改善している。
また、「Facebook」や「Google」のような人気が高い純粋なソフトウェアでも機械学習を取り入れ、サービスをカスタマイズするため、深いレベルで機械学習を利用している。
企業から見れば先ほどのアンドリーセン氏の発言をもじって「ソフトウェアは機械学習に飲み込まれようとしている」といいたいだろう。2016年11月、Tableau Softwareは、同社の人気データ視覚化ソフトウェアに新機能を幾つか導入する計画を発表した。こうした新機能には機械学習を利用しているという。また、顧客関係管理ベンダー大手のSalesforceは2016年初頭に「Salesforce Einstein」を発表した。これは人工知能機能の集合体で、利用者にとって重要なことを学習して関連データの発見を容易にする。
機械学習がソフトウェア業界を飲み込もうとする兆候として最も分かりやすいのはプラットフォームにおけるデファクトスタンダードの座を巡る争いだろう。この争いにはテクノロジー分野の最大手企業が何社も加わり、機械学習と人工知能を利用した開発環境の事実上の標準になることを目指している。
「AWS re:Invent 2016」カンファレンスでAmazon Web Services(AWS)は、機械学習モデルと人工知能ツールを開発者が利用できるようにすると発表した。利用できるのは、「Alexa」AIボットの基盤と同じものだ。IBMも既に「Watson」を公開し、開発者がWatsonの認識エンジンを基盤とするアプリを構築できるようにしている。この分野ではGoogle、Microsoft、Facebook、Appleも活発な動きを見せている。
IBMのCEOを務めるジニ・ロメッティ氏は、2016年に開催された「IBM World of Watson」カンファレンスで、「Watsonがビジネス向けプラットフォームの中心的な存在になることを望んでいる」と話した。IBMは依然としてクラウドなどの従来型のテクノロジーから多くの利益を得ている。だが、同社はWatsonの機械学習機能に社運をかける覚悟だ。
このプラットフォーム戦争に勝利する企業がどこであれ、その企業には今後数十年にわたるコンピューティングの行く末を定めるチャンスがある。1990年代にその役割を担っていたのはMicrosoftの「Windows」だった。
2017年に入ってもこの流れは続くと見込まれる。
2016年12月、ライドシェアリング企業のUberがAI研究企業のGeometric Intelligenceを買収した。このGeometric Intelligenceのチームとテクノロジーが、Uberの新しい研究部門「Uber AI Labs」の中核を成すことになる。AI Labs部門では、とりわけ移動経路、注文配送、レンタカーテクノロジーを改善するために、AIと機械学習を取り入れる方法を探る。
機械学習と全く関係のないソフトウェア企業が、機械学習を業務の中心に据えようとしているのは偶然ではない。これが新たな標準になり、機械学習はこれからも全てのソフトウェアを飲み込んでいくことになるだろう。
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