事例で分かる、中堅・中小企業のセキュリティ対策【第9回】
持ち帰り残業のせいで情報セキュリティ事故? 働き方改革に必須の情報漏えい対策(1/2 ページ)
持ち帰り残業は、労務上もセキュリティ面でも大きな問題です。従業員が業務データを個人のオンラインストレージへ持ち出すといった問題を放任していると、情報漏えいのリスクにつながります。
連載について
情報セキュリティ対策をしたくても、ITに詳しい人が社内外にいなくて困っている中堅・中小企業は多いのではないでしょうか。「知識不足」と「ヒト、モノ、カネ不足」の問題が目の前にあっても、対策は待ったなしの状況。予算を握る上司を説得するために、サイバー攻撃の事例を紹介しながら、その効果的な対策につながる情報セキュリティ製品を分かりやすく解説します。
国を挙げた「働き方改革」の後押しを受けて、大手企業のみならず、中堅・中小企業でも働き方改革に着手する企業が徐々に増えつつあります。拍車を掛けるように「プレミアムフライデー」という取り組みも2017年2月から始まりました。これは経済産業省が推進している働き方改革の取り組みです。月末の金曜日は15時に仕事を終えて、余った時間で買い物や飲食などの消費活動を楽しんでもらおうという景気喚起を狙ったものです。
働き方を変えることで、事業の質が低下してしまっては本末転倒です。そのため企業は真っ先に業務改革や業務効率化に着手し、事業の質を向上させるビジネス改革を目指すことが求められます。
日本では今後も働き手不足の状況が続いていくと予想できます。少ない人数で最大の業務パフォーマンスを発揮しなくてはいけなくなる状況も考慮しておく必要があるでしょう。いずれにしても企業としては「従業員が、限られた時間の中で、より効率的に仕事を遂行できる仕組みや体制作り」に着手することが求められます。
働き方改革には、Webメールやソーシャルネットワークサービス(SNS)といったクラウドツールの活用は有効な手段です。これらのツールで時間や場所に縛られない働き方を追求していくことは重要ですが、実はWebメールやSNSの利用には、セキュリティ面で考慮すべきことがあるのです。
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シャドーIT対策「むしろ利用制限しない」という考え方も
企業が職場でWebサイトの閲覧制限を掛けていなかったり、Webサイト閲覧に対する監視体制を整えていなかったり、「Facebook」や「Twitter」などのSNSに対して特段の制限を設けず自由に利用できたりする場合、どのようなことが起きるでしょうか。例えば従業員が、つい趣味やニュース関連の記事閲覧に時間を費やしてしまったり、Facebookの投稿から目が離せなくなってしまったりと、限られた時間を有効活用できていないケースも往々にしてあるのではないでしょうか。かくいう筆者も、インターネットで調べものをしていると、面白そうな記事を見つけてしまい、ついつい時間を大きく消費してしまったことが幾度となくあるのですが……。
いずれにせよ「有限である時間を効率的に活用し、業務時間内で質の高い業務を遂行できる仕組み」を作ることは、世の中の要請と言えそうです。そのため従業員のネットサーフィンやSNS閲覧などに費やされている時間を適宜チェックし、まずは利用実態を把握していくことをお勧めします。
悪気がなくても情報流出が起こり得る「シャドーIT」のリスク
従業員のWebサイト利用状況を確認することは、業務の効率と質の向上だけが目的ではありません。セキュリティ面から見ても、Webサイトに閲覧制限がなかったり、私的なWebメール(「Gmail」や「Yahoo!メール」など)のやりとりができる状態になっていたり、SNSの交流を自由にできるような状態を放任しておくと、セキュリティにおける脆弱(ぜいじゃく)性を作ってしまうことにもなり、注意が必要です。
これはいわゆる「シャドーIT」の問題です。シャドーITとは、ここでは企業として利用を許可していない私物のクライアントPCやスマートフォンなどの機器を利用したり、クラウドサービスなどインターネットで利用できるサービスを個人IDで利用したりする状態のことを指します。
言葉にすると何やら難しそうなシャドーIT。要するに普段からプライベートで利用しているGmailやYahoo!メールといったメールサービス、「Dropbox」「Box」などのオンラインストレージ、「Evernote」「Google Keep」などのノートアプリを、ビジネス環境でも混在して使える状態になっていると、利用者に悪意がなくても情報流出が起こってしまう可能性がある、ということです。例えば次のようなケースです。
事例:知らない間に自社の重要なデータがSNSやWebメール経由で流出していた
ある従業員は、3日後に提出を控えている企画資料をどうしても作らなければならなかった。企画資料を作るには、社内にある、たくさんの参考資料を使う必要があった。
集中して仕事をしたいが、社内にいると突発的な仕事が舞い込んでくるため、なかなかはかどらない。しかし会社からは残業を禁止され、なるべく早めに帰宅しなくてはいけない。
「ま、いっか。仕事のためだし」
そう思い、従業員は社内PCでWebブラウザを立ち上げる。ポータルサイトの「Yahoo! JAPAN」にアクセスし、IDとパスワードを入力。プライベートで利用しているアカウントで、資料作りに必要なデータをYahoo!メールに添付しようとした。
Yahoo!メールの容量制限は添付ファイルを合わせて25MBだ。だがオンラインストレージ「Yahoo!ボックス」を使えば、無料で5GBまでのデータを保存できる。これなら容量が大きい図面情報なども保存できて便利だ。
資料作りのために必要な情報を選別するのは面倒なので、使えそうな情報を取りあえず片っ端からYahoo!ボックスに保存することにした。保存した情報の中には、口外禁止の、会社のノウハウが詰まった機密情報や個人情報が記載されているデータも含まれていた。
帰宅後、従業員は自宅のPCでそれらを全てダウンロード。期日までに何とか、企画資料を作ることができた。
ある日、従業員の自宅PCがウイルス感染した。自宅のPCにはウイルス対策ソフトをインストールしていたが、期限が切れており、稼働していなかったのだ。しかもサイバー攻撃者にPCを遠隔操作されてしまうタイプのウイルスであり、これが原因で情報漏えいを起こしてしまった。
会社のIT環境には、それなりに予算の掛かったセキュリティ対策が施されていた。しかし情報漏えいの元となったのは、従業員の自宅の私物PCだったのだ。
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事例で分かる、中堅・中小企業のセキュリティ対策
情報セキュリティ対策をしたくても、ITに詳しい人が社内外にいなくて困っている中堅・中小企業は多いのではないでしょうか。「知識不足」と「ヒト、モノ、カネ不足」の問題が目の前にあっても、対策は待ったなしの状況。予算を握る上司を説得するために、サイバー攻撃の事例を紹介しながら、その効果的な対策につながる情報セキュリティ製品を分かりやすく解説します。
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