仮想環境のバックアップ製品 選定ポイント【第2回】
失敗しないVMware環境に最適なバックアップ製品の選び方(VADP編)
VMwareが提供するバックアップ用API「vStorage API for Data Protection(VADP)」は、仮想環境のバックアップを効率化する上で欠かせない機能だ。VADPに着目し、バックアップ製品選択のポイントを説明する。
第1回「【技術解説】仮想化特有の課題がある、VMware環境の“従来型”バックアップ」では、VMware環境のバックアップに物理環境と同様の方法を用いることで生じる課題について説明した。その課題とは下記の5つである。
- 時間
- 容量
- 負荷
- 災害対策
- 運用の効率化
これらの課題を解決するためには、VMware環境に特化したバックアップ方法や新しい技術を適用する必要がある。
1~4は、「vStorage API for Data Protection(VADP)」と「重複排除」が課題解決の鍵になる。5についてはバックアップ製品に依存するところが大きいため、第4回の「【機能比較】VMware環境のバックアップ製品機能比較」で触れる。
単にVADPや重複排除に対応しているか否かを問うのであれば、現在リリースされている主要なバックアップ製品はほぼ対応しているといっても過言ではない。VADPや重複排除はバックアップ方法/技術の総称であり、製品によって実装されている機能は異なる。ある製品でできることが、他の製品でも同様にできるかどうかは調査する必要がある。VADPや重複排除の詳細な機能を理解し、それらを有効に使わないと、中/大規模の仮想環境のバックアップは効率化できない。
今回はVADPの機能に着目し、バックアップ製品選択のポイントを説明する。
- ポイント1:VADP(vStorage API for Data Protection)に対応しているか?
- ポイント2:CBTに対応しているか?
- ポイント3:エージェントレスのファイルレベルリストア、アプリレベルリストア、ブロック差分リストアに対応しているか?
- ポイント4:VMDK指定のバックアップ/リストアに対応しているか?
これまでの連載
- 第1回 【技術解説】仮想化特有の課題がある、VMware環境の“従来型”バックアップ
- 第2回 失敗しないVMware環境に最適なバックアップ製品の選び方(VADP編)
- 第3回 失敗しないVMware環境に最適なバックアップ製品の選び方(重複排除編)
- 第4回 【徹底比較】VMware環境に最適なバックアップ製品の機能を大解剖
- 第5回 【徹底比較】コストを詳細分析、VMware環境の主要バックアップ4製品
連載インデックス「仮想環境のバックアップ製品 選定ポイント」
サーバ仮想化のバックアップ製品に関する記事
ポイント1:VADP(vStorage API for Data Protection)に対応しているか?
VADPはVMwareが提供するバックアップに関するAPIである。バックアップ製品のベンダーは、本APIを使用した機能を実装して製品をリリースしている。VADPバックアップはVMware環境に特化したバックアップ方法であり、ストレージ環境に依存せず、ある程度の整合性を取ることができる。従来のVMware環境に特化した方法である「VMware Consolidated Backup(VCB)」と比較して、バックアップ/リストア時間ともに約半分にすることが期待できる。
下記がVADPの動作フローである。
- バックアップサーバがvCenterまたはESXサーバに対し、ネットワーク経由で仮想マシンのスナップショットを要求する
- VMwareの仮想マシンスナップショットが実行され、VMDKファイルの書き込みが停止される(その後の変更データはデルタファイルで管理される)
- ストレージネットワーク経由でバックアップサーバへVMDKファイルを転送し、バックアップストレージに格納する
- デルタファイルがVMDKファイルにマージされ、仮想マシンのスナップショットが削除される
2で仮想マシンスナップショットが自動的に実行されているところが重要なポイントである。Windowsの場合はスナップショットの際に、VMware ToolsのVSS連携機能によって整合性が取られる。VMware Tools標準機能では、VSSコピーバックアップが実行されるが、VSS完全バックアップを選択できる製品もある。Linuxの場合、VMware標準では同等の機能はないが、VMware Toolsと連携してext3/ext4ファイルシステム、LVM2のキャッシュをフラッシュするモジュールを提供するバックアップ製品もある。
また、VMDKファイルをバックアップサーバに転送する方式(トランスポートモード)には3種類ある(図1)。それぞれVMwareデータストアやバックアップサーバの構成、バックアップデータ経路が異なる。
| トランスポートモード | VMware データストア |
バックアップサーバ | バックアップ経路 |
|---|---|---|---|
| SANモード | SANストレージ | 物理サーバ | VMwareデータストアからFCまたはiSCSI経由で直接バックアップサーバに転送される |
| NBDモード | SANストレージ、NAS、ESXサーバの内蔵ディスク | 物理サーバ、 仮想マシン |
ESXサーバのVMkernelポートからネットワーク経由でバックアップサーバに転送される(NASからの直接転送ではない) |
| hotaddモード | SANストレージ、NAS、ESXサーバの内蔵ディスク | 仮想マシン | VMwareデータストアから、VMkernelの内部パスを経由して、バックアップサーバ仮想マシンに直接転送される |
製品選択と直接は関係ないが、Windows、LinuxのVMware Toolsに、仮想マシンのスナップショットの前後で実行されるプリスクリプト/ポストスクリプトがある。それらを使用してアプリケーションの整合性を取ることも可能だ。また、仮想マシンにSCSIバス共有が設定されている場合、VMwareの仕様により仮想マシンのスナップショットが実行できず、VADPバックアップが失敗してしまうため注意されたい。
VADPに関するホワイトペーパー
- 間違いやすいVMware環境のバックアップ運用、まずは基礎知識を身に付けよう(ホワイトペーパー)
- 重複除外が実現するVMware環境の高速バックアップ/リストア(ホワイトペーパー)
ポイント2:CBTに対応しているか?
