シャドーITの対策は“敵対”ではなく“歩み寄り”
Dropbox無断利用を止める最善策は「禁止しないこと」
従業員の手をシャドーITから引かせる手段は、シャドーITの禁止だけではない。IT部門の積極的かつ合理的な歩み寄りが、和解への道を開く有力な手段となるかもしれない。
会社やIT部門の許可なくIT製品/サービスを利用する「シャドーIT」がはびこり続けている。IT部門は何年もの間、シャドーITを敵対視してきた。こうした中、シャドーITを強制的に排除するのではなく、手を差し伸べて歩み寄るIT担当者が増えている。
一部のIT部門は、研修プログラムを積極的に導入している。その目的は、自社の重要なデータの漏えいにつながる恐れがある未承認のアプリケーションとサービスを使うリスクについて、ユーザーにより多くの情報を提供することだ。さらに驚くことには、ユーザーの作業効率を向上するために必要なソフトウェアとデバイスを使用することを積極的に推奨している。
変わるIT部門の姿勢
グローバルのコロケーションサービスプロバイダーである米Equinixの最高情報責任者(CIO)、ブライアン・リリー氏は「従業員との間に心理的な敵対関係を作りたくなければ、彼らをチームメイトとして考える必要がある」と語る。「当社では従業員のニーズに対処できていないことが明らかだった。そこで、何か協力できないかとユーザーに尋ねた。それはユーザーが望まないものや理解しないものを押し付けるのではなく、パートナーシップを構築するという対応だった」(同氏)
会社がより合理的な歩み寄りの姿勢で従業員に接すれば、従業員は以前よりも率直に必要なリソースを伝えるようになる。さらに会社からの提案事項にも耳を傾けることが多くなったとリリー氏は語る。
「どんな問題を解決しようとしていたのか尋ねたところ、ユーザーはより率直に答え、会社が提供したリソースの幾つかを喜んで受け入れた。その後、提供したリソースを適切に職務にマッピングする人材を雇うことができた」(リリー氏)。こうすることで、現実の問題が幾つか解決されるようになったのだという。
米国に本拠地を置く金融サービス会社であるWestern Unionで情報セキュリティ部門のディレクターを務めるデイビッド・レビン氏も、リリー氏の意見に賛同する。IT担当者が従業員と良好なコミュニケーションを確立する上で重要な最初の1歩は、従業員がシャドーITを使うようになった理由を確認することだと考えている。
「従業員は、IT部門から与えられたツールで仕事を遂行できない場合に、他の場所からクラウドベースのアプリケーションを入手する」とレビン氏は語る。「最初は問題の全容を把握していなかったが、従業員は会社が提供しているツールの制限によって、米Dropboxの『Dropbox』のような無料のファイル転送サービスを使って社外にファイルを送信していたことが明らかになった」(同氏)
この状況に対してWestern Unionは、Dropboxのようなサービスへのアクセスをブロックすることはしなかった。代わりに「Exelon」という独自のファイル管理システムを考案するという策に打って出た。ExelonにはDropboxに似た機能が多数搭載されており、かつ会社がコントロールできるセキュリティ機能もある。レビン氏によると、Exelonは何千もの従業員が採用しており、さまざまなクラウドプラットフォームを使っていたときより従業員の生産性が向上したという。
レビン氏のチームは「Western Union Information Security Enablement」(WISE)というプログラムを開始した。レビン氏は、ユーザーが革新的な発想とソリューションを通じて仕事を遂行できるようにすることが、このプログラムの目的だと説明する。
Western UnionはExelon以外にも、WISEの一環として幾つかの製品とサービスを導入している。米Oktaから購入したクラウドベースのID管理サービス「Okta」は、その一例だ。ExelonはOktaのタイルとして表示されるようになっている。単純にタイルをクリックすればアクセスできるので、ユーザー認証の必要もなく、従業員はより簡単に情報を共有して、共同作業できるようになった。
「『何でも駄目だ』という会社だと思われるよりは、こうしたアプローチを取った方がよいと判断した」とレビン氏は語る。
目当てのサービスが社内にあることを認知
従業員がクラウドサービスへアクセスするときは、複数の端末を使用することが多い。セキュリティが適切に確保されていない端末に、セキュリティが確保された承認済みのソフトウェアをダウンロードするよう従業員に依頼することになる一部のIT担当者にとって、これは悩ましい問題だろう。
レビン氏とリリー氏は、シャドーITを抑える手段の1つとして、公式な研修プログラムによって、未承認のWebサイトに足を踏み入れるリスクを従業員に学んでもらうことの重要性を強調する。Western Unionでは、社内で利用可能な代替サービスがありながら、従業員がその競合サービスへアクセスしていることを見つけると、社内の代替サービスに関するポップアップメッセージを表示するようにしているとレビン氏は言う。
「従業員がDropboxなどExelonと競合するサービスへアクセスしていることを確認すれば、Exelonに同じ機能があってもDropboxを使いたいのかどうか、または使う必要があるのかどうかを確認するメッセージを表示するようにしている」(レビン氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール」事例・サンプル集 -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティ教育はなぜ「年間計画」を立てる必要があるのか? -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティの重要性が伝わらない…… 効果がない社員教育から脱却する方法 -
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール訓練」導入ガイド 社員の意識を確実に高める仕組みの作り方 -
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
4
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
5
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
6
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
7
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
-
8
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
9
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
10
「Windows派」「Linux派」を分ける決定的な違い
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
8
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
9
Macの安全神話は崩壊? 最新の脅威動向から見えた攻撃のトレンドと有効な対策
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー