「Microsoft Teams」の弱点をどう攻める
「Slack」が大企業向けプランを発表、今後必要なのは“対Microsoft戦略”
Slackは大企業向けプラン「Slack Enterprise Grid」を発表した。ただし同社が大企業との契約を獲得するには、Microsoftとの差別化が必要になる。
Slack Technologiesは大企業が必要とする機能を多数備えたチームコラボレーションツールを発表し、エンタープライズ市場への参入を果たした。ただしスタートアップ企業であるSlackが、投資家による40億ドルという企業評価額を正当化できるほど十分な売上高を上げるためには、IT購買担当者に競合大手Microsoftよりも自社の製品を選んでもらう必要がある。
Slack Technologiesが2017年1月に発表した「Slack Enterprise Grid」は、同社のチームコラボレーションツール「Slack」の大企業向けプランだ。従来のSlackとは異なりSlack Enterprise Gridは、法規制やコンプライアンスへの準拠、セキュリティ、ビジネスアプリケーションとの連係など、企業の優先事項をサポートする各種の機能を提供する。価格は発表されていない。
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Slackに挑戦する他のアプリケーション
ただし企業にSlack Enterprise Gridを売り込むためには、こうした機能以外の魅力もアピールする必要がある。何しろ、多くの企業はMicrosoftのクラウド版オフィススイート「Office 365」を利用している。そうした何百万社という企業にとって、Slack Enterprise Gridを有料で利用するか、あるいはOffice 365の一環としてMicrosoftのチームコラボレーションツール「Microsoft Teams」を無料で利用するかの選択になるからだ。
「既にMicrosoftのOffice 365を利用している企業にSlackを売り込むのは難しい」。調査会社Nemertes Researchのアナリスト、アーウィン・レーザー氏はそう指摘する。
差別化が必要
Slack Technologiesは、Slack Enterprise GridがMicrosoft Teamsよりも優れている点として、ビジネスアプリケーションとの連係強化を挙げる。SlackはSalesforceやIBM、Boxなどのソフトウェアやサービスと連係が可能だが、Slack Enterprise GridはさらにビジネスアプリケーションメーカーSAPとの連係を追加した。「HANA Cloud Platform」「SuccessFactors」「Concur」といったSAP関連製品との連係を実現している。
だがMicrosoftの汎用(はんよう)的なチームメッセージング製品と互角に戦うためには、こうした連係強化だけでは不十分かもしれない。「ごく一般的で包括的な水平型プラットフォームを目指していたのでは、Microsoftに太刀打ちできないだろう」と調査会社Gartnerのアナリスト、マイク・ゴッタ氏は指摘する。
それよりもSlack Technologiesは、マーケティングやサプライチェーンなど、特定の業種に合わせてSlack Enterprise Gridに微調整を施すための機能を用意すべきだ。
「Microsoft Teamsは万能で包括的な製品だ。それがMicrosoftのやり方だ。私がSlack Technologiesなら、特定の業務シナリオにフォーカスを絞る」とゴッタ氏は語る。
特定業種に特化した機能によって差別化を図れば、大企業にとってはMicrosoft TeamsとSlack Enterprise Gridの併用が理にかなったやり方ということになるかもしれない。
Microsoft Teamsの弱点
Microsoft Teamsの弱点を自社の強みに変えることも重要だ。調査会社Constellation Researchのアナリスト、アラン・レポフスキ氏によれば、Microsoftが提供しているその他のコラボレーションアプリケーションを使い慣れていないOffice 365ユーザーは、Microsoft Teamsを使いづらいと感じる可能性がある。Microsoftの下記のアプリケーションを使ったことがないユーザーにとって、Microsoft Teamsは非常に分かりにくいツールかもしれないという。
- ユニファイドコミュニケーション(UC)サービス「Skype for Business」
- チーム作業管理ツール「Planner」
- オンラインストレージ「OneDrive」
- デジタルノートブック「OneNote」
そうした潜在的な顧客のために、Slack Enterprise Gridは基本機能が使いやすくなっている。さらにSlack Enterprise Gridは、医療業界や金融業界に対する規制への準拠の他、電子証拠開示(eディスカバリ)やデータ漏えい防止に必要なアプリケーションと連係するためのデータ暗号化技術や統合技術を含んでいる。
Slack Technologiesは、ポリシーを設定するための管理ツールも用意した。ポリシーは、従業員がメッセージを送信したり、文書やリンクや動画を共有したりするのに使用する全てのワークスペースに適用される。
いずれも重要な機能だが、こうした機能だけでIT購買担当者の心をつかめるわけではない。何しろ、競合するサービスはOffice 365だけではない。Cisco Systemsのクラウドベースのコラボレーションサービス「Cisco Spark」やSkype for Businessもある。いずれも、Slack Enterprise Gridと同様の機能を多数備えたサービスだ。
大手ベンダーの大規模なUCプラットフォームに対抗するためには、パートナー企業との提携を増やす必要がある。「今後AvayaやMitelといったUCベンダーが、Slackとの連係に向けて急ピッチで動き始めるだろう」とNemertes Researchのレーザー氏は指摘する。
Slackによれば、2013年にリリースして以来、Slackのユーザー数は500万人まで拡大したという。同社の評価額が高いのも、こうした成長の勢いがあればこそだ。
ただしSlackの事業を実際に数十億ドル規模にするためには、大型のエンタープライズ契約が必要だ。そのためには、Microsoftが依然として強い支配力を持つ市場でうまく立ち回る方法を見つける必要がある。
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