IT部長さんのための技術トレンド【第8回】
1回で分かる:仮想マシンを丸ごとバックアップする「VADP」の仕組み(1/2 ページ)
VMwareが提供するバックアップのAPIである「VADP」。仮想マシンを丸ごとバックアップする機能として多くの製品が対応している。このVADPの仕組みやバックアップ動作について詳しく解説する。
「VADP」はVMwareが提供するバックアップのAPIであり、多くのバックアップ製品が対応している。VADPの認知度は、この2、3年でかなり向上してきたと実感している。筆者は年間に100件近いバックアップ案件を支援しており、VADPはその中のほぼ全ての仮想化案件で採用または検討されている。
だが、VADPについて「仮想マシンを丸ごとバックアップする」ということは知っていても、動作や仕組みをきちんと理解していない人も多い。
本稿では、VADPのバックアップ動作について詳細に解説する。下記の流れで誰にでも理解できるように解説するので、安心して読み進めてほしい。
- VADPの概要 ~VADPとは?
- VMware環境を構成する要素
- VADPバックアップの動作
VADPの概要 ~VADPとは?
VADPはVMwareが提供するバックアップのAPIである。「VMware vSphere Storage APIs - Data Protection」が現在の正式名称であり、以前は「vStorage API for Data Protection」だった。仮想マシンのスナップショットと連係し仮想マシンを丸ごとバックアップする機能である。仮想マシンのスナップショット機能と連係するので、ある程度の整合性を保つことができる。また、ストレージ環境に依存しないので、汎用性の高いバックアップ方法といえる。
VADPの機能はバックアップ製品を介して利用できる。「NetBackup」「NetVault Backup」「Arcserve」などの主要なバックアップ製品は全てVADPに対応している。
参考情報
ほとんどのバックアップ製品はVADPに対応している。しかし、リストアや運用面で機能差があることは忘れてはいけない事実である。各バックアップ製品についての最新情報は各ベンダーに確認していただきたいが、確認項目や製品選定の考え方については、筆者の過去の記事を参考にしてほしい。
VMware環境を構成する要素
VADPのバックアップ動作を説明する前に、VMware環境を構成する要素をおさらいしよう。仮想マシンを格納するストレージに、SANストレージとNASのどちらを選択するかによって構成が異なる(※1)。
※1 本稿ではVSANとVVOLついては割愛する。
SANストレージ構成の場合
「VMware ESX」サーバとSANストレージの間の接続は、FC-SANの場合はファイバーチャネル(FC)で、iSCSIの場合はネットワークになる。図1の円柱はストレージ内のLU(Logical Unit)を示す。LUには「VMware VMFS」ファイルシステムが構成され、複数台のESXサーバから同時にマウントすることが可能だ。そのLUをVMFSデータストアと呼び、仮想マシンを構成するファイルが置かれる。なお、ESXサーバの内蔵ディスクをデータストアにした場合もVMFSファイルシステムを構成できるが、複数のESXサーバからは共有できない。
データストアには仮想マシンごとにディレクトリが作成され、そのディレクトリ内に仮想マシンの設定ファイルであるVMXファイルや、仮想マシンのディスクイメージファイルであるVMDKファイルなどが配置される。なお、VMDKファイルは仮想マシンからは内蔵ディスクや外付ディスクに見え、OSのファイルシステムが構成され利用される。WindowsではCドライブなど、Linuxでは「/dev/sda1」やLVM論理ボリュームなどで認識される。
NAS構成の場合
ESXサーバとNASの間はネットワークで接続される。図2の円柱はストレージ内のボリュームを示す。ボリュームはNFS共有されており、複数のESXサーバから同時にマウントすることが可能である。そのボリュームをNFSデータストアと呼び、内部の構成はVMFSデータストアの場合と同様である。
VADPバックアップの動作
バックアップの基本動作については、バックアップ製品による機能差はない。本稿の内容は、どのバックアップ製品にも通じるものだ。まずは、バックアップサーバ周辺の環境準備について説明し、その後にVADPバックアップ動作フローについて解説する。
バックアップサーバ周辺の環境準備
VADPバックアップの準備として、バックアップサーバ、「VMware vCenter」サーバ、ESXサーバの3者間をネットワーク接続し、名前解決できる必要がある。なお、VADPのバックアップ動作には、仮想マシン内にバックアップ製品のエージェントは不要である。
SANストレージの場合はデータストアから直接SAN経由でバックアップすることが可能だ。SAN経由のバックアップのためには、データストアのLUをバックアップサーバに認識させる必要がある。そのためには、ストレージのマスキングと、FCスイッチのゾーニングの設定を行う。ただ、データストアのファイルシステムはVMFSのため、バックアップサーバのOSからはファイルシステムまでは認識できない。バックアップサーバのOSがWindowsの場合は図3のように、「不明」なディスクとして認識される。
NASの場合は、NFSデータストアのボリュームはバックアップサーバに対してNFS共有されている必要はない。なお、NASからの直接バックアップできず、ESXサーバからのネットワーク経由のバックアップになる。
バックアップデータの転送経路を指すVADPの用語を「転送モード」という。データストアの種類との関係を表1にまとめる。
| 転送モード(※2) | 対応しているデータストアの種類 | バックアップデータの転送経路 |
|---|---|---|
| SANモード | SANストレージ | データストアからFCまたはiSCSIネットワーク経由で直接バックアップサーバに転送される |
| NBDモード | SANストレージ、NAS、 ESXサーバの内蔵ディスク |
ESXサーバからネットワーク経由でバックアップサーバに転送される |
バックアップサーバの設定はとても簡単だ。バックアップ製品にvCenterサーバのホスト名と管理者アカウントを設定すると、vCenterサーバ配下のESXサーバと仮想マシンを認識できる。vCenterサーバが存在しない場合は、ESXサーバを直接登録することも可能だ。後は、バックアップ対象の仮想マシンを選択し、バックアップジョブの設定をするだけだ。
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