何度でもよみがえるウイルス対策業界
「ウイルス対策ソフトがない世界」は本当にやってくるのか?
シグネチャベースの従来型マルウェア対策製品の限界が指摘される中、マルウェア対策業界はどう動くのか。専門家に今後の見通しを聞いた。
かなり前から限界論がささやかれているにもかかわらず、ウイルス対策やスパイウェア対策といったマルウェア対策業界は、意外に根強く生き残っている。TechTargetはこれまでも、マルウェア対策業界の将来について幾度か疑問を投げかけてきた。そのたびに悲観的な意見が多かったが、マルウェア対策業界は今も生き延びている。
1999年の時点で既に、マルウェア対策ソフトウェアそのものが、悪用可能な脆弱(ぜいじゃく)性の源になるという調査報告があった。広く普及している大手マルウェア対策製品にも、セキュリティ上の重大な欠陥が次々と見つかっている。それにもかかわらず、マルウェア対策業界は盛況とはいえないまでも健在だ。
シグネチャに基づくマルウェア対策製品業界は、既に限界を迎えたも同然なのか。従来型のマルウェア対策製品は姿を消し、機械学習や人工知能を利用する新しい脅威検知に置き換わるのか。セキュリティカンファレンス「RSA Conference 2017」で、専門家や関係者にマルウェア対策業界の将来について意見を聞いた。
何度でもよみがえるマルウェア対策業界
脅威検知ベンダーFarsight SecurityのCEO、ポール・ビクシー氏は次のように語る。「マルウェア対策業界はハリウッド映画に出てくる怪物と同じで、なかなか死なない。出番が来るたびに何度でもよみがえってくる」
専門家の見解によると、マルウェア対策ベンダーが生き残るためには、マルウェア検知のアプローチを変える必要があるという。エンドポイントセキュリティベンダーCrowdStrikeの共同創業者で最高技術責任者(CTO)のドミトリ・アルペロビッチ氏は、次のように述べる。「マルウェア対策はまだ生き延びている。ただし従来型のマルウェア対策製品は、次世代型の機械学習や振る舞いベースのアプローチに置き換わっていくだろう」
従来型のマルウェア対策の弱点は、シグネチャに頼ってマルウェアを検知していることだ。この方式はマルウェアが変化しないことを前提とする。だがマルウェア開発者は、シグネチャで検知されないように、あの手この手でコードを変化させるようになってしまった。「マルウェア対策業界がいずれ滅びる」といわれるのは、そのためだ。
NTT DATA Servicesのセキュリティ・サービス部門担当マネージングディレクターのキロッドラ・ミシュラ氏は、マルウェア開発者が突破可能なシグネチャベースの検知に頼っていては「マルウェア対策業界は完全に死滅する」と述べ、次のように予想する。「シグネチャで検知できないような新しい脅威に直面する先進国や先進業界では、機械学習や人工知能を利用した新しい検知サービスが登場するだろう」
「どのマルウェア対策ツールを使ったらいいかとよく聞かれるが、パッチこそが新しいマルウェア対策だと答えることにしている」。セキュリティベンダーQualysのWebアプリケーションセキュリティ担当バイスプレジデントを務めるジェイソン・ケント氏は、こう話す。「皆、発生するかどうか分からない脅威を新しいツールで防ぎたがり、既にあるツールを見過ごしがちだ。常に最新のパッチを適用すること。それで問題ない」とケント氏は言い切る。
運用管理ベンダーBMC Softwareのシニアバイスプレジデント兼最高情報責任者(CIO)のスコット・クラウダー氏は、「パッチ未提供の脆弱性を狙うゼロデイ攻撃は、重大な脅威だ」と指摘。ゼロデイ攻撃に対しては、マルウェア対策ソフトウェアの役割は縮小する一方、信頼できるプログラムのみを利用可能にするホワイトリスト方式と、危険なプログラムの利用を禁止するブラックリスト方式の併用で一定の機能を果たすと説明する。
従来型のマルウェア対策ソフトウェアは、今でも本当に役に立っているのか。ビクシー氏は「マルウェア対策ソフトウェアが存続するおかげで、職を失わずに済んでいる人は大勢いる。そういう意味ではいくらか役に立っているといえるだろう」と語る。だがマルウェアを防ぐという目的を果たしているかといえば「もはやそうとはいえない」と言い切る。「ほとんどの人は、ここ10年で『マルウェア対策ソフトウェアは役に立たなくなった』と感じているのではないだろうか」(同氏)
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