「いいとこ取り」が基本
APIはビジネスをデジタル化する“魔法”、その見つけ方とは(2/2 ページ)
APIの実情
「APIは、誰もがたくさんの、しかも迅速に自社システムを開発するための鍵になる。それは間違いないが、他方でAPIに過剰な期待をしてしまい市場参入も可能とし、全てをうまく運ぶ魔法のようなものだとする考えがある」とシアトルを拠点とする技術コンサルタントのテレン・ブライソン氏は語る。
同氏によると、事態はもう少し複雑で、ベンダーや企業側はもっと多くのことを考える必要があるという。
米市場調査企業Gartnerのレポートによると、APIが生み出す新たなビジネスでは、さまざまなことが容易になるという。例えば、人、場所、システム、データ、モノ、アルゴリズムの統合や接続、新たなユーザーエクスペリエンスの創出、データと情報の共有、人とモノの認証、取引とアルゴリズムの実現、サードパーティー(第三者企業)アルゴリズムの利用、新たな製品、サービス、ビジネスモデルの創出が挙げられる。
ここでいうユーザーエクスペリエンスは顧客体験と訳す。企業が提供するサービスや製品をユーザーが選定する段階から利用するまでの一連の流れを指す。この一連の流れについてユーザーが心地よいと感じる程、企業とユーザーの関係性が良好であるといえる。
IT担当者からAPI専門家へ
米市場調査企業Forrester Researchは、2014年には1億4000万ドルだったAPI管理ソフトウェアへの投資額が、2020年には6億6000万ドルにまで跳ね上がると予測する。
APIへの機運が急速に高まっているため、企業は準備する必要がある。だが、IT担当者にはどのような影響があるだろう。IT担当者はAPIを使いこなすために勉強をしてAPIの専門家になるべきだ、という考えもある。これに対し、専門家でなくとも使いこなせるようにベンダーはAPIをシンプルにすべきだという考えもある。
Nationwideのキャレル氏は、IT担当者はAPIの使い方を学ぶべきだという。「APIはアプリケーションの新たなビジネスになる。当社ではデジタル化実現プログラムを通じて社内システムを開発し、当社関係者が新たな期待に応えられるように準備とトレーニングを重ねている」
英ロンドンを拠点とするCurrencycloudでCTO(最高技術責任者)を務めるエド・アダリオ氏は異なる見方を示している。同社はクラウドベースの国際送金サービスを提供している。同氏は、市場にはあまりにも多くの選択肢があるため、IT担当者がAPIの専門家になる必要があるとは考えていない。「あるサービス提供企業のAPIが複雑すぎると分かれば、別のサービス提供企業を試せばよい。最近のAPI空間には多くのAPIベンダーがひしめき、サービスの民主化がAPIの中心になっている。企業は、簡単で柔軟性があり自社に価値をもたらす最善のAPIを見つけることができる」と同氏は述べる。
コンサルタントのブライソン氏によれば、APIを完全に把握した専門的な開発チームが必要か否かはその企業のビジネスモデルによって全く異なるという。例えば、日常業務を自動化するだけであれば、APIについてチームが既に保有している知識を利用するか、チームをトレーニングするか、チーム自身で習得するかのいずれかで十分だ。
「Amazon Web Servicesなどのシステム基盤を利用する本格的な自動化開発を計画しているのであれば、プログラムを学んだネットワークエンジニアや、ネットワークを理解するソフトウェアエンジニアでは不十分だ。恐らく複数のシステムを横断管理するスキルをもったシステムインテグレーターの支援が必要だろう」と同氏は話す。
ギャップを埋めるAPIツール
アダリオ氏によれば、ベンダーのAPIパッケージでは対応できない複雑なニーズを抱える企業は、社内で最初から開発をやり直す傾向があるという。そのためには多くの人材や時間、費用が必要になる。
そこで、企業は最初から作り直す前にAPIベンダーとのコラボレーションに目を向ける必要がある。「企業は特定の機能が不足していても、自社のニーズの80%を実現するAPIがあるならば、そのAPIベンダーと話し合うべきだ」とアダリオ氏は語る。また、APIベンダーは市場に提供できる価値を常に探しているともいう。
企業は、そのベンダーや製品に詳しいユーザーグループや顧客諮問委員会を通じて助言を受けることで不足している特定の機能を充足することができると、Sungard Availability ServicesでリードCIOを務めるトッド・ロエプク氏は述べる。Sungard Availability Servicesは米ペンシルベニア州ウェインにあるカスタムITサービス提供企業である。「ベンダーにとって重要な顧客であれば、顧客諮問委員会への参加させることで双方にメリットがある。顧客諮問委員会でベンダーと顧客が意見交換することで、サードパーティー(第三者企業)ソフトウェアとしての将来どうしていくかをベンダーと顧客が一体となって考えることができる」と同氏は語る。
