異なるコラボレーションアプローチ
「Slack」が変えたのは仕事だけじゃない、UC市場“破壊”の可能性も
「Slack」をはじめとするメッセージングプラットフォームによって、ユニファイドコミュニケーション市場が危うくなっている。本稿は、メッセージングプラットフォームが急拡大した理由について紹介する。
このところ、破壊とイノベーションの密接な関係を示す事例がよく見られる。その一例として、Slack Technologiesの「Slack」などのメッセージングプラットフォームが仕事やコラボレーションの新たなやり方を生み出し、ユニファイドコミュニケーション(UC)市場を揺るがしていることが挙げられる。
メッセージングプラットフォームが成功し、従来のUC製品が低調な要因は幾つかある。例えば、エンドユーザーがコンシューマーアプリケーションで定着したテキストチャットを使ったコミュニケーション手段がビジネスの世界にも広まっている。インターネットやモバイルデバイスに囲まれて育った若手社員は、音声通話よりもテキストチャットを好んでいる。チームの分散化も、新しいコラボレーションツールの必要性を高めている要因の1つだ。しかし困ったことに、いつでもインターネットに接続でき、臨機応変に仕事を処理することが求められる今日のプロジェクトベースのビジネス環境では、いつも仕事に追われてしまう。
技術的な動向をみると、技術の進化とともにクラウドやソフトウェア、Webベースコミュニケーションが重みを増しており、これらはUCの導入や展開を容易にする。
SlackやBitrix24の「Bitrix24」、Atlassianの「HipChat」、Redboothの「Redbooth」、Ryverの「Ryver」などのメッセージングプラットフォームは、従来のUCにないバリエーションを提供する。「企業は自社のUCサービスがコラボレーションの新潮流に対応していることを確認するとともに、メッセージングプラットフォームが自社のコミュニケーションニーズに合っているかどうかを判断する必要がある。そのためにもSlackやBitrix24などのツールを調査するのが賢明だ」と、独立系アナリストのジョン・アーノルド氏は指摘する。
「Slackは、新しい仕事のやり方を体現している。それはこれまでのやり方とは違うが、必ずしも優れているとは限らない。Slackは、あらゆるタイプの仕事の究極のソリューションというわけではない」。アーノルド氏は、Ziff Davisのウェブセミナーでそう語った。
フリーミアムモデルで導入が急拡大
いずれメッセージングプラットフォームは、テレフォニー技術にルーツを持つ従来のUCと対抗することになる。Slackは音声やビデオ機能を統合し、強力なコラボレーション製品に進化する見通しだ。またエンタープライズニーズに対応し、セキュリティや管理機能を強化する計画も打ち出そうとしている。
直近のデータによると、Slackの1日当たりのアクティブユーザー数は400万人以上、有料ユーザー数は125万人だ。Slackは投資家から40億ドル近くの出資を受けている。
「Slackといったメッセージングプラットフォームの無料版は、UC市場に特に打撃を与えている」とアーノルド氏は語る。エンドユーザーが無料で手軽にアプリケーションをダウンロードして、IT部門を通さずに試せるからだ。このフリーミアムモデルは導入の急拡大に一役買っており、ユーザーはアプリケーション試した後に、機能豊富な有料版にアップグレードすることもできる。
「無料で使い始められるようにするのは、強い印象を与える上で効果的だ」。アーノルド氏は、メッセージングプラットフォームについてそう指摘する。
ただし、フリーミアムモデルの製品は、機能が限られている。「エンタープライズグレードの高い要件を持つ企業は、Slackなどスタートアップの製品は最適ではないかもしれないと」アーノルド氏は語る。
異なるコラボレーションアプローチ
Slackは、他のWebベースアプリケーションとのパートナーシップや統合という点で強みを持っている。特にSlackとGoogleの統合は注目に値する、というのがアーノルド氏の見方だ。両社はファイル共有機能の連係を強化しており、GoogleがエンタープライズベンダーとしてMicrosoftに対抗しようとしていることがその背景にある。
注目すべきパートナーシップは他にもある。例えば、連係機能を組み込んだチャットボット開発に向けたSAPおよびIBMとの取り組みがそうだ。またSalesforce.comのCRMとの統合により、Slackはコンタクトセンターで重要な役割を果たしている。
だが現在使っているシステムがオンプレミスのレガシーシステムである大企業は、Slackといったクラウドベースのメッセージングプラットフォームは理解しにくいかもしれない。外部のクラウドでホストされているこうしたプラットフォームは、コラボレーションへのアプローチが異なっているからだ。
「プラットフォームにおけるコラボレーションの考え方は、歴史の古い大企業とかなり違うかもしれない。どちらか一方が優れているということではないが、考え方に違いがある」(アーノルド氏)
音声コミュニケーションは従来型のUCの主役だ。だがモバイル中心のメッセージングプラットフォームは、生産性の向上やビジネス価値の創造を後押しできる可能性がある。
「本格的な破壊が起こっている。企業は、自社にとって『これは破壊なのか、イノベーションなのか』『良いことなのか、悪いことなのか』『機会なのか、脅威なのか』を考えなければならない。外野から見れば、『その両方』ともいえるが」(アーノルド氏)
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