シャドーITが陽のあたる場所へ
草の根運動でユーザー数を広げていく「Slack」の“land and expand戦略”とは?(1/2 ページ)
会社指定のコラボレーションプラットフォームに不満を持つ従業員が、IT部門の許可なく「Slack」や「Circuit」といったアプリをダウンロードして、同僚もユーザーにするケースが増えている。
それは「Twitter」の1行のつぶやきから始まった。
ソフトウェアエンジニアのベン・ガービー氏がコラボレーションアプリケーション「Slack」のことを知ったのは、2年ほど前、ソーシャルメディアを見ている時だった。データ分析会社RJMetricsに勤務するガービー氏や同僚は当時、ある課題に直面していた。社内で急成長するエンジニアチームのコラボレーション文化を変革させ、進化するニーズにもっとうまく対応させるという課題だった。
「われわれ少人数グループは当時、『Googleハングアウト』をかなり活発に利用していた。しかしこれはユーザーの追加や削除が難しかった。もっと重点を絞った会話が必要な時もあったが、そのようなハングアウトの管理は決してうまくいかないように思えた」。ガービー氏はそう振り返る。
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Slackに挑戦する他のアプリケーション
そこでSlackが登場する。2014年8月、ガービー氏と同僚のエンジニア14人は同コラボレーションアプリの試用を開始した。Slackではユーザーがリアルタイムでメッセージやファイルや画像を交換できる。Slackではこの情報が、プロジェクト、あるいは「チャンネル」と呼ばれるグループごとのスレッドに保存されて進行中の会話が保存されるので、ユーザーはスムーズに会話に戻ることができ、付いていけなくなることはない。従来のWeb会議プラットフォームやインスタントメッセージングプラットフォームでは、コラボレーションセッションを保存するそうした機能が欠けていた。この機能は「パーシスタンス」と呼ばれる。
RJMetricsのエンジニアチームが特定のプロジェクトのために製品マネジャーや顧客アカウントマネジャー、営業担当者を招待してSlackに参加させるようになると、社内で同アプリの存在感は急上昇した。RJMetricsのロバート・ムーア最高経営責任者(CEO)はこの現象を「land and expand」(注1)と形容する。
※注1 「land and expand」(上陸と拡張)とは、無料の試用版やフリーミアム方式でツールを個人単位で使ってもらってから、会社の小さなチーム、さらに大きなチームへとユーザー数を増やしてビジネス規模を拡大していく、というビジネス戦略を形容する表現。
「エンジニアチームのメンバーにとって、プロジェクトの進行状況をリアルタイムで把握するための中心的なリポジトリとしてSlackに他のユーザーを追加するのは、確立された媒体を通じてコミュニケーションをするよりも簡単だった」とムーア氏は語る。
企業内の従業員グループは、相互のコミュニケーションとコラボレーションのための完璧な手段を求める。IT部門が提供したシステムやアプリは機能性や利便性や柔軟性に欠けると見なされることもある。ニーズを満たすために最善のコラボレーションアプリを使う草の根運動は、その選択がIT部門に承認されていようといまいと、企業内で成長してきた。大きな疑問は、IT部門にやるべきことがあるとすれば、それにどう対処すべきかだ。
アナリストによると、与えられた職場のコラボレーションツールやコミュニケーションツールに不満を持つ従業員は、代替として次のような、クラウドでホスティングされたWebベースアプリケーションを試すようになる。IT部門に相談したり、上司の許可を得たりすることなくそうする場合も多い。
- Slack Technologiesの「Slack」
- Unifyの「Circuit」
- Cisco Systemsの「Cisco Spark」
- RingCentralの「Glip」
- Atlassianの「HipChat」
- Jive Softwareの「Jive Chime」
「Slackのおかげで誰にも許可を得ずにこれを使い始めることができた。全社的に採用される何カ月も前から使っていた」とガービー氏は打ち明ける。
RJMetricsでのSlack使用は徐々にソフトウェアエンジニアから他のチームへ、そしてついにはCEOへと広がった。やがて同社はSlackを有料で積極利用する顧客になる。Gartnerのアナリスト、マイク・ゴッタ氏によると、これこそまさに、land and expand戦略を頼みとするSlackが描いた筋書き通りの展開だった。
「(私がベンダーだったら)誰かがこのプラットォームにはまってくれることを望む。どんどん増殖して、組織内で大きなうねりになってほしい。その人気に組織が気付けば、エンタープライズの観点からそれを有効活用したいと思うだろう。フリーミアムのモデルではガス欠になる」(ゴッタ氏)
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