Nationwideのキャレル氏もこれに賛意を示し、1つで全てを賄う必要はないと話す。「ビジネスニーズを解決するには、必要な機能が存在する場所、サービスを探し、複数の機能領域に渡る多くのベンダーパッケージと統合すればよい。複数のAPIを統合しても解決できない程自社のニーズが複雑であれば、さまざまな方針を採用できる」これは例えば、アプリケーション機能を公開する追加のAPIを提供するようベンダーに要請したり、そのベンダーとパートナー契約を結び、新しい機能または自社独自のAPIサービスを補完する機能を備えた複雑なパッケージを提供したりすることもできる。
さまざまなAPI導入スケジュール
米カリフォルニア州クパチーノを拠点とするクラウド管理サービス提供企業Mist Systemsで製品管理の統括責任者を務めるサディア・マッタ氏によると、スケジュールは環境の複雑さによって決まるという。
「環境がシンプルであれば、APIの統合が数時間で完了することもある」と同氏は言う。全く新しいテクノロジーであれば45日から60日に延びる。「APIを使って得ようとする洗練度合いにまさに左右される。監視するだけならば、APIを使ってサイトを自動稼働するよりもはるかに簡単だ」。こうした活動を促進するために、Mist Systemsでは、サンプルプログラムやドキュメントを公開し、顧客が情報を交換し、アイデアを出し合い、プログラムを共有できるオンライン会議室を用意していると同氏は付け加えた。
複雑さが主な決定要因になることにはアダリオ氏も同意している。「Currencycloudのように金銭を動かすAPIを扱う場合、フレームワーク、セキュリティ、コンプライアンス、規制が全て適切であることを確認する必要がある」と同氏は述べる。ただし、APIには提供やサービスが迅速であるという約束事があることから、導入時間を日単位や週単位で測れない場合、企業は「そのAPIベンダーを使って問題の解決や実際の開発を行うかどうか」を再考すべきだとアダリオ氏は助言する。
APIパートナーとしてのベンダー
「企業がAPIの提供を求める場合、そのAPIを利用するためのリソースの準備や調整は企業側が行うものだとベンダーは期待する」と、ボストンを拠点とするWeb管理システムプロバイダーのAcquiaで開発マネジャーを務めるプレストン・ソー氏は語る。さらに、企業自体がAPIファーストの方針を採用し、APIを開発の最後ではなく最初の検討事項にすることもベンダーは期待していると同氏は言う。
米テキサス州フリスコを拠点とする通信アプリケーションプロバイダーのGENBANDのカルロス・アラゴン氏は、API運用の注意点について話す。アラゴン氏は同社が提供するPaaSの「Kandy」とユニファイドコミュニケーションのソリューションマーケティング部門のディレクターを務める。開発チーム全体が大半の作業にAPIツールを利用するのが優れた方法ではあるがこの市場のほとんどの企業にとって、これは非現実的であるという。開発チームで全ての開発を行っている企業では、自社のスキルセットが最新のAPIテクノロジーに合わなかったり、リソースが制限されたりすることも多い。そのため、同氏は、APIを使って最初から開発を行う企業を手助けする手っ取り早い方法を用意するようにベンダーに助言する。
「マッシュアップ」を準備するようにアラゴン氏は注意を促す。「このように変化の激しい環境では、ベンダー1社のAPIで企業の全ニーズに応えられることはほとんどない」
Oracleで統合、処理、API管理クラウドサービスの製品マーケティングおよび製品戦略部門の統括責任者を務めるビカス・アナンド氏は、IT部門はAPIの専門家になる義務があると考えている。2017年1月にAPI管理ベンダーのApiaryを買収したOracleには、企業のAPIの設計、開発、ドキュメンテーションをサポートするシステム基盤があるにもかかわらず、それでも同氏はIT部門には高いレベルでAPIスキルが必要だと述べる。
技術的観点では、Webベースのプログラミング言語、マイクロサービス、REST(Representational State Transfer)、JSON(JavaScript Object Notation)などが必要になる。文化面では、開発チームと企業がAPIファーストの考えを持つことが必要だと同氏は話す。「忘れてはいけないのは、API自体が製品だということだ」例えば、バス輸送サービスではバスの到着予定時刻を通勤者に通知できるように、APIを使って追跡システムを公開できる。そうすることで、通勤者はバス到着時間を正確に把握し不満を減らすことができる。その結果、公共交通サービスの利用が増加することになると同氏は言う。
Acquiaのソー氏によると、IT担当者が使用するツールの多くがAPI駆動型になっているため、多くのIT担当者は既にAPIの専門家になっているという。同氏はビジネスインテリジェンス(BI)ツールについて、説得力のあるデータを抽出してレポートを作成しデータ駆動で意思決定を支援するには、そのAPIに関する十分な知識が必要だと指摘する。
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