VMware“インフラ管理ツール”を理解する(後編)
vSphereベースのクラウド構築・運用を簡素化 ~ハイブリッドも視野に
VMware vSphere上でIaaS環境を構築・運用する「VMware vCloud Director」。プロバイダーが提供するvCloud DirectorベースのパブリックIaaSと連携し、ハイブリッドクラウドへと発展させる。
前編はこちら
「複雑化するvSphere環境を高度に管理 vCenter Serverの上位製品登場」
2012年1月にリリースされたインフラ統合管理スイート「VMware vCenter Operations Management Suite」の紹介記事。
ユーザー企業のクラウドコンピューティング導入は、多くの場合、サーバ統合で利用する仮想化基盤でプライベートIaaS(Infrastructure as a Service)を実現することから始め、クラウドプロバイダーのクラウドサービスを臨機応変に取り入れる“ハイブリッド型”へと発展するのが理想型といわれる。ただし、絵を描くのは簡単でも実践は難しい。
そこで注目したいのが、ヴイエムウェアの「VMware vCloud Director」(以下、vCloud Director)である。企業で最もよく使われている仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」(以下、vSphere)の上でマルチテナント型クラウドを構築し、IaaSとして提供するソリューション製品だ。2010年秋に初登場し、2011年夏に「VMware vSphere 5」のリリース(関連記事:ライセンスのカウント方法も分かる! VMware vSphere 5の全貌)に合わせて「VMware vCloud Director 1.5」へバージョンアップしている。
1つの論理リソースから複数vDCを生み出す
vCloud Directorでは、vSphereによって抽象化された一塊の論理リソースをさらに抽象化した仮想データセンター(vDC)として活用する。まず、vSphereの管理ツール「VMware vCenter Server」の配下にあるvSphereクラスタ/リソースプールと結び付いた「プロバイダーvDC」を作成する。つまり、1つの論理リソースからキャパシティーや性能が異なる複数の仮想データセンターを容易に生み出せるわけだ。
次にプロバイダーvDCのテナントとなる「組織」を定義し、組織ごとにユーザー、グループとその権限、リソースの使用制限などを設定する。その上でそれぞれの組織にプロバイダーvDCのリソースを区分けした「組織vDC」を割り当てる。その区分けにはモデルを用い、1つの組織に対して複数のプロバイダーvDCから複数の組織vDCを割り当てることもできるので、組織のITニーズに合わせて柔軟にリソース配置が行えるだろう。
そして組織ごとに利用するvApp(単独および複数の仮想マシンとその動作条件を標準のOVF形式でパッケージ化したもの)を作成したり、vAppのテンプレートとメディアファイルを収めた「カタログ」を登録する。これによりエンドユーザーは標準のWebポータルを通じ、セルフサービスでvAppを使用、作成できるようになり、プライベートIaaSの基本機能を網羅できる。
vCloud Directorでは、「システム管理者」「組織管理者」だけでなく「vAppユーザー」「コンソールアクセスのみ」など標準で6つのロールが定義されており、カスタムロールの設定にも対応する。各組織でエンドユーザーに「vApp作成者」や「カタログ作成者」のロールを与え、セルフ化を進めることも可能である。
3つの階層で仮想ネットワークを構成
クラウド内で仮想ネットワークを自在に構成できるのもvCloud Directorの特徴だ。仮想的なファイアウォール、NAT、DHCPなどネットワークエッジを提供する「VMware vShield Edge」の機能限定版がバンドルされており、ネットワーク境界のセキュリティを高められる。
vCloud Directorの仮想ネットワークは3階層で作れる。vSphereの仮想ポートをグルーピングしたポートグループに基づき、ホストを跨いで仮想マシン同士を結び付ける「外部ネットワーク」、それぞれの組織内のvApp同士を結ぶ「組織ネットワーク」、そしてvApp内の仮想マシン同士を結ぶ「vAppネットワーク」である。
組織ネットワークも通常のvSphereネットワーク同様にセキュリティレベルを選べる。レイヤー2のブリッジ接続によって外部ネットワーク(その先の物理ネットワーク)と直接つながる「External Direct」、仮想のNATとファイアウォールでフェンス越しに外部とつながる「External NAT-routed」、外部から完全に隔離された「Internal」だ。1つのプロバイダーvDC内でセキュリティレベルの違う複数の組織vDCを運営できるわけだ。
このようにvCloud Directorなら効率的にプライベートIaaSを構築・運用できる。
vSphere管理ツールと連携して機能拡張
vCloud Directorは、他のvSphere向け運用管理ツールと連携することで、機能を拡張できる。例えば、前編「複雑化するvSphere環境を高度に管理 vCenter Serverの上位製品登場」で取り上げたスイート製品「VMware vCenter Operations Management Suite」にも含まれる課金管理ツール「vCenter Chargeback Manager」と連携すれば、課金業務を厳密化、自動化できる。
Chargeback Managerの主な機能は、組織階層管理、課金モデル作成、メトリクス収集、リポーティングの4つだ。あらかじめ課金対象となる組織階層を定義し、課金モデルを作成する。その課金モデルは、リソース使用量を実使用で見るか、割当量で見るかなどの課金ポリシー、リソース要素別の基本レート、人件費、電気料金、施設費といった諸経費割り当てなどから詳細に定義できる。
後はChargeback Managerが、CPUやメモリなどを管理するvCenter Server、仮想マシンやvAPPなどを管理するvCloud Directorの双方からリソース使用のメトリクスを自動収集してコスト(料金)を算出し、グラフィカルなリポートが自動作成される。課金を伴うプライベートIaaSならChargeback Managerとの連携は、vCloud Directorの魅力の1つとなるだろう。
vSphere機能を“サービス化”するvCloud API
vCloud Directorで構築されたプライベートIaaSは、違うサイトのプライベートIaaSとの基盤統合、外部プロバイダーのパブリックIaaSとの機能連携に対応する。ヴイエムウェアが力を入れる「vCloud API」によって実現するものだ。
vCloud APIは、運用管理を中心としたvSphere機能を“サービス化”するオープンなREST型APIである。これを利用するユーザーやサードパーティーは、vSphereと連携するシステムやツールを作りやすくなる。なおvCloud APIは、異なるクラウド環境を相互接続する“クラウドAPI”の策定を目指す標準化団体「DMTF(Distributed Management Task Force)」にも提案されている。
現状でもvCloud Directorで構築・運用するクラウド環境同士なら、社内外のサイトを超えての相互接続に対応する。vCloud APIベースの機能拡張プラグイン「vCloud Connector」(無償)を加えることで、1つの管理UI上で複数のクラウド環境を一元管理できる。プライベートIaaSからパブリックIaaSへ仮想マシンやvAppをコピー、稼働させるといった透過的な運用が可能になるのだ。
特にヴイエムウェアが認定したパートナーがvCloud Directorで一定要件を満たしながら構築・運用するクラウド環境「VMware vCloud Datacenter Services」は、ユーザー企業がvCloud Directorで構築したプライベートIaaSと高い相互接続性を持つ。しかもvCloud Datacenter Servicesでは、予約せず利用分のみを支払う「基本」、一定期間の利用を予約する「期間契約」、専用ハードウェアを用いる「専用」と3つの形態で仮想データセンターが使えるため、自前のIaaSを抱えるユーザー企業は柔軟にハイブリッド型クラウドを組むことができる。
今のところ、国内でvCloud Datacenter Servicesの認定パートナーはソフトバンクテレコムだけだが、同社以外でもvCloud Directorでパブリッククラウドを手掛けるプロバイダーは既に何社も出ている。vCloud DirectorでプライベートIaaSを構築・運用するユーザー企業が将来、ハイブリッド型へ発展させるときにもプロバイダーの選択肢は多いだろう。
ハイブリッド型への展開を見据えたプライベートIaaSの導入を検討しているなら、vCloud Directorは注目したいソリューションである。
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