ユーザーの本音と企業の事情
モバイルUCの「スマホでビデオ通話」が普及しない理由はお粗末なアプリ?(2/2 ページ)
ベンダー間の連携
企業にUCシステムを浸透させる上で、次の、そして恐らく非常に重要な開拓領域となるのがモバイルデバイスだ。しかし現状では、企業はUCベンダーの能力にひどく落胆している。もっともアナリストやUCベンダーによれば、最近はAppleやGoogleなど大手モバイルデバイスメーカー各社がUCシステムとの連携強化に取り組んでおり、今後こうした状況は一変する見通しだという。
相互連携機能の提供は今や、UCベンダーやモバイルデバイスメーカーが市場で戦うための最低条件だ。「デスクの固定電話を主要なUCツールにしたくないと考えるエンドユーザーの存在が企業やベンダーを駆り立て、『モバイルエンドポイントと真にユニファイド(統合)されたUC』という至高の目標へと向かわせている」とレイザー氏は語る。こうした相互連携の問題に役立つのが、Appleの「CallKit」やGoogleの「Android API」などのAPIだ。CallKitは、開発者が自作のVoIP通話サービスをAppleの最新モバイルOS「iOS 10」の通話機能と連携できるようにするためのフレームワークだが、まだ全てのモバイルUCアプリケーションがサポートしているわけではない。
シュック氏によれば、MCHはAvayaやCisco Systems、Fusionなど、昔からあるベンダーのUCプラットフォームを検討する計画だ。ただしMicrosoftのUCアプリケーション「Skype for Business」も有力候補の1つだという。既にMCHのスタッフの多くが、セキュアなメッセージングやビデオ通話にSkype for Businessを使用しているからだ。「Microsoftは各種サービスのクラウド移行と連携をかなりのペースで進めている。当然、選択肢の1つになる」とシュック氏は語る。
シュック氏によれば、Skype for Businessは使いやすいため、MCHでは既に多くのスタッフが利用しており、Cisco Systemsのビデオ会議システム「WebEx」をSkype for BusinessのWeb版でリプレースする動きまで始まっている。ただしMicrosoftのPBXソリューションについてはここ数年確認しておらず、詳しい機能については把握できていないという。
Cisco Systemsは、モバイルOSがよりオープンになることで大きなメリットを享受するであろう立場にある。同社によれば、Appleは非常に協力的だという。「Appleは企業市場で存在感を高めることを目指しているからだ」とCisco Systemsのクラウドコラボレーション担当上級副社長ジェンス・メガーズ氏は指摘する。Cisco Systemsは最近、ヘルスケアや金融など規制の厳しい業界に向けた独自の取り組みを発表し、コラボレーションプラットフォーム「Cisco Spark」のモバイル版アプリにコンテンツ保護など企業レベルの管理性を追加する方針を明らかにした。会議やメッセージング、通話などのコラボレーション機能をクラウドベースで提供するCisco Sparkとモバイルデバイスとの連携が強化されれば、その分、セキュリティやプライバシー、コンプライアンスも強化できる。
「この2年間Appleと協力し、iOSとの連携に必要なAPIを作成してきた」とメガーズ氏は語る。この提携の目標は、Cisco SparkをiOS端末が標準搭載する電話アプリと連携させ、Siriで利用できるようにすることだ。
エンドユーザーが自分にとって最善のツールを使おうとすることは阻止できない。「当社がモバイルUC市場で成功するためには、最良のアプリケーションの1つとなるしかない。本当に素晴らしいユーザーエクスペリエンスを提供する必要がある」とメガーズ氏は語る。
Cisco SystemsとAppleの提携は例えば以下のような成果をもたらしている。Cisco SparkとiOSの最近のアップデートとAppleが解放したCallKitによって、Cisco Sparkの各種機能(通話やチャット、メッセージング、会議など)を「iPhone」の連絡先やカレンダーから起動したり、Siriで呼び出したりできるようになった。電話会議中の画面共有など、業務に不可欠な機能については、ネットワーク混雑時でも優先的に実行するよう設定することも可能だ。
APIが担う役割
UCツールベンダーであるRevation Systemsが目指しているのも、こうしたシームレスな連携だ。Revation Systemsの創業者でCEOのペリー・プライス氏によれば、同社の開発チームは目下、デバイスメーカー各社のAPIを最大限に活用し、自社のアプリケーションを強化することに集中しているという。Revation Systemsのアプリケーションは、ヘルスケアや金融など、規制が厳しくコンプライアンスとプライバシーの要件が高い業界が採用している。
プライス氏によれば、モバイルデバイスはさまざまな業務のための社外でのコミュニケーションに対応できる設計にはなっていない。「医療業界向けのモバイルデバイス分野に進出するのは難題だ」と同氏は語る。ただしRevation Systemsは目下、そうした目標に向けて、地理位置情報コードや緊急通信サービス、派遣サービス向けのデバイスと自社のプラットフォームとの統合に取り組んでいる。「まだゴールには到達していないが、2017年中には目標を達成できそうだ」とプライス氏は語る。
モバイルUC市場の大手Avayaも既存顧客の維持と新規顧客の開拓に向けて、iPhoneとの連携強化を進めている。
Avayaでアーキテクチャと事業展開を担当する最高技術責任者(CTO)兼副社長のデビッド・シャベズ氏によれば、同社は「この業界でまだ誰も目指したことのないような、モバイル中心の企業へと進化中」だという。Avayaは2017年8月、米連邦破産法第11章(チャプター11)からの脱却を目指す計画で債権者との合意に達している。
「モバイルUC市場は数年後には驚異的な進化を遂げているだろう」とシャベズ氏は指摘し、その鍵となる技術として次の2つを挙げる。1つは、音声やショートメッセージサービス(SMS)など通信事業者による従来のサービスをIPネットワークで提供するための次世代プロトコル「Rich Communication Services(RCS)」であり、もう1つは、高速通信規格4G LTEを利用した音声通話規格「Voice over Long-Term Evolution(VoLTE)」だ。さらにシャベズ氏は、企業が契約書などの機密情報を確実に保護できるよう、アプリケーションとスマートフォンの間で今よりもはるかに強力なセキュリティフレームワークが登場することに期待しているという。
さらにAvayaは、ブラウザ画面共有(コブラウジング)やスクリーン共有など、Cisco Sparkと同様の機能に加え、iPhoneとの緊密な連携によって、信頼できるセキュアなUC環境を構築できる機能を提供する計画だ。例えば事業者団体のメンバー間でUC用に信頼できるスペースを構築し、その空間でAvayaのUCアプリケーションを用いてセキュアなコラボレーションやコミュニケーションを実現する、といったことが可能となる。
こうしてモバイルUCを巡る取り組みが進む一方で、予算が少ないUCベンダーやサードパーティーアプリケーションベンダーにとっては、今後も複雑な課題が残りそうだ。デバイスメーカーはCallKitなどのツールを通じてサポートを提供してはいるものの、全てを確実に連携させ、パフォーマンスを最適化するためには、まだ複雑な問題が山積している。「CallKitは不完全であり、まだ多くの刷新を必要としている。独立系ソフトウェアベンダーがそれぞれ個別にこうした問題を解消していくわけにはいかない」とシャベズ氏は語る。
MCHのシュック氏は、同院が次に採用するUCシステムについて、恐らく2つのシステムを使うことになると予想する。「恐らくSkype for Businessは使い続けるが、新しいPBXシステムについてはまだ何とも言えない。この分野では全てがすごい速さで進んでいる。そのときになってみなければ分からない」(同氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
7
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー