組み合わせでコストを削減
AWSに加えてSoftLayerも利用、“マルチクラウド”実践企業の目的は?
米The Weather Companyが、AWSに追加してSoftLayerを導入しているというニュースが話題を呼んでいる。だが、クラウドの世界ではこうした取り組みが多く見られるようになっている。
米Amazon Web Servics(Amazon)は、クラウドコンピューティングのリーダー的な存在であるかもしれない。だが、「Amazon Web Servics」(AWS)が唯一のプロバイダーではない。
Amazonのリファレンスカスタマーの米The Weather Companyは、導入済みのAWS環境に米IBMの「IBM Cloud SoftLayer」(SoftLayer)を追加導入し、マルチクラウド環境に移行したことで注目を浴びている。だが、クラウドコンピューティングが成熟するにつれて、Weather Company以外の企業もマルチクラウド管理戦略に乗り出すようになると見て間違いないとアナリストはいう。
The Weather Company(TWC)は、気象予報チャンネルの「Weather.com」など、気象予測や気象学に関連したサービスを提供する企業だ。TWCで最高技術責任者(CTO)を務めるブライソン・コーラー氏は、同社がAWSからSoftLayerに移行するのは、全資産ではなく一部の資産だけだと話す。
SoftLayerへの移行対象となるワークロードの大半は、TWCの企業間(B2B)アプリケーションのワークロードだ。同社は、IBMと共同で「IoT(モノのインターネット)」のグローバルインフラを構築する予定だ。
「当社は、AWSからSoftLayerに乗り換えるわけではない。クラウドベースインフラの運用計画に関するポートフォリオにSoftLayerを追加しているだけだ」とコーラー氏は語る。TWCがクラウド環境を拡張するに当たって、SoftLayerのクラウドには2つの大きな魅力があったとコーラー氏は振り返る。それは「グローバルなロケーション」と「ネットワークビジネスモデル」だ。
IBMは2015年中に、中南米、欧州、中東など世界15カ国40カ所にSoftLayerのデータセンターインフラを拡充することを表明している。つまり、TWCは視聴者やユーザーにより近い場所で気象データを提供できるようになる。一方、AWSが展開するグローバルリージョンは10カ所で、今のところ中東ではリージョンが提供されていない。
また、SoftLayerでは、リージョン間のデータ転送に対する課金がない。一方、AWSの多くのサービスでは、アベイラビリティゾーン間でデータを1Gバイト転送するごとに0.01ドル、リージョン間のトラフィックでは1Gバイト0.02ドルが課金される。だが、SoftLayerのベアメタルサーバの中には、月単位でレンタルすると、最大20Tバイトのインターネットの送信トラフィックが無償で使用できるものもある。
「SoftLayerは、当社のデータセンター間のデータ転送や外部使用によるデータの送受信に対して細かく課金するのではなく、ずっと単純なアプローチを採用している。そのため、当社のグローバルな環境で大規模なIoTのデータセットの送受信も管理できるようになった」(コーラー氏)
例えば、アジアにあるスマートフォンなどのデバイスから新しいデータセットを受信したときには、そのデータを世界中のデータセンターに簡単かつコスト効率の高い方法で複製することができる。データの移行費用を節約するために、データをアジアのデータセンターに置いておく必要はない。データを移動しないと、TWCのチームはデ―タにアクセスするときに遅延やネットワークホップの問題に対処しなければならなくなる。
「IBMが同社のネットワークで確立しているネットワークアーキテクチャとビジネスモデルは、ビッグデータとIoTデータセット専用に作られているといっても過言ではない」とコーラー氏は語る。
TWCはSoftLayerとAWSの両方にある資産の管理に、自社で開発したグリッドセルフサービスポータルを使用している。
「サードパーティーを通じて管理することも検討したが、コスト効率や機能の面で折り合いがつかなかった。その結果、自分たちでポータルを作ることにした。これから数カ月かけて、当社のグリッドテクノロジーにSoftLayerを組み込み、世界中のSoftLayerクラウドへのアクセスを完全に自動化する予定だ」(コーラー氏)
広がるマルチクラウド管理
TWCは、大規模なマルチクラウドの導入に極めて早期に乗り出した1社である。だが、クラウド市場が成熟するにつれて、こうしたシナリオは増えているとアナリストはいう。
米451 Researchでアナリストを務めるカール・ブルック氏は、「これまでに当社が話を聞いた全ての企業は、なんらかの形でマルチクラウドを導入している」と話す。
一般に、AWSを利用したマルチクラウド管理戦略を導入する場合、企業は処理コストを削減するため専用のオンプレミスに移行する。だが、このようなサーバはAWSのフロントエンドサービスと接続されたままであることが多いとブルック氏は指摘する。このようなサービスには、「Amazon Elastic Load Balancing」(Amazon ELB)のロードバランサー、「Amazon CloudFront」のCDNや「Amazon Route 53」のDNSなどがある。
米Gartnerでアナリストを務めるミンディ・カンシラ氏は、次のように語る。「クライアントからの電話のうち、少なくとも半数はマルチプロバイダー戦略を積極的に計画しているか、積極的に導入しているかのどちらかに該当するクライアントからのものだ。現時点で検討しているかどうかに関係なく、最終的には、ほぼ全ての企業が複数のパブリッククラウドプロバイダーを利用するようになるだろう」
「市場では、このような導入形式がまだ採用され始めたばかりだ」とカンシラ氏はいう。「多くの企業が2015年中に同じような行動を取るようになるだろう。トップの座に君臨しているAWSの他にも、AWSに匹敵する基礎サービスを提供する競合プロバイダーは台頭している」(カンシラ氏)
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