ユーザーの本音と企業の事情
モバイルUCの「スマホでビデオ通話」が普及しない理由はお粗末なアプリ?(1/2 ページ)
モバイル向けユニファイドコミュニケーション(UC)ツールには、音声やテキスト、動画などの機能をシンプルに利用できる製品が求められている。モバイルUCを巡る企業の取り組みを見てみよう。
米国テキサス州オデッサの医療センターMedical Center Health System(MCH)は、これまで使用してきたAvaya(旧Nortel)の電話システムを2019年中にリプレースする計画だ。新規システムのテストと導入が期限に間に合うよう、MCHは既に大手や新興企業が提供する各種のテレフォニー/ユニファイドコミュニケーション(UC)システムの検討を進めている。
既に1つだけ確かなことがある。全28棟からなるMCHでIT運用担当ディレクターを務めるブラッド・シュック氏は、新しいテレフォニーシステムと追加のUC機能をクラウドで稼働させ、設備投資ではなく運用経費として月額料金を支払いたい考えだ。クラウドベースのシステムであれば、モバイルネットワークにも有線ネットワークにもUC機能を容易に追加できる。
そもそもMCHがシステムのリプレースを考えているのは、既設のPBX(内線交換機)が寿命を迎えるからだ。ただし同院は目下、セキュアなメッセージングやビデオ会議など、その他のUC機能についても検討している。モバイルUCはもはや、通信アプリケーション単体で提供するものではなくなっているからだ。「テクノロジーを1つ導入すると突如として他にもさまざまな機能がそろうので、他の契約を減らすことができる」とシュック氏は語る。
併せて読みたいお薦め記事
ユニファイドコミュニケーション市場の動向
ユニファイドコミュニケーションツール選びのコツ
モバイルUCを導入すれば、エンドユーザーは企業向けアプリケーションを起動し、通話やテキストメッセージ、ビデオ会議などを実行することになる。だがベンダー各社はこうしたモバイルUC市場の開拓に苦労している。「そうした企業向けアプリケーションのユーザーエクスペリエンス(UX)はお粗末で扱いにくい」との判断から、大半のエンドユーザーは自分のスマートフォンに標準搭載されているアプリケーションを好んで利用するからだ。
昨今、全社向けの新規のテレフォニーシステムを探す上で鍵となるのは、モバイルUCアプリケーションだ。「今やスタッフが最も頻繁に利用する端末はスマートフォンとなりつつある。皆がスマートフォンに依存して生活している」とシュック氏。従って、どのシステムを選ぶにせよ、モバイルUCアプリケーションの有無と使い勝手が重要なポイントとなる。
エンドユーザーはテキストメッセージには「WhatsApp Messenger」、ビデオ通話には「FaceTime」といったように、デバイスに標準搭載されるアプリケーションやより使いやすいアプリケーションを選びがちだが、企業はそのせいで自分たちが大切なチャンスを逃していることを理解している。業務上不可欠な通信をキャプチャーし、記録、ログ化、セキュリティの確保、そしてもしかすると監査を実行するチャンスだ。シュック氏によれば、MCHにとっては各種の通話機能の他、レポート機能が特に重要だという。
ただしこうした業務上のニーズを満たす役割を期待できる一方で、モバイルUCアプリケーションには2つ大きな問題がある。そう指摘するのは、調査会社Nemertes Researchの副社長兼サービスディレクターを務めるアーウィン・レイザー氏だ。
1つは、モバイルUCアプリケーションの多くが企業向けモバイルデバイス管理(MDM)プラットフォームをサポートしていないという問題だ。そのため企業はモバイルUCアプリケーションを管理したり、セキュリティポリシーを適用したりすることができない。
2つ目は、モバイルUCアプリケーションは主要機能のサポートでモバイルOSとの連携が図れていない場合があるという問題だ。このような場合は、音声コマンド(Appleの音声認識AIアシスタント「Siri」など)で電話をかける、ロック画面で通知を受信する、端末がロック状態のときにモバイルUCクライアントへの着信に応答する、端末に標準搭載される連絡先アプリからモバイルUCクライアント経由で電話をかけるといったことはできない。場合によっては、スマートフォンに着信があるとモバイルUCでの通話が切れる可能性もある。
モバイルUC市場は成長傾向にある。Nemertesの調査「2016-17 Unified Communications Benchmark」では、回答企業全体の38%が「モバイルUCアプリケーションを導入済み」、14%が「2017年中の導入を予定」と答えている。ただしレイザー氏によれば、企業からは「アプリケーションが全般的に使いづらいので、エンドユーザーは結局、端末に標準搭載される電話アプリやメッセージアプリを使うことになる」との声が寄せられているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
技術文書・技術解説
[Jamf Japan 合同会社] MDMだけでモバイルセキュリティは十分? 不足する対策を16項目でチェック -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的な家電メーカーが実践する「クリエイティブプロセス効率化」の方法とは? -
事例
[Wrike Japan 株式会社] 世界的テクノロジー企業に学ぶ、プロセス標準化とプロジェクト納品自動化の秘訣 -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソニー・ピクチャーズ テレビジョンに学ぶ、次世代サービスデリバリーのヒント -
事例
[Wrike Japan 株式会社] ソミック石川に学ぶ、ICT浸透後に直面した「工数管理」の課題と解決策
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
「有線LAN環境」に関するアンケート
-
4
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
5
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
6
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
7
「自動化」で「DX」は強制的に進む? そのシンプルな理由
-
8
AWS障害でも補償ゼロの衝撃 サイバー保険で情シスが見落とす「細則の壁」
-
9
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
10
「データを国内に置く」だけでは不十分 情シスが知るべきAI時代の「デジタル主権」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
10
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー