仮想環境のバックアップ製品 選定ポイント【第4回】
【徹底比較】VMware環境に最適なバックアップ製品の機能を大解剖
VMwareの仮想環境におけるバックアップ製品選定のポイントとともに、主要なバックアップ製品の機能を比較。CA、EMC、NetApp、Quest、Symantec、日立など主要なベンダー製品の機能比較表付き。
今回は、これまでに説明したバックアップ製品選定ポイントを用いて、主要なバックアップ製品の機能比較を行う。
- バックアップデータの種類とバックアップ方法の選定
- バックアップ運用面での製品選定ポイント
- VADP(vStorage API for Data Protection)対応バックアップソフトの機能比較
- ストレージのコピー機能とVMware連携ソフトの機能比較
バックアップデータの種類とバックアップ方法の選定
バックアップ製品の比較を始める前に、まずはバックアップ方法を検討すべきである。バックアップ方法を決定せずにバックアップ製品を比較すると、バックアップ方法の異なる製品を比較することになり、比較のポイントがぶれてしまう。その結果、要件ではなくコストのみで製品を選定するというケースも出てきてしまう。
VMware環境に向いているバックアップ製品は大きく分けて2つに分類できる。1つは、バックアップソフト(バックアップアプライアンスを含む)、もう1つはストレージベンダーが提供するストレージのコピー機能とVMwareの仮想マシンスナップショットの連携を自動化するソフト(本記事では「ストレージ・VMware連携ソフト」と呼ぶことにする)である。
バックアップソフトは、VADPバックアップ、ネットワークバックアップによって、システムデータ(OS)、ファイルデータ、データベース(DB)データを包括的に保護することができる。
ストレージ・VMware連携ソフトは、主にシステムデータのバックアップ用途に用いられ、バックアップソフトと比較して、高速なバックアップ/リストアが実現できる。ストレージの機種に依存するため、異機種のストレージが混在している環境では、ストレージ機種ごとにバックアップ/リストア操作、スケジュール/世代管理など運用が異なってしまう。
中大規模の仮想化環境では、システムデータ、ファイルデータ、DBデータのそれぞれを取得するバックアップ方法として、一般的には下記が考えられる。小規模環境では、システムデータ、ファイルデータ、DBデータの全てをバックアップソフトのネットワークバックアップでまかなえるケースもある。
| バックアップ方法 | システムデータ | ファイルデータ | DBデータ |
|---|---|---|---|
| バックアップソフト | バックアップソフト (VADPバックアップ) |
バックアップソフト (VADPバックアップ) |
バックアップソフト (ネットワークバックアップ) |
| バックアップソフトと ストレージ-VMware連携ソフトの併用 |
ストレージ・VMware連携ソフト | バックアップソフト (ネットワークバックアップ) |
バックアップソフト (ネットワークバックアップ) |
大半はバックアップソフトで全種類のデータ保護の要件を満たせる。しかし、現状、VADPによる仮想マシンのシステムリストアは、バックアップと比較してパフォーマンスがそれほど出ない。そのため、多くの仮想マシンのシステムリストアを高速に行う要件がある場合は、システムデータのバックアップにストレージ・VMware連携ソフトの使用をお勧めする。その際、ファイルデータ、DBデータのバックアップについてはバックアップソフトを用いたネットワークバックアップになるが、重複排除バックアップや、永久差分バックアップに対応している方が効率は良いといえる。
また、仮想マシンのシステム復旧を高速化するソリューションとしては、バックアップデータを格納しているストレージのVADPバックアップデータから仮想マシンを起動できるソフトがある。仮想マシンのリストアが不要のため、高速に復旧することができる。バックアップストレージからの起動のため、プライマリストレージと比較してパフォーマンスが劣る。VMwareのStorage vMotionで、仮想マシンを停止せず、プライマリストレージへ移行することがサポートされている構成であれば、業務への影響が少ないため望ましいといえる。現在は、本機能をサポートしているバックアップソフトは少ないが、今後は増えていくことが予想される。
以上より、まずバックアップ方法を下記3パターンから選定する必要がある。
- VADP対応のバックアップソフトで全データを保護する
- ストレージ・VMware連携ソフトでシステムデータを、バックアップソフトでファイルデータ、DBデータを保護する
- バックアップソフトのネットワークバックアップで全データを保護する(比較的小規模な環境でのみ採用を推奨する)
バックアップ運用面での製品選定のポイント
運用面の機能はバックアップ製品ごとに大きく異なる。大規模なVMware環境の場合、VADPバックアップや重複排除の機能に加えて、本稿で紹介する機能を備えている方が効率の良いバックアップ運用を行うことができる。
マルチテナント対応
物理環境のシステムの場合、システムごとにバックアップの仕組みが構築され、システム管理者がバックアップ/リストアの運用をしているケースがほとんどだ。仮想化によってサーバやストレージ統合が行われるとバックアップも統合される。その結果、ある仮想マシンの管理者がファイルや仮想マシンのリストアを行いたい場合、その都度バックアップ管理者に依頼するのでは運用効率が良いとはいえない。仮想マシン管理者が自分でバックアップ/リストアできなければ、仮想マシンの数が増えてきたときに運用がうまく回らない。仮想マシン単位のリストア、ゲストOS内のファイル単位のリストアともに、仮想マシン管理者に権限委譲できる製品が望ましいといえる。
バックアップジョブの並列設計の柔軟な制御
複数の仮想マシンのバックアップを並列で実行することで、バックアップのパフォーマンスを向上させることができるが、いくらでも並列実行すればよいというわけではない。VADPバックアップでは、最初に仮想マシンのスナップショットが実行され、バックアップ完了時に仮想マシンのスナップショットが削除される。その削除の際に、バックアップ中の変更が保存されたデルタファイルが元のVMDKファイルにマージされる。その処理にI/O負荷が掛かり、バックアップ対象でない仮想マシンに影響を及ぼす可能性がある。そのため、データストアごとに(厳密に言うと、RAIDグループごとに)、4~8並列程度にすることを推奨する。そこで、VMware ESXサーバごと、データストアごとにバックアップジョブの並列数を制御できる製品の方が有利である。
プリスクリプト、ポストスクリプトの実行
VADPバックアップの際に、アプリケーションや仮想マシンの「完全な」整合性を取るために仮想マシンの停止/起動を自動化したい場合がある。
下記のスクリプトが、VADPバックアップの際、仮想マシンスナップショット作成の前後で実行される(スナップショット作成の前とスナップショット削除の後ではない)。なお、本スクリプトを実行するためには、VMware Toolsのインストールが必要である。また、これらはVMwareの標準機能であり、どのバックアップ製品でもVADPバックアップ時に実行される。ストレージ・VMware連携ソフトに関しては、下記のスクリプトが実行されるかは確認する必要がある。
| 仮想マシン | スクリプト | 説明 |
|---|---|---|
| Windows | C:¥Program Files¥VMware¥VMware Tools¥backupScripts.d¥ | 左記フォルダ内のスクリプトが、スナップショット作成前後にアルファベット順で呼び出される。スナップショット作成の前処理では引数に「freeze」、後処理では引数に「thaw」が渡されて実行される。 |
| Linux | /usr/sbin/pre-freeze-script /usr/sbin/post-thaw-script |
スナップショット作成の前処理でpre-freeze-scriptが実行され、後処理でpost-thaw-scriptが実行される。 |
上記は、仮想マシン内で何かを実行したい場合には有効だが、仮想マシン自体を停止・起動したい場合は、VMware vSphere PowerCLIを使用することを検討するべきである。上記スクリプトで仮想マシンをシャットダウンすると、スクリプトが異常終了し、バックアップ失敗となる。
バックアップ製品によっては、独自のプリスクリプト、ポストスクリプトを持つものがある。それらのスクリプトが実行される場所、実行されるタイミングを必ずご確認いただきたい。
| 実行される場所 | バックアップサーバ、バックアップ対象の仮想マシン内、ストレージ・VMware連携ソフトの管理サーバなど |
|---|---|
| 実行されるタイミング | 仮想マシンスナップショット作成の前後、仮想マシンスナップショット作成の前・スナップショット削除の後など |
ただ、仮想マシン内、バックアップサーバ上でのスクリプトの実行、ストレージの操作やVMware vSphere PowerCLIスクリプトの実行などを一連の動作として行いたい場合は、バックアップ製品のプリスクリプト、ポストスクリプトではなく、別途ジョブスケジューラソフトを使用することをお勧めする。なぜなら、Windows-Windows間、Windows-Linux間でスクリプトの実行をリモートで伝搬させていくのは困難だからだ。
vCenterプラグイン対応
vCenterプラグインは、VMware vSphere Clientのユーザーインタフェースを拡張し、サードベンダー製品の操作やステータス確認をできるようにしたものである。VMwareの管理とサードベンダー製品の管理を共通のインタフェースで行え、VMwareの権限管理と連携できるなど運用を効率化できる。ストレージベンダーが提供するストレージ・VMware連携ソフトには、本プラグラインに対応しているものが多い。バックアップソフトに関しては、現在対応している製品は少ないが、今後対応していくことが期待される。
vCloud Director対応
VMware vCloud Directorとは、IaaSを実現するヴイエムウェアの製品である(関連記事:vSphereベースのクラウド構築・運用を簡素化 ~ハイブリッドも視野に)。Webポータルによってオンデマンドで仮想マシンを配備でき、マルチテナント環境、高い管理性、拡張性を提供する。今現在、vCloud Director環境の仮想マシンをバックアップし、vCloud Director環境に「直接」リストアできる製品は少ないが、今後は大規模な仮想化環境のバックアップ製品選定の重要なポイントになるだろう。
VADP対応バックアップソフトの機能比較(2013年3月末、筆者調べ)
以下、バックアップ製品の比較に移る。なお、誌面の都合上、比較表(表3)はダウンロードして閲覧いただきたい。
表3、表4の機能比較表は、PDFで提供しています。
本稿の表3、表4に掲載している比較表は、PDFで提供しています。「VMware環境に最適なバックアップ製品の機能比較表」からダウンロードしてください。
上記の比較表を見ると、VADPバックアップをサポートしている製品でもかなりの機能差があることが見て取れる。現在は、中大規模の仮想化環境では、Avamar、NetBackupが適しているといえる。特筆すべき点は以下である(表中の赤○)。
NetBackup
- Linux仮想マシン内の整合性がとれる
- VADPバックアップで取得したバックアップデータから、アプリケーションのオブジェクト単位でリストアできる(Exchangeのメールボックスなど)
- バックアップする仮想マシンの自動選択を行うことができる。大規模な仮想化環境で、仮想マシンの数が増減した際に、バックアップの設定を変更しなくても自動でバックアップ対象の追加・削除が行われる
- ベンダーの公表している情報によると、次期バージョンでvCenterプラグイン、永久差分VADPバックアップ、vCloud Directore対応、バックアップストレージからの仮想マシン起動に対応する予定である
Avamar
- VADPバックアップで永久差分バックアップが可能である
- 仮想マシンが全損していない場合、VMDKのブロック差分リストアできる
- Windows仮想マシン、Linux仮想マシンの両方で、エージェントレスでのファイルレベルリストアができる
- マルチテナント対応で、柔軟な運用が可能である
また、機能では差が現われないが、バックアップ/リストアのパフォーマンスにはソフトごとに差があることも事実だ。筆者の検証環境では、複数のソフトでパフォーマンスを測定したところ、同一環境にも関わらず数倍差がつくケースもあった。このパフォーマンス比較については、同一環境での実測を行う必要がある。
ストレージのコピー機能とVMware連携ソフトの機能比較表(2013年3月末、筆者調べ)
表4はストレージのコピー機能とVMware連携ソフトの機能比較表だ。こちらも誌面の都合上、ダウンロードして閲覧いただきたい。
表3、表4の機能比較表は、PDFで提供しています。
本稿の表3、表4で掲載している比較表は、PDFで提供しています。「VMware環境に最適なバックアップ製品の機能比較表」からダウンロードしてください。
ストレージ・VMware連携ソフトは、下記を考慮し採用を検討するべきである。
- 1つのボリュームに複数仮想マシンが含まれる場合でも、個々の仮想マシン単位でリストアできる製品を選択すべきである
- ファイル単位のリストアは不向きのため、バックアップソフトの併用を検討する
- 変更ブロックのみのストレージのスナップショットだけでは、オリジナルボリュームやストレージ筐体障害時にバックアップデータをロストする可能性があるのでバックアップにはならない。ストレージ筐体内、筐体内でのクローン(複製)機能を併用する必要がある
現在、ストレージのコピー機能とVMwareの仮想マシンスナップショットの連携を自動化できるソフトは、ストレージベンダーが提供する専用ソフトが一般的である。しかし今後は、バックアックソフトも本機能を実装してくる可能性は十分にある。
本稿の比較表は執筆時点での機能比較である、本比較表を見て製品選定をするのではなく、選定する時点での製品最新バージョンで機能を調査していただきたい。ここまで読んでいただけた方は自らで選定ができるようになっているはずである。バックアップ製品のベンダーは、常に新しいバックアップ技術を機能追加、実装していく。旧来の方法に執着するのではなく、情報収集に努めていただきたい。
製品単独のカタログや製品紹介プレゼンなどを見ると、あたかも何でもできるように書かれているものもある。だが、バックアップ製品を選定する際はそれを真に受けず、バックアップ製品のベンダーに細かい点で機能・仕様確認ができるだけのスキルが必要なる。ベンダーへの確認だけでなく、製品のマニュアルを読むことや、実際に評価版などで動作を確認してみることも必要だ。
ただ、少しの動作確認では、製品の品質、既知の問題、最適な設計などを把握することは困難である。そのため、提供元の実績やノウハウ、支援体制・保守体制などトータルで判断すべきである。また、ワールドワイドで実績が伸びてきている製品でも、飛び付くのではなく、国内での保守体制も確かめたい。
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仮想環境に最適なバックアップ
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