Change Block Tracking(CBT)は、VMDKファイルの変更ブロックを管理する仕組みである。この変更ブロックは、VMDKファイルと対になるCTKファイルで管理されている。バックアップ製品がCBTに対応している場合、VMDKファイルをフルバックアップしてもゲストOSの実際の使用量のみが取得される。例えば、100GバイトのVMDKファイルでも50Gバイトのみ使用しているのであれば、50Gバイトのバックアップデータとして取得される。また、更新ブロックだけを取得するブロック差分バックアップも可能だ。これにより、フルバックアップでは実際の使用量、差分バックアップでは変更があったブロックのみの取得が可能となり、バックアップの容量を削減することができる。その結果、バックアップ時間を短くすることにもつながる。
さらに、ゲストOSのファイルシステム上の未使用領域の他に、削除済みブロックやスワップ領域、ページングファイルなど、バックアップする必要がないデータを排除してバックアップできる製品がある。これらのバックアップ容量を削減できる機能は、Windows、LinuxのゲストOS両方に対応できるかどうかも重要である。
ポイント3:エージェントレスのファイルレベルリストア、アプリレベルリストア、ブロック差分リストアに対応しているか?
VADPバックアップで仮想マシン単位のAフルバックアップ、Bブロック差分バックアップを取得し、仮想マシン単位でCフルリストアすることは、VADP対応のバックアップ製品であれば、ほぼ全ての製品でサポートされている。
上記に加えて、VMDKファイルのバックアップから、下記のようなさまざまなリストアができる製品がある。
- ファイルレベルリストア
- アプリレベルリストア
- ブロック差分リストア
1.ファイルレベルリストア
ファイルレベルリストアは、バックアップを取得したVMDKファイルからゲストOSのファイルシステムの構造を理解し、個別のファイルを抽出してリストアする機能である。一度のVMDKバックアップで、仮想マシン単位のシステムリストア、ゲストOS内のファイルリストアの2通りのリストアができる。
ファイルサーバやWebサーバのように、整合性をあまり気にする必要がない仮想マシンはVADPバックアップのみでよい。その結果、第1回「【技術解説】仮想化特有の課題がある、VMware環境の“従来型”バックアップ」で説明したネットワークバックアップが不要になり、バックアップ容量を削除できる。一方、データベースのように整合性を取る必要がある場合は、VADPバックアップの他にデータバックアップ用途のネットワークバックアップも必要だ。
本機能はWindowsゲストOSのみに対応しているバックアップ製品もあるが、それではWindows、Linuxで運用が異なってしまう。そのため、Windows、LinuxゲストOS共に可能かどうかという点も重要である。
また、ファイルレベルリストアが可能でも、ファイルをリストアする対象のゲストOSにバックアップエージェントが必要な製品と不要な製品がある。後者のエージェントレスの場合、仮想マシンへのバックアップエージェントをインストールする構築工数やパッチ適用などの運用工数を削減することができる。
2.アプリレベルリストア
アプリレベルリストアを用いると、バックアップ取得したVMDKファイルから、アプリケーションをオブジェクト単位でリストアできる。例えば、Microsoft Exchange Serverの電子メールサーバで取得したVMDKバックアップから、特定ユーザーのメールボックスを抽出してリストアすることができる。この機能を有する製品は、VADPバックアップによって整合性の取れたアプリケーションのバックアップが可能になる。
ただ、本機能でサポートされているアプリケーションは、VSSに対応したWindowsアプリケーションのみであることが多い。よって、本機能を有しているバックアップ製品でも、VSS非対応のアプリケーションやLinuxアプリケーションのバックアップを取得したい場合は、ネットワークバックアップが必須となる。
3.ブロック差分リストア
ブロック差分リストアは、CBTを使用して、仮想マシン単位のシステムリストアをブロックレベルで差分リストアできる機能である。これによって、リストア対象の仮想マシンが全損していない場合は、リストア時間を短縮することができる。
ポイント4:VMDK指定のバックアップ/リストアに対応しているか?
複数のVMDKファイルがある仮想マシンをバックアップ/リストアする際に、VMDKファイルを個別に指定できるバックアップ製品がある。
例えば、仮想マシンに3つのVMDKがあり、それぞれにOS、ファイルデータ、データベース(DB)データが格納されているとする。OS、ファイルデータに関してはVADPバックアップである程度の整合性が取れたバックアップを取得できるが、DBデータはネットワークバックアップが推奨される。バックアップ製品によっては、仮想マシンの全てのVMDKファイルがバックアップ対象になってしまうものもある。そうすると、DBデータが格納されているVMDKファイルは、ネットワークバックアップに加え、VADPバックアップでも取得されてしまい、二重取りが発生する。よって、VMDKファイルを個別指定してバックアップできる製品では、二重取りを効率良く防ぐことができ、バックアップ時間と容量を削減することができる。
第2回ではVADPに着目しバックアップ製品選択のポイントを詳しく説明した。VADPに対応しているバックアップ製品でも、製品によっては機能が大きく異なる。単なる仮想マシン単位のシステムバックアップ/リストアに加えて、仮想環境のバックアップを効率化する機能を理解していただきき、製品を選択するポイントとして活用していただけると幸いである。
次回の第3回では、重複排除機能について、バックアップ製品選択のポイントを詳しく説明する。続く第4回では、実際のバックアップ製品を対象にこれまでに説明したポイントを比較する。ご期待いただききたい。
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仮想環境のバックアップ製品 選定ポイント
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