「キャンパス内ならどこでも接続できる環境」を目指す
東京女子大学は「スチールドア付き学生寮で快適無線LAN」をどう実現したのか(3/3 ページ)
目立った不満はなし、「適材適所」の方針は堅持
桜寮へのZoneFlex R300導入後1年近くが経過しているが、今のところ特に問題なく動作しているという。引き渡し前の内覧時、スチールドアを完全に閉めた状態で電波強度を測定したところ、廊下の近くは部屋の隅も含めて-60dBm前半(注)、窓際でも-72dBmから下にはなっておらず、利用には問題ない状況だという。
注:「dBm」は電波の受信感度(RSSI:受信信号強度)を示す単位で、無線LANアクセスポイントの電波強度を表現するときに利用する。0に近いほど電波が強く、マイナスが大きくなるほど弱い。
実は桜寮の無線LAN環境について、学生からの「つながらない」という報告もあったという。情報処理センターは個別対応をする旨の案内をしたものの、学生側からの対応要請は特になかったことから「全体としては良好で、シリアスな問題はないと認識しています」と荻田氏は説明する。端末側の無線LAN設定の不備といった原因で、一時的に接続できない可能性はゼロではないものの、無線LANインフラそのものは学生にとっておおむね満足できる形で動作しているといえる。
運用・管理を担う情報処理センターの立場からは、「認証用のパスフレーズを変更するたびに、個々のアクセスポイントで設定する必要がなくなったので楽になりました」と田中氏は語る。加えて無線LANコントローラーのVirtual SmartZoneが仮想アプライアンスなので、ブレードサーバに搭載して容易に二重化して稼働できることも、安定稼働の面でメリットがあると評価する。
現時点ではエンドユーザー側、管理者側共に、Ruckus Wireless製品に対する目立った課題は認識していないが、同社製品ありきで全ての無線LAN環境を考えているわけではないという。用途によってはBeamFlex技術が必須ではなく、むしろコストを重視すべきケースもある。情報処理センターはこれまでも、特定のベンダーやツールにとらわれることなく、その時々の選択肢の中から技術面、コスト面で最善のものを選ぶ「ベストオブブリード」で学内LANを整備してきた。その方針を今後も堅持する考えだ。
セキュリティの強化も視野に、引き続き環境整備を
「今や、学内LANやインターネットへの接続は学生にとって必須の環境です。これはネットワークトラフィックを調査していても分かります」と田中氏は説明する。平日には明らかにトラフィックが増加し、昼休みになると端末の接続先アクセスポイントが教室から食堂へと一斉に移動するのが一目瞭然になるという。こうした状況を背景に、情報処理センターでは引き続き、キャンパス内のどこにいてもネットワークにつながる環境作りを目指している。もう1つの学生寮である「楓寮」についても、無線LANの電波状況やつながりやすさに関する課題が表面化しており、今後は具体的な対策が求められる。
直近では学内LAN利用のセキュリティをより強固にするために、無線LANの一般的な認証規格である「IEEE 802.1X」に準拠した認証システムの導入を検討している。スマートフォンやタブレットを含む、クライアント端末のIEEE 802.1X対応が進んできたことを受けての取り組みだ。
現在Docodemo-Netは、無線LANセキュリティ規格「WPA2」とレイヤー2スイッチのWeb認証を組み合わせて保護。ゲスト向けに学内LANを一時的に利用可能にする「Kokodake-net」も同様の仕組みで保護しており、期間限定アカウントの発行で不正利用を防いでいる。IEEE 802.1X認証の導入で、安全性をさらに高める。東京女子大学が参加を検討している大学間無線LANローミング基盤「eduroam」ではIEEE 802.1X認証が必須となることも、IEEE 802.1X導入の背景にある。
「セキュリティが守られた状態で、無線LAN経由で学内の必要なシステムにアクセスできる環境を整備するのは、われわれ情報処理センターの役割です。学生が学内LANを自由に安心して利用し、学びに役立てられるようにしたいと考えています」。荻田氏はこう期待を込める。
執筆者紹介
高橋睦美(たかはし・むつみ)
一橋大学社会学部卒。1995年、ソフトバンクの出版事業部(現: SBクリエイティブ)に入社。以来「Internet User」誌をはじめ、インターネット/ネットワーク関連誌にて、ファイアウォールやVPN、PKI関連解説記事の編集を担当。2001年にソフトバンク・ジーディーネット(現:アイティメディア)に転籍し、「ITmedia エンタープライズ」「@IT」といったオンライン媒体で10年以上に渡りセキュリティ関連記事の取材、執筆ならびに編集に従事。2014年8月に退職しフリーランスに。
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