レッドブルレーシング事例で紹介
企業がマルチクラウド環境に向かうべき“必然”と普及へのハードル(2/2 ページ)
計画を立ててから購入する
AstraZenecaでは無限のクラウドサービスの世界が厄介な問題になっていることをスモリー氏は理解していた。そこで、まず同氏は接続すべき点を特定することにした。
「その作業の一環として行ったのは、幾つかのことを特定することだった。具体的には、クラウドの利用者、クラウドのアーキテクチャ、クラウドがレガシーおよび外部のアプリケーションやアーキテクチャと連携する方法、各パーツの所有者は誰かを特定した。鍵を握るのは、その所有者またはプロジェクト管理者だ。というのも、彼らが個々のベンダーとの関係を管理して、企業とのコミュニケーションを行っているためだ」(スモリー氏)
マルチクラウド環境を管理するのに役立つツールは多数存在し、その市場は拡大している。RightScaleの「RightScale Cloud Management」、Scalrの「Scalr Cloud Management Platform」、Cisco Systemsの「Cisco CloudCenter」は、その数例にすぎない。AstraZenecaは、VMwareに多額の投資を行っており、VMwareの「vRealize Suite Cloud Management Platform」を使用して、クラウドインフラサービスを管理している。なお同社はAWS、Microsoft、Googleのクラウドインフラサービスを運用している。
企業は製品の評価を行う前に、目的を理解しなければならないとハーウィッツ氏は指摘する。
例えば、各部門が予算に計上していないオンラインツールに経費を使用している場合、これは別の話になる。このような場合、「優秀なSaaSのアプリケーションを見つけたから使っている」という言い訳をよく耳にするとハーウィッツ氏は語る。このような状況では基本原則に立ち返り、各部署に市販ソフトウェアを購入するタイミングを周知する。
また、厳格なデータガバナンス要件を満たさなければならない場合もある。一部の国では、データを国内にとどめておくことが求められる。そのため、複数の国に顧客を持つ企業は、データを移動するときに注意しなければならない。幾つかのワークロードをクラウドに移行すると、ある司法管轄のデータセンターから別の司法管轄のデータセンターに情報を送信することになる。そして、このような行為は高額な罰金の対象になり得る。
「社内のデータセンターからクラウドプロバイダーが運用するデータセンターへのデータ移行を自動化する管理計画にゴーサインを出す前に、クラウドに移行しても問題ないワークロードかどうかを特定しなければならない」とハーウィッツ氏はいう。
「最初に全ての物事がそろっている必要がある。パニック状態になって、とにかくツールを手に入れようとしようものなら、どんな問題を解決しようとしているのか分からなくなる」(ハーウィッツ氏)
マルチクラウドのメリットを生かす
マット・カデュー氏はマルチクラウド管理を進めているIT幹部の1人だ。カデュー氏は、F1のレーシングチームRed Bull Racingで最高情報責任者(CIO)を務めている。Red Bull Racingは、同社のレーシングカーを構成する多くのパーツを製造している。具体的には、車体、電気系、制御システム、油圧システムだ。毎年3~11月のシーズン中に開催される20回のレースでは、毎回レーシングカーを解体し、新しく作られたパーツを使って組み立て直している。
そのため、ITは同社のあらゆる場面に浸透しているとカデュー氏は語る。コンピュータを利用したパーツの設計から、アルゴリズムに基づいたレースのシミュレーション、事故や天候の変化に取るべき最善策を決めるためのレース中のリアルタイムデータ分析まで多岐にわたる。
Red Bull RacingのITにおいて、クラウドは大きな割合を占めている。同社が保有する200個強のアプリケーションは、何らかのクラウドコンピューティングを使用している。その多くは特殊なものだ。レーシングカーの空気の流れを測定する流体動力ソフトウェアもその例だ。なお、これらのアプリケーションのファイルは巨大になるため、プライベートクラウドで運用されている。
「他社が管理するデータセンターでアプリケーションを運用したら、ファイル転送に恐ろしく時間がかかるだろう」(カデュー氏)
同社ではAzureと各種SaaSのアプリケーションも使用している。その一例は、「Microsoft Office 365」で、2017年後半に運用開始を予定している。
全てのデータを統合することが重要だとカデュー氏は語る。多くのデータはMicrosoftが保有しているので、多くの管理はバックエンド、つまりMicrosoftの側で行われる。例えば、データは「Active Directory」「SharePoint」「.NET Framework」などにある。
「この全てが連携するようになれば、Microsoftは、これらをより多くのリソースと統合し、これまでになく適切に管理できるようになるだろう」(カデュー氏)
だが、Red Bull Racingでは、Microsoftのサービスを他のベンダーのサービスと一緒に囲い込むマルチクラウド環境を管理するツールが必要だとカデュー氏は語る。その一例が新しく導入した人材情報システムだ。このシステムによって、ITはユーザーのコラボレーションやコミュニケーションの需要に対して迅速に対応できるようになるだろう。
「2018年6月までに、当社はこの状況を確実に達成しているだろう」とカデューは話す。
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